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鉄道車両の仕組み

エンジンは発電専用 古くて新しい電気式気動車

2021年11月27日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR東日本のGV-E400系をはじめ、各地でじわじわと増え続けている、非電化路線を走る新たな動力形態の車両たち。その種類は「電気式気動車」「ハイブリッド気動車」「蓄電池電車」などさまざま。ですが、名前は知っていても詳しい仕組みはわからない……という方も多いのではないでしょうか。

今回は、かつて試行されながらも日本では衰退し、そして近年復活を遂げた、電気式気動車について解説します。

電気式気動車のGV-E400系
電気式気動車のGV-E400系

ディーゼル車にモーターを搭載した電気式気動車のしくみ

エンジンで発電した電力と、蓄電池に充電した電力を使うハイブリッド式に対し、エンジンで発電した電力のみを使って走るのが、「ディーゼル・エレクトリック方式」とも呼ばれる「電気式」の気動車です。構成はシンプルで、大きく分けてエンジンと発電用モーター、制御装置、そして走行用モーターというもの。シリーズ式ハイブリッド気動車から蓄電池を取り払ったような構成ですが、開発の流れで見ると、電気式気動車に蓄電池を追加したものがハイブリッド気動車となります。

電気式気動車のシステム構成
電気式気動車のシステム構成
ハイブリッド気動車である、JR東日本 HB-E210系のシステム構成
ハイブリッド気動車である、JR東日本 HB-E210系のシステム構成

電気式気動車では、蓄電池を搭載していないため、加速時にはエンジンの起動が必須です。エンジンによって発電機を回し、これによって得た電力でモーターを動かすことで、車両は加速していきます。実際に乗車すると、加速時にはエンジンと電車のような音の両方が聞こえるのが、電気式気動車の特徴となっています。

古いけど新しい、電気式気動車の歴史

日本では新しいシステムの車両に見える電気式気動車ですが、その歴史は古く、気動車開発の黎明期にさかのぼります。電気式気動車は当時から、現在日本で主流のトルクコンバーターを使用した「液体式」、自動車のマニュアルトランスミッション車のようにクラッチを使用する「機械式」と並び、試行されてきました。

大出力エンジンに対応する変速機の開発が困難だった海外のディーゼル機関車では、現在までこの電気式が一般的です。旅客用車両としても、高速列車用に製造された電気式気動車の例がありました。DD51形を始めとする液体式の機関車を主力とした国は、日本のほか、西ドイツなどごく少数に限られます。

一方の日本では、戦前から電気式気動車の開発が試みられてきましたが、機器の性能不足や重量増加が問題となって、本格導入は断念。国鉄では、1957年より電気式のDF50形ディーゼル機関車を導入し、電気式のメリットを活かす場面もありましたが、結局は性能不足のために蒸気機関車代替の主力にはなりませんでした。結果、機関車ではDD51形やDE10形など、旅客用車両ではキハ10系やキハ58系など、液体式変速機を搭載した車両が主流となりました。

液体式変速機搭載車の一つ、DD51形ディーゼル機関車
液体式変速機搭載車の一つ、DD51形ディーゼル機関車

電気式の成功例と呼べる車両は、国鉄民営化後の1990年代に開発された、JR貨物のDF200形が初めてです。DF200形では、VVVFインバータ制御装置の実用化といった技術革新のもと、国鉄・JR系列では約30年ぶりとなる電気式のディーゼル機関車として登場。1992年から製造が始まり、北海道のDD51形を置き換えていきました。現在はさらに運用線区が広がり、名古屋エリア、そしてJR九州の「ななつ星」けん引用としても活躍しています。

電気式では国内初の成功例といえる、JR貨物のDF200形ディーゼル機関車
電気式では国内初の成功例といえる、JR貨物のDF200形ディーゼル機関車

またJR貨物では、入換用・ローカル線用機関車のDE10形・DE11形の置き換え用として、ハイブリッド機関車のHD300形を開発し、貨物駅に投入しました。が、こちらは後述するコスト面の問題からDE10形・DE11形ほどの大量投入はされず、一部駅での入換用としてのみの少量投入に。ローカル線での貨物列車けん引用としては、あらためて電気式ディーゼル車のDD200形を開発し、2017年より導入を進めています。このDD200形は、JR九州でも採用されたほか、京葉臨海鉄道と水島臨海鉄道も貨物列車けん引用として購入。この2社のDD200形は、2000年代では初となる、私鉄での電気式ディーゼル車の導入例となります。

旅客用車両では、その後もしばらくは従来通りの液体式気動車が主流でしたが、2018年になって、JR東日本がGV-E400系を導入。JR北海道も、姉妹車両であるH100形を導入しました。また、JR西日本でも2021年に電気式気動車のDEC700を導入し、電気式の本格導入に向けた試験を実施しています。

GV-E400系の姉妹車である、JR北海道のH100形
GV-E400系の姉妹車である、JR北海道のH100形

なお、日本における新世代の旅客用車両では、電気式に先行してハイブリッド式が登場しましたが、先述したように、技術的には電気式に蓄電池を追加したものがハイブリッド式です。そのため、HB-E210系やHB-E300系の一部車両のように、蓄電池電力を使用しない電気式気動車モードで走行が可能なハイブリッド式気動車もあります。また、試験的な車両ではありますが、JR西日本のDEC700は、後から蓄電池を搭載してハイブリッド気動車とすることも可能なシステムとなっています。

ハイブリッド気動車への「変身」が可能な電気式気動車、DEC700
ハイブリッド気動車への「変身」が可能な電気式気動車、DEC700

厳密な電気式気動車ではありませんが、JR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」用E001形は、電気式に近いシステムを持った独特な車両。電化区間では架線集電により走行しますが、両先頭車に搭載したディーゼルエンジンにより発電することで、非電化区間でも走行できる、電気式気動車としての側面も持っています。この「デュアルモード車両」や「バイモード車両」と呼ばれる仕組みは、国内では四季島以外に存在しませんが、ヨーロッパなどでは多数の採用例があり、日立製作所もイギリスの都市間輸送用車両として「Class 800」「Class 802」「Class 810」の3形式を製造しています。

「デュアルモード車両」という、日本唯一の仕組みを持つE001形
「デュアルモード車両」という、日本唯一の仕組みを持つE001形

電気式気動車、そのメリットとデメリット

JR東日本をはじめとする各社が導入している電気式気動車。そのメリットとデメリットは、どのようなものでしょうか。従来型の気動車では、変速機や推進軸といった、気動車特有の機械部品がありました。電気式気動車では、システム上は電車にエンジンと発電機を搭載したものとなるため、これらの機械部品が不要。逆に、制御

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