鉄道コム

助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

「編成写真」をたしなむ(2) ~ワンランク上の望遠レンズワーク~

2021年9月30日(木) 鉄道カメラマン 助川康史

鉄道写真の基本「編成写真」

鉄道車両や鉄道に関わる全てのものを被写体として捉える鉄道写真。今では様々な表現方法を網羅する、芸術的な作品が溢れていますが、私は鉄道写真の基本は「編成写真」と思います。

助川さんが鉄道写真の基本と考える「編成写真」
助川さんが鉄道写真の基本と考える「編成写真」

ちなみに「編成写真」とは、走行中の列車、または駅で停車している列車の先頭部から最後尾までフレームいっぱいに捉える、車両の記録写真です。

第1回の鉄道写真の歴史でも触れましたが、鉄道写真の黎明期は線路や駅、トンネルなどの鉄道施設や、停車している車両の形式写真を中心とした記録的要素の強い写真がほとんどでした。当時の乾板やフィルムは、現在と比較すると感度がとても低く、高速で動く列車を被写体として撮ることが難しかったことも要因の一つと考えられます。

日本人の鉄道趣味も、駅や線路と言った施設よりは車両に注目することが多く、カメラやフィルムが発達し、一般的に写真が楽しめる昭和の時代に入っても、車両の記録を目的とした写真が大半を占めました。よって「編成写真が鉄道写真の基本」という私の考えも、あながち間違えではないと思います。

何を隠そう、私も車両好きの「ガチ鉄」であり、鉄道写真を始めた頃は編成写真ばかり撮影していました。今でも編成写真を撮ることは好きで、同じ鉄道写真家同士でも編成写真を撮ることのこだわりや考え方を議論することもあります。

今回はその中でも、望遠レンズを使った「編成写真」の撮り方や考え方をお話していこうと思います。

編成写真撮影のノウハウ 望遠レンズ編

先述しましたが、「編成写真」とは列車の先頭部から最後尾まで画面いっぱいにきっちり収める車両中心の記録写真です。車両好きの鉄道写真愛好家、いわゆる「撮り鉄」の方の多くがこの編成写真を撮るべく、活動していると思います。

列車の先頭部から最後尾まで収める編成写真
列車の先頭部から最後尾まで収める編成写真

編成写真は、いかに列車を美しく格好よく撮ろうかと、撮れば撮るほどこだわりが生まれ、より完璧な構図と車両バランスを追求していきます。いわば終わりのない至高の世界ですね。

私もアマチュア時代は、鉄道誌ではプロ鉄道写真家の取材記事や、ハイアマチュアの投稿などで美しい編成写真を見て勉強していました。鉄道写真家の真島満秀氏を師事してからは、写真整理(ポジフィルム整理)を兼ねて、師匠や先輩方が撮影した作品を常に見て体で覚える日々。編成写真だけに限りませんが、それが私の写真表現方法の大きな基礎となっています。

それはプロの鉄道写真家を目指すための特別な時間と空間でしたが、最近はインターネットやSNSのお陰で、より多くの人が同じような勉強ができるようになりました。様々な人が撮影した綺麗な編成写真をパソコンやスマホで気軽に楽しむことができ、また地元の人が見つけた撮影地など、より多くの情報が手に入る時代になりました。この「助川康史の『鉄道写真なんでもゼミナール』」もその一つですね(笑)。

もちろん人によって編成写真理論は違ってきますが、ここから私が考える、望遠レンズで撮る美しい編成写真の講義を始めましょう。

1.望遠レンズならではの表現を活かす

例えば、撮影地が非電化の単線ストレートで、標準レンズから望遠レンズまで選べる自由度の高い撮影地であれば、どのレンズを使うか、多くの人が迷うと思います。そこで私は列車をどの様に表現するかを考えます。

望遠レンズならではの表現のひとつに、画面の圧縮効果があります。標準レンズは先頭部が大きく、そして最後尾は小さく写るのに対し、望遠レンズは先頭部はもちろん、最後尾の車両も比較的大きく写ります。これは望遠レンズならではの、距離感を無くした圧縮効果表現です。この効果を使うと、車両が多く連なる、編成の重厚感を表現できます。

望遠レンズによる圧縮効果で編成の重厚感を表現
望遠レンズによる圧縮効果で編成の重厚感を表現

そのため、まず考えるのは列車の両数。立ち位置にもよりますが、通常の線路際で構えた時、私は5両以上の長編成で望遠レンズを使うことを目安にしています。もし同じ立ち位置で、2~3両程度の短い編成を望遠レンズで撮影使用すると、列車の顔が上下いっぱいにフレーミングされても、左右の空間が多く開いてしまい、美しい編成写真とは言えません。逆に短い編成を望遠レンズで撮ろうと、線路からより離れて撮影すると、やはり迫力の欠けた説明的な編成写真になります。

短編成で望遠レンズを使うと、上下と左右のバランスが悪くなる
短編成で望遠レンズを使うと、上下と左右のバランスが悪くなる

ちなみに、迫力のある編成写真は何かというと、先頭部(先頭車の顔)が大きく写る写真です。動画でも、先頭車が大きくなりながら迫ってくると、その迫力に気圧されますね。写真も同様です。それを踏まえて、先頭部が大きく写り、長編成ならではの列車の重厚感を出すために、望遠レンズを使うのが良いのです。

2.望遠ズームレンズならではの機動力を活かす

美しい編成写真を撮るためのコツはいくつかありますが、その一つとして、電化区間における架線柱の処理があります。なるべく架線柱はなるべく車体に掛けず、また先頭車の横に架線柱が写ってしまうのもよくありません。さらには架線柱の影が先頭車の顔に掛かってもいけません。鉄道写真の撮影地は自由に動けるところが少なく

次回「『編成写真』をたしなむ(3)」では、標準レンズを使ったの編成写真撮影のテクニックと考え方をお話をしたいと思います。 

(写真は全て編集部撮影)

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