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助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

助川康史の鉄道写真なんでも「ニコンZ8」! 鉄道撮影に最適な「軽量モンスター」の実力は

2023年7月1日(土) 鉄道カメラマン 助川康史

鉄道写真撮影のベストサイズ軽量モンスター ニコン「Z8」登場! 

さる5月26日、ニコンのミラーレス一眼の新商品、「Z 8」が発売されました。

ニコンの新型カメラ「Z 8」での鉄道写真撮影とは?
ニコンの新型カメラ「Z 8」での鉄道写真撮影とは?

ニコン「Z 8」の噂は、同じニコンのミラーレス一眼フラッグシップ「Z 9」が約1年半前に発売された直後に、カメラ専門webページや専門家、プロやアマチュアの間でも沸き上がり、それに比例して機能や性能についての憶測と希望が飛び交いました。国内外問わず、多くの人たちからの様々な期待を背負い、ついに「Z 8」は発売となったのです。

私自身、ふたを開けて驚いたのが、縦位置グリップなしのコンパクトなボディに、ほぼ「Z 9」の性能も詰め込んでしまったということです。

ニコンのミラーレス一眼「Z 8」(撮影:編集部)
ニコンのミラーレス一眼「Z 8」(撮影:編集部)
2021年12月に発売されたフラッグシップカメラ「Z 9」(撮影:編集部)
2021年12月に発売されたフラッグシップカメラ「Z 9」(撮影:編集部)

カメラ業界の通常パターンであれば、フラッグシップ機の後に発売されたハイエンド&ミドル機は、フラッグシップ機との差別化のため、性能をある程度デチューン(機能や性能を落とすこと)をするのが定石でした。しかし、ニコン「Z 8」の鉄道写真撮影で活きる性能や機能は、「Z 9」とほぼ同じだったのです。そのためか、カメラを扱う雑誌やWEBでは「ミニZ 9」と書いているところも多いです。

しかし開発者の方によると、「Z 8」はニコン一眼レフ機「D850」の後継を意識したのだといいます。

ニコン「D850」は、高画素による美しい描写が特徴で、全世界で圧倒的人気を誇り、未だ愛用している写真愛好家も多いプロ&ハイエンドユーザー向けのカメラです。まさにニコンが誇る傑作機の一つに挙げられるのではないでしょうか。そんな「D850」も、登場から約6年が経ち、業界の流れはミラーレス一眼カメラ一色。ショートフランジバックで特に広角~標準レンズでの光学的、そして描写力にアドバンテージがあるミラーレス一眼で、「D850」の後継を望む声が世界的に多かったのです。

その「D850」の位置付けのミラーレス一眼に、なんと「Z 9」と同クラスな性能を「持たせてしまった」のが「Z 8」なのです。これだけでも「Z 8」のモンスターぶりがおわかりいただけるのではないでしょうか。

ボディ面に話を移すと、先述の通り「Z 8」は縦位置グリップが無い形をしています。「小型になったとはいえ、前出の『Z 6』シリーズや『Z 7』シリーズなどと比べて大きいじゃん」と思う人も少なからずいたと思います。ミラーレスカメラと言えば「軽量&コンパクト」というイメージを多くの人が持っていて、それは不文律のようにも感じます。

ただ私は、軽いことは良いですが、必ずしも小さい方が優れているとは考えません。私の経験上、小さすぎるボディでの長時間の手持ち撮影は、握力低下のせいか疲れが出ます。特に取材などでは長時間手持ち撮影することもあるので、コンパクトよりも握りやすいベストな大きさが大切になってくるのです。

「Z 8」は「Z 9」から縦グリップを削ぎ落したような形になっていて、ボディは約30パーセント小型に。本体重量も430グラム軽い約910グラムと、小型、軽量になっています。先述した「D850」と比べても、同じく約15パーセント、95グラムほどダウン。ボディビル的に言えば、よりハードに絞り込んだボディというところでしょうか(笑)。

「Z 9」からは約30パーセント、「D850」からも約15パーセント小型になった「Z 8」
「Z 9」からは約30パーセント、「D850」からも約15パーセント小型になった「Z 8」

さて、長々と「Z 8」の概要をお話ししましたが、ここからは鉄道写真で躍動する「Z 8」の性能を、一つずつ紐解いていきます。

鉄道写真で躍動する「Z 8」の性能を解説しよう
鉄道写真で躍動する「Z 8」の性能を解説しよう

編成写真撮影で失敗の無い完璧なピント合わせ
「9種類の被写体検出(乗り物)」+「高性能&高速AF」

「最も鉄道写真で躍動する『Z 8』の機能は?」と問われれば、私は「被写体検出(乗り物)」+「高性能&高速AF」と答えます。

「被写体検出(乗り物)」は、「Z 9」から搭載されたAFを補助する機能で、その中の「乗り物」に鉄道車両が含まれています。この「被写体検出(乗り物)」は、ニコンのディープラーニング技術で蓄積された鉄道車両、特に先頭部のデータを元に、画面内に入った列車の姿を捉えることができます。

これが実に優秀で、設定したAFエリアに入る前から被写体を感知した枠が画面内に現れ、列車の動きに合わせて追従します。それはまるで「これ、列車の先頭部だよね?」と「Z 8」が言っているかのよう(笑)。「Z 8」が画面内の何を追えば良いのか理解しているわけです。

「Z 8」で撮影した編成写真。「Z 8」では、車両の先頭部を認識し、ピントを合わせるべき場所を追従してくれる
「Z 8」で撮影した編成写真。「Z 8」では、車両の先頭部を認識し、ピントを合わせるべき場所を追従してくれる

しかし、それだけでAFが動くわけではありません。被写体がAFエリアに入り、そこでシャッターボタン半押しやAF-ONボタンを押すことで、「Z 8」の高性能なAFを作動させることになるのです。

EVFや背面モニターでは、被写体検出の白枠のみの状態から黄色枠へと色が変わることで、ピントも追従していることを確認できます。なお、カスタムファンクションで枠の色を視認戦の高い赤色にすることもできますが、その場合は常に赤色表示となります。

ちなみに、通常の編成写真で私がおすすめするAF-C(コンティニアスAFサーボ)は、「3D-トラッキング」です。「3D-トラッキング」はニコン独自のAFエリアモードで、被写体のコントラストだけでなく、色も判断して追いかけます。狙った場所の色までも記憶して追い続けるので、よりピンポイントで精度の高いAFを実現しているのです。

鉄道写真撮影で「被写体検出(乗り物)」と「高性能&高速AF」が威力を発揮するのが、列車が奥から手前に来る編成写真を、望遠レンズで撮影する場合です。

編成写真撮影では、あらかじめ線路にピントを合わせておく「置きピン」をする人も多いと思います。しかし望遠~超望遠レンズで撮影する場合、「大体このあたりに合わせておけば大丈夫!」と思って線路に合わせたのに、撮影後に肝心の列車が後ピンだったり前ピンだったりしたことはないでしょうか。それは望遠レンズならではの圧縮感によって、理想とする列車の顔の位置と距離が想像と違ってズレているからです。

そのミスを防ぐにはどうすれば良いかというと、それは列車の顔自体に合わせること。だからといって、列車が来た瞬間に「置きピン」は時すでに遅し。こんなときこそ、列車の動きに合わせてピントを追従し続けてくれる「被写体検出(乗り物)」と「高性能&高速AF」が威力を発揮します。バランスとシャッタータイミング、そして何よりピントがベストな美しい編成写真を撮りたい時に、「Z 8」はその性能をいかんなく発揮して応えてくれます。

超高速走行の新幹線車両もノートリでベストバランス「ハイスピードフレームキャプチャ+」

「Z 8」は完全電子シャッター化によって、通常のRAW撮影でも約20コマ/秒の高速連写ができます。しかし、超高速で走る列車、特に新幹線車両を広角~標準レンズ引き付けて撮影する時は、この高速連写をもってしても、車両のベストポジションで捉えることは難しくなります。多少シャッターが早く降りて列車が奥にある場合はトリミングすれば良いでしょうが、写真表現者としては、やはり厳密に決めた構図をノートリミングで活かしたいところ。となると、高速連写を超える「超高速連写」で捉えるしか他ありません。

そこで是非活用したい「Z 8」の機能が「ハイスピードフレームキャプチャ+」。最大で約120コマ/秒もの超々高速連写ができるので、確実に列車がベストな位置で捉えることができます。

作例はE5系の「はやぶさ13号」。東京~新青森を2時間57分で結ぶ最速「はやぶさ」の一つです。撮影場所は時速320キロ近くで走る高速区間で、秒間20コマでも不安になる速度とレンズの画角です。そこで秒間約120コマの「ハイスピードフレームキャプチャ+」で撮影したのですが、逆に細かくコマを刻み過ぎてしまったくらい。時速約320キロで走るE5系の鼻先がベストポジションの一枚を選ぶことができました。

時速320キロ近くで走る「はやぶさ」を、「Z 8」の「ハイスピードフレームキャプチャ+」で撮影。秒間約120コマの連写性能で、ベストポジションの一枚を選ぶことができた
時速320キロ近くで走る「はやぶさ」を、「Z 8」の「ハイスピードフレームキャプチャ+」で撮影。秒間約120コマの連写性能で、ベストポジションの一枚を選ぶことができた

なお、「ハイスピードフレームキャプチャ+」で撮影できるデータは、JPEGの「NORMAL」のみ。RAWでは記録できません。また、秒間約30コマ/秒の「C30」はFX(フルサイズ)の約4571万画素、同じく約60コマ/秒の「C60」はDX(APS-C)の約1936万画素、そして今回お話しした約120コマ/秒の「C120」は約1136万画素になります。

「約1100万画素なんて小さい!」と思われる方も多いと思いますが、4Kテレビは約829万画素ですから、ある程度の大きさに伸ばしても気にならない解像感になります。今回の「はやぶさ13号」も、アップにしても素晴らしい解像感でしたが、細かくコマを刻み過ぎている分、約60コマ/秒の「C60」でも良かったのではと思っています。そうなれば約2000万画素近くなるので、より緻密な画像に仕上がりますね。

ちなみに、ニコンはJPEGの保存形式に「FINE」「NORMAL」「SMALL」の3つを用意していますが、RAWと比べたデータの圧縮量は、それぞれ1/4、1/8、1/16となっています。これらは、色数をどれだけ多く表現できるかという点に違いが出ます。ただ、「FINE」は人間の目では見分けることのできない色の範囲以上の表現力があり、「FINE」よりもデータ量が約半分の「NORMAL」でさえ、「FINE」との違いを見つけにくいほどです。JEPG「NORMAL」でも十分鑑賞に堪えられる作品になるということも覚えておいてください。

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