コロナ禍からの脱却ムードとなった2023年。鉄道業界では、新線開業や新型車両のデビュー、歴戦の車両の引退と、今年もさまざまな動きがありました。路線や車両の動きなど、2023年に起こった出来事を振り返ってみましょう。
相鉄沿線から東横線・東上線や南北線・三田線へ直結 「相鉄・東急直通線」開業
2023年3月18日、「相鉄・東急直通線」（相鉄新横浜線の羽沢横浜国大～新横浜間および東急新横浜線）が開業し、相鉄線と東急線を直通する列車の運転が始まりました。
相鉄・東急直通線は、相鉄線から都心方面への直通運転を目指した「神奈川東部方面線」の一つとして位置付けられ、建設が進められていました。2019年11月にはもう一つの「相鉄・JR直通線」が開業しており、今回の東急直通線の開業をもって、整備計画が完了しました。
この路線の開業は、相鉄線から新宿方面への単純な直通運転であるJR直通線と異なり、東急線の先も巻き込んだ一大直通ネットワークを形成しました。新横浜駅から直通列車が走る路線は、相鉄本線、いずみ野線、相鉄新横浜線、東急新横浜線、東横線、目黒線、東京メトロ副都心線、南北線、都営地下鉄三田線、埼玉高速鉄道線、東武東上線と、その数6社局11路線（相鉄からの直通列車の運転がない路線も含む）。相鉄沿線から大手町や池袋へ、東武沿線から新横浜へ、これまで以上にアクセスしやすくなりました。
鉄道ファンの視点でも、直通ネットワークが拡大したことで、相鉄線内で東急車を、埼玉高速鉄道線内や和光市駅で相鉄車を見ることができるようになるという、興味深い変化が生まれました。相鉄線内で東急5050系とJRの埼京線用E233系がすれ違うという、10年前には考えも及ばなかったような光景が繰り広げられています。
新横浜線開業の効果は、開業当日、いや開業前から現れています。
新横浜線開業と同じ日にダイヤ改正を実施したJR東海では、東海道新幹線で新横浜駅始発の「のぞみ」491号を新設しました。曜日限定の臨時列車ではありますが、改正前まで新横浜駅の下り始発列車だった「ひかり」493号（改正後は533号）より6分（改正前時刻基準）早く、名古屋駅や新大阪駅に到着できます。たった6分の違いではありますが、朝の貴重な時間を有効活用できる列車です。
そして、新横浜線の開業前に効果が現れていたのが、相鉄線沿線の家賃相場。LIFULLの調査によると、2021年度と2022年度の比較で、ゆめが丘駅（いずみ野線）や相模大塚駅（本線）の家賃相場が、前年度比120パーセントに上昇しているということです。前者は自然が多く、逆に言えば「買い物には不便」（同調査での住民からのコメント）という立地でした。しかし現在は、2024年の開業を目指し、駅前に大規模集客施設が建設中。東急線方面への直通が始まったこととあわせ、利便性が急上昇している駅となっています。
同じLIFULLによる中古マンション価格の調査では、二俣川駅、西谷駅からそれぞれ徒歩10分圏内の物件の平均価格が、2019年12月から2022年12月までに2倍以上の上昇を見せたといいます。両駅の所在地である横浜市旭区、保土ヶ谷区の物件平均価格自体も上昇しているのですが、こちらは1.6倍程度という上昇率。相鉄沿線の住宅需要が、東急線直通開始前から高まっていたことが、調査結果からわかります。
