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日本にただ一つ、珍しい鉄道システムの数々

2020年7月4日(土) 鉄道コムスタッフ

見た目はバス、でも実は鉄道

架線から電気を取り入れて走るのがトロリーバスですが、日本国内では、法律上は「非電化のトロリーバス」という、摩訶不思議な乗り物があります。名古屋市を走る「ガイドウェイバス」です。

名古屋市を走るガイドウェイバス、「ゆとりーとライン」の車両
名古屋市を走るガイドウェイバス、「ゆとりーとライン」の車両

ガイドウェイバスとは、案内輪と呼ばれる小型の車輪を装着したバスで、専用の軌道上を走るシステム。専用軌道では、普通鉄道のレールを走るのと同じように、ハンドルを操作する必要はありません。また、車両は専用軌道と一般道路を直通できるので、市街地では一般道と切り離された専用軌道を比較的高速で走行し、郊外では一般道を走ることで建設コストを減らすという、鉄道とバスの利点を組み合わせたシステムとなっています。

タイヤの前に見える小型の車輪が、専用軌道上で車両の向きを制御する案内輪です
タイヤの前に見える小型の車輪が、専用軌道上で車両の向きを制御する案内輪です
ゆとりーとラインの専用軌道。両脇に見えるレールに案内輪を当て、車両の向きを制御しています
ゆとりーとラインの専用軌道。両脇に見えるレールに案内輪を当て、車両の向きを制御しています

車両の見た目はバスそのもの。名古屋市を走るガイドウェイバス「ゆとりーとライン」では、通常の路線バスでも使用される「三菱・エアロスター」と「日野・ブルーリボンシティ」に案内輪を装着した、専用の車両が導入されました。

パッと見はバスでしかないガイドウェイバスですが、日本の法律においては、案内軌条式の鉄道扱いとなっています。

鉄道とバスの利点を組み合わせたガイドウェイバスですが、ことに日本で導入されたものについては、さまざまな理由から海外のガイドウェイバスに及ぶレベルではないのが現状です。

市街地に設けられる専用軌道は、海外では道路に案内用のレールを敷設しただけの、かなり簡素なものとなっています。一方、ゆとりーとラインの専用軌道は全線が高架線で、駅もAGTのような立派なもの。このために建設コストが高額になってしまい、海外のガイドウェイバスのように廉価な中量輸送機関としての位置づけではなくなっています。

まるでAGTのようなゆとりーとラインの設備。この高規格な設備のために、建設コストが上昇しています
まるでAGTのようなゆとりーとラインの設備。この高規格な設備のために、建設コストが上昇しています

また、専用軌道が鉄道扱いとなることでのデメリットもあります。ゆとりーとラインの運転士は、バス用の大型二種免許と、鉄道用の動力車操縦免許と、2つの免許を取得しなければなりません。また、車両の検査についても、自動車としての車検と、鉄道車両としての定期検査の双方に従う必要があります。鉄道とバスの双方を兼ねるために、両方に対応するためのコストも嵩んでしまうのです。

現在の日本では、バスの高速化施策として、専用道や専用車線、公共車両優先システムを導入する「BRT」(バス高速輸送システム)の普及が進められています。このシステムでは、都市部は一般自動車と同一平面を走るため、ガイドウェイバスよりも速達性は低下してしまいます。一方、ゆとりーとラインのような専用軌道を建設することはなく、バス専用道でもアスファルトを敷くだけと低コスト。そのため、現時点ではBRTの方が優勢で、ゆとりーとラインのようなガイドウェイバスの導入を目指す都市は、今のところ表れていません。

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