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相鉄・東急直通線開業

ダイヤは?運用は? 開業前の「相鉄・東急直通線」を分析する

2022年9月19日(祝) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

2023年3月、「相鉄・東急直通線」が開業します。相模鉄道と東急電鉄の路線を結ぶ新路線で、相鉄沿線から都心方面への新たな直通ルートが生まれることとなります。

「相鉄・東急直通線」の関連路線を走る各社車両
「相鉄・東急直通線」の関連路線を走る各社車両

開業まであと半年ほどに迫った2022年9月現在、各社からは続々と情報が公開されています。一方で、詳細なダイヤなどは現時点で未発表。車両運用がどのようになるのかという鉄道ファンが気になる点も発表されていません。

しかしながら、各社の情報や動向を見ると、開業時のことがわずかながら予測できます。現時点で判明していることを、各社の情報や推測を交えつつご紹介します。

相鉄・東急直通線とは?

相鉄・東急直通線は、都市鉄道等利便増進事業「神奈川東部方面線」として整備が進められている路線。東急線方面のほか、JR線と直通する「相鉄・JR直通線」の2ルートが計画されており、JR直通線ルートは2019年11月に開業しています。

相鉄・東急直通線と相鉄・JR直通線の路線図(画像:鉄道・運輸機構)
相鉄・東急直通線と相鉄・JR直通線の路線図(画像:鉄道・運輸機構)

神奈川東部方面線として新たに建設されているのは、西谷~日吉間の約12キロ。途中、貨物駅の横浜羽沢駅付近に所在する「羽沢横浜国大駅」、東海道新幹線などと接続する「新横浜駅」、東急東横線綱島駅近隣に設置される「新綱島駅」の3駅が設けられます。このうち、西谷~羽沢横浜国大間は相鉄・JR直通線として開業済みとなっています。

路線名は、西谷~新横浜間が「相鉄新横浜線」、新横浜~日吉間が「東急新横浜線」。相鉄新横浜線の一部は既に開業していますが、「新横浜へ行かない路線を『新横浜線』と案内するのは適当ではない」(相鉄広報担当者)ということで、2022年9月現在、路線名は大々的には掲げられていません。

相鉄・東急直通線が開業すると、相鉄沿線から新横浜駅へ乗り換え無しでアクセスできるように。大和~新横浜間の所要時間は約19分となり、開業前の横浜駅・横浜線経由から23分程度短縮されます。都心方面へも、二俣川から目黒までの所要時間は約38分と、16分程度の短縮を実現。東急線から新横浜駅や相鉄方面のアクセスも向上し、渋谷から新横浜へは11分程度短縮した約30分で結ばれることとなります。

開業半年前と2年前の工事現場を比較

開業が約半年後に迫った今、相鉄・東急直通線の工事は佳境を迎えています。開業とともに設置される新駅2か所について、8月現在の様子を、過去の写真とともにご紹介します。

相鉄と東急の境界駅となる新横浜駅は、東海道新幹線の駅の北側、環状2号線の道路直下に設置。駅は地上から掘り下げる「開削工法」で建設されています。2019年11月時点では、掘り下げた部分を覆う「覆工板」と呼ばれる仮の板が路面に敷設されていましたが、駅本体の土木工事がほぼ完了した2022年8月時点では、路面はアスファルトに戻されています。

2022年8月現在の新横浜駅付近。東海道新幹線の駅前を通る環状2号線の直下に駅が建設されました。地上の工事は既に終盤
2022年8月現在の新横浜駅付近。東海道新幹線の駅前を通る環状2号線の直下に駅が建設されました。地上の工事は既に終盤
2019年11月時点では、地下工事が進められている様子が地上からもよく見えました
2019年11月時点では、地下工事が進められている様子が地上からもよく見えました

駅の工事は最終段階を迎えており、7月にはレール締結式が開催されています。現在は信号・通信設備などの工事が進められているといい、あわせて地上出入口の仕上げ工事も進行中です。

新横浜駅の地上出入口。8月時点では、仕上げ工事が進行中
新横浜駅の地上出入口。8月時点では、仕上げ工事が進行中

新横浜駅は地下4層構造で、地下1階が改札階、地下4階がホーム階となります。また、同駅では横浜市営地下鉄ブルーラインと直交しており、相鉄・東急直通線開業後には、ブルーラインにも新たな改札口が設置され、両線がスムーズに乗り換えられるようになる予定です。なお、相鉄・東急直通線とブルーラインが地下で交差する関係上、同駅の工事のうち、交差部周辺部分は横浜市交通局に委託されてきました。

東急線単独駅となる新綱島駅は、こちらも地下4層構造。ホームは島式1面2線となります。駅は地上から見ることができず、唯一地上部の出入口が、駅らしい設備として確認できるのみです。2019年11月時点の写真と2022年8月撮影の写真を見比べると、トンネル掘削用の建屋は既に撤去されており、地下の掘削工事は終了したことがわかります。

新綱島駅の地上出入口と思われる建物
新綱島駅の地上出入口と思われる建物
2022年8月現在の新綱島駅東側。地上の大規模な駅土木工事は終了しています
2022年8月現在の新綱島駅東側。地上の大規模な駅土木工事は終了しています
2019年11月に撮影した同地点の写真。トンネル掘削工事用に大きな建屋が存在していました
2019年11月に撮影した同地点の写真。トンネル掘削工事用に大きな建屋が存在していました
2022年8月現在の新綱島駅西側。奥で道路がカーブしているあたりの地下をトンネルが通っています
2022年8月現在の新綱島駅西側。奥で道路がカーブしているあたりの地下をトンネルが通っています
2019年11月に撮影した同地点の写真。こちらもトンネル工事用の建屋がありました
2019年11月に撮影した同地点の写真。こちらもトンネル工事用の建屋がありました

一方、2022年8月に現地を訪問すると、地上には大型クレーンがそびえ立ち、ビルが建設中となっています。開業半年前でまだまだ工事中?と疑問が浮かぶ状況ですが、こちらは新綱島駅とあわせて進められている再開発事業で整備される高層ビル。駅と直結する地下2階・地上29階建てのビルで、住宅や商業施設、区民文化センターとして使用される予定です。

まだまだ工事が進む新綱島駅付近。こちらは駅設備ではなく、再開発事業で工事中の高層ビル
まだまだ工事が進む新綱島駅付近。こちらは駅設備ではなく、再開発事業で工事中の高層ビル

新綱島駅と隣接する東横線の綱島駅東口は、古くからの土地割りがそのまま残されたような、道路が狭あいな場所。駅前には路線バスも乗り入れますが、一部を除いて歩道が無い中をバスが通らざるを得ず、安全とは言えない状況となっています。これを解決すべく、横浜市綱島駅周辺の再開発事業を計画し、2022年7月に都市計画が決定しました。今後、新綱島駅直上と同様に高層ビルが建設される予定で、両ビル間には綱島街道をまたぐ歩道橋も整備される計画です。綱島駅周辺の再開発事業完了は2028年度の予定ですが、両再開発事業の完了によって、綱島駅と新綱島駅の連携度が開業時以上に向上することが期待されます。

東横線綱島駅前の狭あいな道路
東横線綱島駅前の狭あいな道路

実際のダイヤはどうなる?今判明している情報から読み解く

相鉄および東急が発表しているプレスリリースによると、羽沢横浜国大~新横浜間は朝ラッシュ時に毎時10本、その他時間帯に毎時4本の運転。新横浜~日吉間は、朝ラッシュ時に毎時14本、その他時間帯に毎時6本の運転となっています。また、車両編成数については10両および8両となっていますが、東急新横浜線に限り、「一部6両」とも記載されています。

両社の境界駅となる新横浜駅は、中央の線路が折り返し可能な設計の2面3線の構造。プレスリリースの記載と照らし合わせると、朝ラッシュ時で毎時4本、その他時間帯で毎時2本が、同駅で折り返すこととなるようです。また、「一部」との記載のある6両編成については、朝ラッシュ時のみの乗り入れに限られるか、その他時間帯にしても多数が運転されるというわけではなさそうです。

2面3線の新横浜駅。右側が東急線方面、左側が相鉄線方面のホームです
2面3線の新横浜駅。右側が東急線方面、左側が相鉄線方面のホームです

なお、既に開業している羽沢横浜国大駅では、ホームドアに設けられている、乗務員がホームに降りるためのスペース「セットバック」が、8・10両編成用のみに設置されています。そのため、プレスリリースにも記載のある通り、6両編成の車両が羽沢横浜国大駅以西へ直通することは否定されます。

それでは、現在判明している情報から、相鉄・東急直通線のダイヤを予想します。まずは朝ラッシュ時から見ていきましょう。この時間帯の新横浜~日吉間は、先述した通り、毎時14本の運転が想定されています。

相鉄・東急直通線関連の鉄道ネットワーク(画像:東急)
相鉄・東急直通線関連の鉄道ネットワーク(画像:東急)

2022年9月現在の時刻表によると、目黒線の日吉駅では、朝ラッシュのピーク時間帯にあたる7時台に20本、8時台に19本が始発列車として設定されています。また、東横線の時刻表を見てみると、菊名駅始発の各停が朝ラッシュ時間帯に設定されており、7時台と8時台にはそれぞれ4本運転されています。目黒線の全列車を新横浜線直通とすると想定本数をオーバーするので、仮に7時台の半数にあたる10本と仮定すると、東横線の菊名駅始発列車を新横浜線発着へ変更すれば、ぴったり14本となります。ただし後述しますが、東横線直通の列車は10両編成でなければならないので、東横線内は優等列車での運転となります。

東急線の先、相鉄線からの直通については、朝ラッシュ時は毎時10本の想定。4本が新横浜駅始発となる計算です。この4本の新横浜駅始発を東横線直通とし、残りの10本を全て相鉄線~目黒線直通とすれば簡単ですが、それでは東横線方面の直通効果が薄れてしまいます。直通効果を活かすため、東横線系統については全て相鉄線直通とし、残る6本(相鉄直通2本・新横浜折り返し4本)を目黒線直通とするのが自然でしょうか。また、2022年現在のダイヤでは、日吉駅で7時台に急行が9本、8時台に7本、それぞれ設定されています。この毎時平均8本の急行のうち、2~4本が新横浜駅始発となることが考えられます。

朝ラッシュ時間帯の運行本数想定
朝ラッシュ時間帯の運行本数想定

日中時間帯も見ていきましょう。先述した通り、西谷~新横浜間は毎時4本、新横浜~日吉間は毎時6本の運転想定です。新横浜駅で毎時2本が折り返すことになるのは先述した通りです。

2022年9月現在の時刻表では、目黒線では日中に毎時12本、うち急行が毎時4本運転されています。この4本を全て相鉄線直通とし、新横浜駅折り返しの2本を東横線直通とすれば、ダイヤ上はすんなり収まります。東横線と相鉄線の直通需要に応えることはできませんが、相鉄線~渋谷・新宿方面は相鉄・JR直通線が既に開業していますし、東横線・副都心線方面の利用の場合でも、目黒線直通列車から日吉駅や武蔵小杉駅などで対面乗り換えが可能です。また、2022年1月に関係各社が発表したプレスリリースでは、海老名・二俣川~目黒間の所要時間は示されているものの、東横線方面は渋谷~新横浜間のみが示されています。この部分で東横線から相鉄方面への直通所要時間が表記されていないことからも、この説を補強できます。

日中時間帯の運行本数想定
日中時間帯の運行本数想定

なお、公式発表にある通り、相鉄新横浜線では6両編成の運転はありません。仮に日中の4本全てが相鉄線直通となり、目黒線の急行も増発されない場合、日中の急行列車は全て8両編成かつ相鉄直通に対応した形式による運転となることに。現在見られる、東京メトロ9000系や都営6300形・6500形、埼玉高速鉄道2000系による急行列車は、日中時間帯は運転されないことになります。

残る新横浜駅折り返しの2本については、仮に東横線発着とすると、東横線内での扱いは不明です。2022年現在の東横線のダイヤは、自由が丘駅と菊名駅で優等列車と各停が対面接続するダイヤで、ある意味で非常に整った形となっています。ここに優等列車とせざるを得ない直通線の列車を走らせると、途中駅で緩急接続がない、中途半端な立ち位置の列車が生まれてしまいます。従来のダイヤパターンに挿入する形で、新たな列車が運転されると考えるのが自然ですが、日中は全て目黒線系統の列車での運転となる可能性も否定できません。

相鉄線側ではどのようなダイヤが組まれるのでしょうか。2022年9月現在の相鉄本線では、日中時間帯に特急が毎時2本、快速が毎時4~6本、各停が毎時6~8本運転されています。このうち、下り(海老名・湘南台方面)の特急と上り(横浜・都心方面)の各停2本はJR線直通、その他の各停6本は二俣川駅からいずみ野線に入る列車です。

先の予測では、新横浜以西に直通する列車は毎時4本となりました。この4本全てが相鉄本線に直通すれば簡単なのですが、これでは供給過多となる恐れがあります。東急線直通の4本は全て西谷駅折り返しとなるか、あるいは乗車率に余裕があるとみられるJR線直通と交換し、4本中2本を海老名行きとして運転することとなるのではないでしょうか。

残る直通列車も本線やいずみ野線の直通列車となる可能性も否定はできませんが、現状のダイヤパターンを踏襲する場合、直通列車を設定した分だけ横浜駅発着の列車が減少することになり、利便性の低下が避けられません。あるいは、横浜~海老名・湘南台間の一部列車を西谷駅発着に変更し、直通列車と西谷駅で接続することになることも考えられます。

車両の運用はどうなる?

ダイヤと同じく、鉄道ファン目線で気になるのが、車両の運用です。ダイヤと同様に、現時点では詳細は発表されていませんが、開業に向けて進められている車両改造工事によって、これを読み解くことができます。

目黒線に関連する各社の車両。相鉄・東急以外では対応が分かれそうです
目黒線に関連する各社の車両。相鉄・東急以外では対応が分かれそうです

運行システムが異なる事業者同士での相互直通運転を開始する前には、直通する車両の対応工事が必要となります。たとえば、2013年に東横線と副都心線の直通運転が始まった際には、直通開始に先立ち、東横線用車両でワンマン対応機器搭載などの改造工事が進められていました。今回の相鉄・東急直通線開業でも同様に、相鉄車、東急車の双方で、対応工事が進められています。

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相鉄の20000系と21000系では、東急線直通に対応した工事を実施。東急線などで使用する無線装置やワンマン運転用の監視モニターなどが搭載されています。なお、ハード面では東急線直通機器で副都心線などへの直通に対応できるほか、保安装置についてはソフト更新で対応が可能なため、現時点で東急線以外への直通可

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