東急が夏に北海道で運行する「THE ROYAL EXPRESS」が、7月21日に伊豆半島から旅立ちました。
THE ROYAL EXPRESSは、横浜~伊豆急下田間を走るリゾート列車です。車両の内外装は水戸岡鋭治さんによるデザインで、座席車両に加えて食堂車やキッチンカーなどを連結。車内ではフルコースやお重といった料理が提供されています。
東急は、2018年に発生した「北海道胆振東部地震」の復興支援策として、JR北海道と共同でTHE ROYAL EXPRESSを北海道エリアで運行することを決定。JR東日本、JR貨物を含めた4社共同のプロジェクトによって準備が進められてきました。
普段は直流電化区間を走るTHE ROYAL EXPRESSですが、北海道で走る区間はほとんどが非電化となるほか、電化区間も交流電源のため、そのままでは自走できません。そのため、北海道での運行時には、JR北海道が保有するディーゼル機関車が重連でけん引。さらにTHE ROYAL EXPRESSへサービス用電源を供給するため、JR東日本から譲渡された電源車を連結して走ることとなりました。
客車となるTHE ROYAL EXPRESSは、通常運行時の8両編成から、1・4・5・6・8号車の5両編成に短縮されました。これは、電源車の電源供給能力のほか、JR北海道内の駅有効長の兼ね合いとのこと。両先頭車に加え、キッチンカーの4号車、トイレ付き車両の5号車、「プラチナクラス」車両の6号車が選定されています。
また、普段は両先頭車に連結器カバーを装着しているTHE ROYAL EXPRESSですが、今回の運行では電源車や機関車と連結する必要があるため、連結器カバーを撤去。また、ブレーキ用配管や電源供給用のケーブルが設置されています。
電源車は、かつてJR東日本が保有したジョイフルトレイン「ゆう」が、非電化区間を走行する際にサービス電源を供給するために改造された荷物車、マヤ50-2186。かつては「ゆうマニ」とも呼ばれていました。今回のプロジェクト発足に際し、電源供給設備を備えたゆうマニがタイミング良く用途廃止となったことから、東急がJR東日本からこれを譲受。THE ROYAL EXPRESSの北海道運行に向けた作業が進められてきました。
譲受時はゆうの塗装に揃えられていたマヤ50-2186ですが、外観は水戸岡鋭治さんによるデザインに変更。THE ROYAL EXPRESSの「ロイヤルブルー」と、けん引する機関車のオレンジをつなぐ色として「白・ホワイト」をメインカラーとしたものとなりました。なお、機器類は基本的に譲受時のままで、小規模なメンテナンスを実施した程度ということです。
そして、この編成を北海道まで甲種輸送で運搬するのがJR貨物。伊東駅からの直流区間は、EF65形電気機関車がこれをけん引します。
7月21日の早朝に伊東駅を発ったTHE ROYAL EXPRESSは、数日かけてJR北海道の車両基地まで運ばれる予定。到着後は試運転を実施し、8月28日から始まる本運行に向けた体制を整えていくとのことです。
北海道内でのTHE ROYAL EXPRESSの運行は、当初は3泊4日のツアーを5回開催する予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、第1回・第2回の運行は中止。2020年の運行は3回となってしまいました。
しかし、2020年運行分について多くの申込があったことから、東急とJR北海道は2021年もTHE ROYAL EXPRESSを北海道内で運行することを決定。2020年に中止となった2回分の振り替えを含め、計7回の運行が予定されています。
なお、東急でTHE ROYAL EXPRESSのプロジェクトを担当する片桐淳也さんは、「現状では北海道運行を成功させることが使命」としながらも、「地域活性化などにわれわれが力を発揮できるお声がけがあれば検討していきたい」と、今後のさらなる運行にも含みを持たせていました。