ミラーレス一眼が拓く新たな鉄道写真の世界

鉄道写真撮影のシーンによってAFを使い分ける~ミラーレス一眼・一眼レフでAFを使いこなすには・後編~

2021年2月23日(祝) 鉄道カメラマン 助川康史

AFシステムという名の方程式を知る

前編「デジタルカメラのAFシステムを知る」の回でも記載したが、デジタルカメラ全盛の時代、何より「ピント合わせ」が大切と思っている読者も多いだろう。

フィルム時代は、ピント合わせはもちろん、厳密な露出合わせが重要だった。カメラ内蔵の露出計や単体露出計を駆使して適性露出を導き出す。「適性露出を常に出せる人はプロ」とも言われていた。

だが、感光媒体がフィルムからイメージセンサーに変わったことで、それは一変した。カメラ自体の演算処理の向上で適正な露出をいとも簡単に導き出し、美しい露出で表現してくれる。専門学校でみっちり教えられる「絞り」と「シャッタースピード」の相関関係など知らなくても、露出補正さえ覚えていれば、カメラ任せで撮れてしまうのだ。デジタルカメラの技術の進歩は目覚ましいと、以前述べたとおりだ。

それでも、まだ写真がうまく撮れないという人は、ピントの良し悪しが一番のネックになっているのではないだろうか。そこで重要になってくるのがAF(オートフォーカス)システムの存在だが、AFシステムを知ることの大切さを述べたのは前回のこと。カメラによって搭載されるAFシステムは異なり、そのAFシステムには被写体に対して得手不得手がある。よって、被写体に対してどのAFシステムを使うか、ということが重要になる。

言うなれば、数学で方程式を覚え、問題に合った方程式を使いわけ、解くことと同じだ。AFシステムを理解し、場面によって使い分けることで、写真の質はがらりと変わる。AFシステムについてはあまり……、という人は是非、前編の「デジタルカメラのAFシステムを知る」を熟読してほしい。

場面によってAFを使い分ける「編成写真篇」

読者にとって釈迦に説法かもしれないが、「編成写真」とは車両主体の記録写真で、基本的に先頭から最後尾まで、バランスよくフレーム内に収める写真である。

編成写真は駅で停まっている列車でも撮れるが、やはり躍動感と迫力を感じる走行中の車両を狙いたくなるもの。だが、それゆえにピント合わせで一番苦労するのも、編成写真撮影というものだ。では、確実にピント合わせをするためには、どのようにAFを使い分ければ良いだろうか。

先頭から最後尾までを収める「編成写真」
先頭から最後尾までを収める「編成写真」

先ずは望遠・超望遠レンズの編成写真撮影に向いているAFシステムだが、これは一眼レフの「位相差AF」、そしてミラーレス一眼の「像面位相差AF」だ。

望遠・超望遠撮影で「先頭部の位置はここだろう」と思って、線路にあらかじめピントを合わせておく「置きピン」をしたが、シャッターを押した場所のピントが思ったよりも前ピン(ピントが前)や、後ピン(ピントが後ろ)でピンボケになったという経験は無いだろうか。それは、望遠圧縮効果によって正確なピント位置が分かりづらく、実際のピント位置とシャッターポイントがずれてしまっているからだ。

そんな望遠・超望遠レンズ撮影の失敗解消につながるAFモードが、被写体の動きを追うようにピントを合わせ続ける「コンティニアスAF」だ。コンティニアスAFの呼称はメーカーによって様々(キヤノンの「サーボAF」、ソニーの「コンティニアスAF」、ニコンの「AF-C」など)だが、機能は同じ。コンティニアスAFは、列車を捉える時間が長ければ、その分精度も上がるので、AFエリアを列車の動きに合わせて選ぶ必要がある。

例えば、オーソドックスな直線での編成写真撮影では、ファインダー内でAFポイント・AFエリアが列車の動きに合わせて追従するモード(ソニーの「ロックオンAF」やニコンの「ターゲット追尾AF」など)を使うと良いだろう。

直線での編成写真撮影は、被写体にAFエリアが追従するモードを使用(イメージ)
直線での編成写真撮影は、被写体にAFエリアが追従するモードを使用(イメージ)

アウトカーブで超望遠レンズを使い、列車の顔が正面を向くようなアングルの場合は、列車の顔が正面を向く場所に、広めのAFエリアを置くと良い。先頭部をAFエリアが捉える時間が長くなり、またAFエリアが広いとAFポイント同士が補完し合い、AF精度を上げることができるからだ。

アウトカーブで狙う場合は、列車の顔が正面を向く場所にAFエリアを置く(イメージ)
アウトカーブで狙う場合は、列車の顔が正面を向く場所にAFエリアを置く(イメージ)

ここで、ミラーレス一眼で撮影する場合の注意点が2つある。1つは、ミラーレス一眼の像面位相差AFは、コントラストが弱く、横方向の線や模様で構成される被写体のピント検知が苦手ということ。これはミラーレス一眼全般に当てはまる現象だ。理由は、像面位相差AFのピント検知を司る、位相差画素の構造や配置に起因している。

ミラーレス一眼は、コントラストが弱く、横方向の線で構成される被写体が苦手(イメージ)
ミラーレス一眼は、コントラストが弱く、横方向の線で構成される被写体が苦手(イメージ)

だがそれを逆手に取れば、編成写真撮影では列車の顔でも縦の窓枠や模様になる部分、そして複雑な形状の連結器回りなどにAFエリアを設定すれば、AF精度が上がる。また、縦構図にすれば、横方向の線や模様がファインダー内では縦方向になるので、同じくAF精度が上がることになる。

ミラーレス一眼での撮影時には、縦の窓枠や連結器などにAFエリアを設定すると精度が上がる(イメージ)
ミラーレス一眼での撮影時には、縦の窓枠や連結器などにAFエリアを設定すると精度が上がる(イメージ)

編成写真撮影でコンティニアスAFを使う場合は、AFエリアやAFポイントをどこに設定するか、撮りたい列車のデザインをしっかり把握しておくことも忘れないようにしよう。

2つ目は、絞りを絞り過ぎないということ。絞り込みで暗くなり、光の入射角も少なくなると、像面位相差AFの検知能力は落ちてしまう。そのためにも、絞りは開け気味に撮影するのが良い。具体的な値は各メーカーによって違うが、F8以上開けること(F5.6やF4など)を目安にすると良い。

高速連写モードになると、大概のミラーレス一眼は絞りを撮影時と同じF値に固定したまま、AF検知も行う。そうなるとAF能力に影響するというわけだ。もちろんメーカーごとにAF能力も違うので一概には言えないが、「絞りは開け気味に」と考えておくと良いだろう。

このように、超望遠~望遠レンズでの編成写真撮影は、是非カメラのコンティニアスAFを活用しよう。ピント合わせをカメラに任せれば、後は高速連写をするだけ。最も良いバランスの編成写真のカットが1枚以上はあるはずだ。

では、標準~広角レンズでの編成写真撮影はどうだろう。標準~広角レンズでは、列車の先頭部の位置が望遠レンズよりもつかみやすい。そのため、ピント位置を固定して撮影する「置きピン」撮影がベストだ。列車が来たら連写するか、狙いを定めてワンショットでシャッターを押す。「置きピン」撮影は、鉄道写真ベテラン勢にと

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