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鉄道車両の仕組み

電車+エンジン+蓄電池 ハイブリッド気動車の仕組み

2021年10月23日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

2007年にデビューしたJR東日本のキハE200形以来、各地でじわじわと増え続けている、非電化路線を走る新たな動力形態の車両たち。その種類は「ハイブリッド気動車」「電気式気動車」「蓄電池電車」などさまざま。ですが、名前は知っていても詳しい仕組みはわからない……という方も多いのではないでしょうか。

今回は、JR東日本が開発して以来、JR各社で採用例が増えているハイブリッド車両について解説します。

ハイブリッド車両の一つ、HB-E300系
ハイブリッド車両の一つ、HB-E300系

現在主流のハイブリッド気動車のシステムとは

従来型気動車の置き換えに際しては、近年はさまざまなシステムが導入されています。そのうち、国内の旅客車両用として最初に実用化されたのが、ハイブリッド気動車です。

「ハイブリッド」とは、「掛け合わせ」や「混成」といった意味です。現在主流となっているハイブリッド気動車のシステムでは、エンジン+発電機と、蓄電池の、2つの電力供給源を持ちます。これが「ハイブリッド」の由来です。

鉄道の動力システムでハイブリッド車両と呼ぶ場合は、ディーゼルエンジンと蓄電池を組み合わせたシステムを指す場合がほとんどです。EV-E301系などの「蓄電池電車」や、JR東日本などが開発中の「燃料電池式車両」も、架線や燃料電池と蓄電池を組み合わせたハイブリッド車両として扱われることがありますが、本稿ではディーゼルエンジンと蓄電池の組み合わせのもののみを扱います。

鉄道業界においては、JR東日本が試作車両キヤE991形「NEトレイン」を2003年に製造して試験を開始。4年後の2007年に、世界初のハイブリッド方式採用営業用車両となるキハE200形が、小海線でデビューしました。

世界初のハイブリッド気動車である、キハE200形
世界初のハイブリッド気動車である、キハE200形

ハイブリッド気動車のシステムは、以下のような構造です。

JR東日本 HB-E210系のハイブリッドシステム構成
JR東日本 HB-E210系のハイブリッドシステム構成

図のHB-E210系を例とすると、エンジンは発電機と直結。コンバーターは発電した電気を一旦直流へと変換する装置です。主回路蓄電池は、いわゆる走行用のバッテリー。このハイブリッド気動車のキモです。非常蓄電池は、HB-E210系などが装備するもの。2群構成の主回路蓄電池がいずれも故障した場合でも、エンジンを起動させ、電気式気動車として走行するための装備です。

その他の構成は、基本的に一般的な電車と同様。直流電力を交流に変換し、モーターの動きを調整するインバーター、車内照明などの電源を担う補助電源装置、そしてモーターという組み合わせとなっています。

この構成により、発進時は蓄電池に充電した電力のみを使用して走行用モーターを回し、しばらくするとエンジンが稼働して発電する仕組みを実現。発進時にエンジンを使用しないことで、燃費と環境負荷の低減を図っています。

停車中および発進時には、主回路蓄電池から電力を供給
停車中および発進時には、主回路蓄電池から電力を供給
ある程度加速すると、エンジンで発電した電力の供給を開始
ある程度加速すると、エンジンで発電した電力の供給を開始
惰行中にエンジンで発電した電力で主回路蓄電池を充電
惰行中にエンジンで発電した電力で主回路蓄電池を充電
減速時は回生ブレーキによって主回路蓄電池を充電
減速時は回生ブレーキによって主回路蓄電池を充電

このシステムの場合、エンジンと車輪は駆動軸で直結されておらず、実質的には「小型発電所と蓄電池を搭載した電車」と言えます。このHB-E210系のように、エンジンを発電専用とした方式は「シリーズ(直列)式」と呼ばれています。

HB-E210系などでは、車内にシステムの動作状況を表示するディスプレイが設置されています
HB-E210系などでは、車内にシステムの動作状況を表示するディスプレイが設置されています

日本の鉄道においては、JR東日本ではキハE200形、「仙石東北ライン」向けのHB-E210系、観光列車仕様のHB-E300系が運行中。JR九州でも、「蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両」と称するシリーズ式ハイブリッド気動車のYC1系を、2020年3月に導入しています。ほかにも、JR東海が試験を進める特急型車両HC85系、JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」用87系、JR貨物のHD300形など、さまざまなハイブリッド車両が登場しています。

「仙石東北ライン」で活躍するHB-E210系
「仙石東北ライン」で活躍するHB-E210系
日本の機関車では唯一となるハイブリッド車両、HD300形
日本の機関車では唯一となるハイブリッド車両、HD300形

実用化されなかった「MA式」と「マイルドハイブリッド」

電車に近い構成のキハE200形とは異なり、従来の気動車に近い構成のハイブリッドシステムも開発されています。JR北海道と日立ニコトランスミッションが手掛けた「モータ・アシスト式ハイブリッド駆動システム」(MA式ハイブリッドシステム)です。

MA式のシステム構成
MA式のシステム構成

このMA式は、気動車にモーターとバッテリーを追加したような構成。エンジン出力は変速機を介して駆動軸で車輪に伝達されるほか、モーターの出力も変速機経由で車輪に伝達できます。このため、キハE200形のようなモーターのみの駆動に加え、エンジンのみ、モーターとエンジンの併用と、3つの駆動パターンを使い分けることができます。なお、このMA式のような複数の動力源を駆動に使用する方式は「パラレル(並列)式」と呼ばれています。

実際の走行時には、発進から時速約20~45キロまではモーターのみで加速。以降はエンジンが起動し、エンジンとモーター双方の出力で加速していきます。エンジンとモーターの両方を併用することで、エンジン出力が小さくてもエンジン単体のスペックを上回る加速性能を確保することが可能。MA式の走行試験では、試験車両のエンジン出力は243kWにも関わらず、出力331kWのエンジン搭載車であるキハ150形に匹敵する加速性能を記録したといいます。

パラレル式の特徴は、モーターの搭載数は1個のみとなっていること。この1個で、エンジンによる発電、回生ブレーキによる充電、バッテリー電力による駆動の、全ての役割を担います。そのため、シリーズ式のように、エンジンで発電した電力でモーターを駆動し、同時に余力で蓄電池を充電する、という、発電と駆動の同時作業はできません。蓄電池の充電は、エンジンを駆動に使用しない惰行中に実施。回生ブレーキ使用時にも充電できます。

さらに簡易なシステムとして、JR西日本がキハ122形を用いて試験した「マイルドハイブリッド方式」も挙げられます。こちらは従来型気動車にハイブリッドシステムを搭載したもの。回生ブレーキによるエネルギー回収を主目的としており、キハE200形やMA式のようにモーターのみで加速することはできません。しかしながら、追設する機器を簡易なものとすることで、シンプルかつコンパクトなシステム構成を実現しました。

高出力の発揮を狙ったMA式、シンプルな構成を目指したマイルドハイブリッド式ですが、いずれも2021年現在では実用化されていません。

JR北海道のMA式は、キハ160系を使用した試験では良好な成績を収めたものの、当時(2010年ごろ)のJR北海道で相次いでいた事故・不祥事への対策に集中することとなり、採用予定だった新型車両の計画が中断。MA式を採用して製造されたキハ285系試作車は、営業運転に就くことなく解体されてしまいました。

営業投入されることなく解体された、MA式採用車両のキハ285系
営業投入されることなく解体された、MA式採用車両のキハ285系

また、マイルドハイブリッドを試験したJR西日本のマイルドハイブリッド式は、同じく試験での結果は良好だったものの、同方式を用いた車両投入の話は聞かれません。2021年には、電気式気動車とハイブリッド気動車をコンバートできるDEC700形を試験的に導入。今後はこの2つの方式による試験を進めていくこととなっています。

2021年に登場したDEC700形では、マイルドハイブリッド式は非採用
2021年に登場したDEC700形では、マイルドハイブリッド式は非採用

余談ですが、自動車業界においては、シリーズ式ハイブリッドは日産自動車のシステム「e-power」など採用例はわずかで、本田技研工業(ホンダ)のシステム「e:HEV」を始めとする多くのメーカーのフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)システムはパラレル式を採用。また、軽自動車を中心として、マイルドハイブリッドも広く採用されています。

ハイブリッド気動車、そのメリットとデメリット

ハイブリッド気動車の最大のメリットは、従来の気動車では難しかった、回生ブレーキの導入を実現したことです。モーターは電気を流すと回転しますが、その逆に、モーターの回転軸を外部からの力で回転させると、電力を生み出す発電機となります。回生ブレーキはこれを応用して、車両走行用のモーターを発電機として用い、走

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