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助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

「編成写真」をたしなむ(1) ~紳士的な「編成写真」 心のアプローチ~

2021年9月4日(土) 鉄道カメラマン 助川康史

前回もお話しましたが、一括りに「鉄道写真」と言っても、その種類は様々です。

今回のテーマである「編成写真」を始め、疾走感を表現する「流し撮り」、四季折々の風景と絡める「鉄道風景」、何気ないシーンやより印象的に鉄道を捉える「鉄道イメージ」などなど、細かく分類すれば、より多くの表現方法があります。

列車を前から後ろまで写す「編成写真」
列車を前から後ろまで写す「編成写真」

私は、その中でも「編成写真」は鉄道写真の中でも「基本中の基本!」と、ニコンカレッジなどの鉄道写真教室や店舗セミナーなどでお話してきました。物心つく前から車両好きな鉄ちゃんだった私の「うがった」見方でもありますが、昔の鉄道写真の多くは「編成写真」(形式写真も含む)だったので、あながち的外れな考えでもないと思います。

実際に鉄道写真を嗜む皆さんは、「『編成写真』が大好き!!」という方も多いのではないでしょうか。「鉄道写真は編成写真に始まり編成写真に終わる」と言っても過言ではありませんね(笑)。

時代ともに変わる鉄道写真撮影のルールとマナー

普通の鉄道写真講座でしたら、ここから「編成写真」の撮影テクニックの内容になります。が、今回は「鉄道写真なんでもゼミナール」ということで、私が「編成写真」を撮る時に考え、配慮していることをお話しようと思います。

近年は、鉄道写真を撮る、いわば「撮り鉄」のマナーの問題が多く取り上げられるようになりました。

たびたび話題となる、撮り鉄のマナー問題(画像は本文とは無関係です)
たびたび話題となる、撮り鉄のマナー問題(画像は本文とは無関係です)

そこでいつも上がるのが「ルールとマナー」。鉄道雑誌や写真雑誌はもちろん、私の所属している日本鉄道写真作家協会(JRPS)のホームページにも、鉄道写真撮影時の「ルールとマナー」は記載されています。鉄道写真をたしなむ人は耳にタコができるほど聞いているのはないでしょうか。

内容についてはそれらをご覧いただきたいところですが、実際に私たちプロも例外ではなく、常に「ルールとマナー」を第一に考えて撮影するようにしています。

昔、特に昭和50年代までの国鉄時代の鉄道写真撮影は、「何があっても自己責任」という、ある意味おおらかな時代でした。

私よりも年配の大ベテランの方から「駅員に話せばホーム以外の場所でも撮ることができた」「ふらっと車両基地に行っても、許可を得て敷地内で撮影することができた」と聞くと、正直羨ましく感じます。

また、駅のホームでも、今は「黄色い線(点字ブロック)の内側に下がって」ですが、昔はもっと線路に近い方に引かれていた、いわゆる「白線の内側に下がって」撮ることができました。

「鉄道は世につれ、世は鉄道につれ」、国鉄が民営化し、JRや私鉄、第三セクターなど、民営中心の鉄道経営となった現代において、「安心・安全な輸送」という鉄道経営・業務の理念は、日本の鉄道の安全神話を支える根幹です。私たち利用者はそれを当たり前のように感じていますが、「日々これ平穏」を続けるために、鉄道に携わる方は、たゆまぬ努力と心配りを持って日々の業務に勤しんでいます。

多くの鉄道員の努力で安全・安心が保たれている鉄道(イメージ)
多くの鉄道員の努力で安全・安心が保たれている鉄道(イメージ)

私も鉄道誌などで多くの鉄道会社の現場を取材していますが、その努力を目の当たりすると本当に頭が下がる思いばかりです。

また列車の遅延などで乗客や荷物に大きな障害が起きると、サービスの低下に加え、利用者に対して払い戻し等の損失が発生することになります。民間会社であれば損失の発生は大きな問題です。

列車が高速化し、ダイヤもより過密で綿密になった現代においては、危機管理意識がさらに高くなり、並大抵のことでは安全を守れません。

そんな現代だからこそ、鉄道システムの変化と同様、鉄道写真撮影も昔の常識ではなく、今の常識とルールをもって撮影に臨まなくてはならないのです。

今の常識とルールを守って撮影を(画像は本文とは無関係です)
今の常識とルールを守って撮影を(画像は本文とは無関係です)

鉄道は人々の営みと命を運ぶ重要な交通機関です。プロ・アマチュア関係なく、鉄道写真をたしなむ私たちは、そのデリケートな社会システムの中で「楽しませていただいている」ということを忘れてはなりません。

ルールを守ることは当然ですが、駅などの鉄道敷地内の撮影では、何より鉄道利用者優先で紳士的に振舞い、駅員や乗務員などの鉄道関係者には敬意を払って、注意や助言に従うという姿勢が大切です。私は常にそのことを胸に、撮影に臨んでいます。

撮影は挨拶とコミュニケーションも大切

鉄道施設や鉄道関係者に対する心配りは、駅などの鉄道用地内での撮影時だけでなく、駅間の撮影地でも同じです。どうしたら沿線の方々にご迷惑をおかけしないか、それを考えるのが大切です。

私はその一つして、挨拶とコミュニケーションを心がけています。

撮影地でのコミュニケーションは重要(イメージ)
撮影地でのコミュニケーションは重要(イメージ)

見知らぬ人がカメラを構えていたら、それは不審がられて当然です。線路に向けてカメラを構えていれば「ああ、撮り鉄ね」と多少理解はしてもらえますが、それでも不信感は拭えないもの。そこで挨拶とコミュニケーションが重要になるのです。

私はとにかく現場でお会いする方には挨拶をします。現場にいらっしゃる地主さんはもちろん、通行する方にも挨拶をします。そこでコミュニケーションが生まれ、私有地で撮影させていただけただけでなく、ほかにも良いことがたくさんありました。

例えば、久大本線のとある撮影地でポスターの撮影をした時のことです。訪れたのは秋口ですが、冬用のポスターなので田んぼの稲が刈られてないといけません。ですが、ある部分だけ稲が刈り取られておらず、どうしたものかと思っていたところ、たまたま通った農家の方とお話をして、その田んぼの持ち主のお宅を教えていただきました。

いつ頃刈り取るのかと、挨拶を兼ねて伺ったところ「鉄道写真を撮っている人はたくさん見かけるけど、挨拶をしに来た人は初めてだ!」と言われました。日も暮れる頃だったので「良かったら上がって、ご飯食べながら話を聞かせて」となり、しまいには電話で近隣の農家の方も呼んで深夜まで大盛り上がり。自家製の精米したてのお米で炊いたご飯と、同じくお宅の横の畑で採ったばかりのオクラで食べるオクラご飯が最高に美味しかった思い出があります。

結局、稲は撮影期間内に刈り取ることはありませんでしたが、仕事としても後日OKをもらい一安心。その楽しいできごとは、昨日のことのように思い出されます。ちなみに、その方からは今でも「次はいつ来るんだ?」と連絡を頂いています。

ほかの撮影現場でも、リンゴだったり、みかんだったり、キュウリだったり、会話の流れで老眼鏡をもらったことも有りました(笑)。

会話することを無理強いするわけではありませんが、撮影地でお会いする沿線住民の方には必ず挨拶はしましょう。それも「楽しませていただいている」という感謝の現れにもなります。もちろん、撮影時は田畑の作物を荒らさない、ごみは必ず持ち帰るなどの、基本的なマナーは忘れてはいけません。

私も、幼い頃に読んだ、わが師・真島満秀氏の本に書かれていたルールとマナーを守り、子供の頃から一度も線路際では紙切れ一枚すら捨てたことはありません。時には拾って、自分のごみと一緒に自宅で捨てたこともあります。これは自慢でもあります。

日本人の美徳「察しと思いやり」を持って

線路際に寄りがちな「編成写真」撮影、特にそれが2度と撮れない珍しい列車だったり運用だったりすると、ついつい前のめりになりルールとマナーを逸脱しがちです。「逃したくない!」「綺麗に撮りたい!」という気持ちも痛いほどわかります。

ですが、そんな時こそ、今の自分の姿を幽体離脱のごとく見降ろしてみましょう。紳士的な振る舞いかどうか、わかるはずです。某アニメのお姉さまのセリフではありませんが、日本人の美徳は「察しと思いやり」です。一人一人が日本人としての理性を持って、線路際で撮影していれば「鉄道写真ですか。良いご趣味をお持ちですね~」と多くの人に思ってもらえる日が必ず来るでしょう。

どのような場所でも「察しと思いやり」を(イメージ)
どのような場所でも「察しと思いやり」を(イメージ)

そのためにも一人一人が自己中心的にならず、鉄道関係者や沿線住民、そして同趣味者同士で「察しと思いやり」もって撮影に臨みたいものです。

読者からの質問コーナー

読者から頂いた質問にお答えするこのコーナー。早速頂いたのが、ちょうど編成写真撮影にもつながるこのご質問。

Q.夜間の駅などで、列車のヘッドライトが眩しくてうまく撮れません。どうすればよいですか?

夜はヘッドライトが眩しい……(イメージ)
夜はヘッドライトが眩しい……(イメージ)

外光が強い日中に比べて、夕暮れから夜、そして朝方とくらい中でのヘッドライトは明るく見えて撮影にも影響しますね。その際の私なりの対処法をお答えいたします。  

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A1.望遠レンズ、またはズームレンズの望遠域を使わないヘッドライトの強い光で画面全体が明るく濁ったように光ってしまう現象を「フレア」、また同様に、ヘッドライトの反対側に光の点、輪などができることを「ゴースト」と呼びます。どちらも発生すると画面が濁ったり、時には全く列車が見えなくなるなど、画質低下を引

次回「『編成写真』をたしなむ(2)」では、撮影時に気を付けたいことと、それに合わせた具体的なテクニックをお話をしたいと思います。 

(写真は全て編集部撮影)

 

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