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新車両リポート

有楽町線・副都心線の新型車両、東京メトロ「17000系」がお披露目

2020年8月11日(火) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

東京メトロは8月11日、有楽町線・副都心線向けの新型車両「17000系」を報道陣に公開しました。

有楽町線・副都心線用の新型車両「17000系」
有楽町線・副都心線用の新型車両「17000系」

17000系は、2006年にデビューした10000系以来、有楽町線・副都心線用車両としては約15年ぶりの新形式となります。1974年の有楽町線開業時に投入された7000系を置き換えるため、2022年度までに21編成180両が投入される予定となっています。

17000系が走る有楽町線・副都心線と、その相互直通運転先である東急東横線、みなとみらい線、西武有楽町線・池袋線、東武東上線は、通勤や通学、ビジネス、観光と、さまざまな目的で利用される路線です。そこで17000系では、「沿線のお客様に親しまれる車両」を掲げ、この幅広い乗車目的にあわせたデザインとなりました。

また、高加減速性能や急勾配・急曲線への対応が求められる地下鉄線と、高速運転が求められる直通先各線の双方の要求を満たすべく、機器面も追求。東京メトロ 車両部設計課 課長補佐の中村大樹さんは、「安全・安心・快適な輸送を成し遂げる車両として、東京メトロの総力を結集した車両」と説明しました。

7000系や10000系をイメージした外観

車体は、東京メトロの従来車両と同じくアルミ製。有楽町線のラインカラーであるゴールドと、副都心線のラインカラーであるブラウンを、前面や側面に配置しています。

軽量化のためにアルミ車体を採用した17000系。有楽町線と副都心線のラインカラーを配しています
軽量化のためにアルミ車体を採用した17000系。有楽町線と副都心線のラインカラーを配しています

先頭部は、丸みを帯びつつも段差をつけた形状。直線で構成される7000系と、曲線で構成される10000系の双方を意識したデザインとなっています。

先頭部は、丸みを帯びつつも、貫通扉付近を窪ませ、段差を付けた形状
先頭部は、丸みを帯びつつも、貫通扉付近を窪ませ、段差を付けた形状

先頭部のライトも、7000系や10000系を連想させる丸目のもの。アルミ車体という無機質な強さの中に、優しさを感じさせることも狙っています。前照灯はLEDを採用しており、視認性向上と省エネルギー化を図った設計となっています。

7000系や10000系を連想させるデザインとした先頭部のライト
7000系や10000系を連想させるデザインとした先頭部のライト

正面と側面の行先表示器は、フルカラータイプのLEDを採用。駅ナンバリングを表示するほか、側面では号車案内の表示も可能です。なお、正面の行先表示器については、シャッタースピード1/1000秒まで切らずに撮影することが可能です。

側面の行先表示器。ちなみに号車表示も可能となっています
側面の行先表示器。ちなみに号車表示も可能となっています

モノトーンでスタイリッシュさを追求

車内は、モノトーンを基調にラインカラーを使用し、スタイリッシュさを追求したデザイン。また、袖仕切りや貫通扉にガラスを採用し、地下空間においても開放感を感じられる設計としています。

モノトーンを基調とした車内。袖仕切りや貫通扉にガラスを採用し、開放感を演出しています
モノトーンを基調とした車内。袖仕切りや貫通扉にガラスを採用し、開放感を演出しています
座席の背もたれは有楽町線の、吊革は副都心線のラインカラーを、それぞれ採用しています
座席の背もたれは有楽町線の、吊革は副都心線のラインカラーを、それぞれ採用しています

扉上には、17インチワイド液晶2画面による車内情報表示器を設置。また、8箇所中4箇所の扉上には、車内全体を死角なく監視できる防犯カメラを設置しています。

扉上に設置された車内情報表示器。1車両あたり4か所には、防犯カメラも設置されています
扉上に設置された車内情報表示器。1車両あたり4か所には、防犯カメラも設置されています

床面高さは、7000系よりも60ミリ下げられ、10000系と同じ1140ミリとなりました。さらにドア出入口下部をホーム側へ約10ミリ傾斜させており、車いすやベビーカーでの乗降がしやすくなっています。

ドア出入口の下部はホーム側に傾斜した設計。車いすやベビーカーでの乗降に配慮しています
ドア出入口の下部はホーム側に傾斜した設計。車いすやベビーカーでの乗降に配慮しています

各車両の車端部には、車いすやベビーカーに対応したフリースペースを設置。車体側面にもこれを表すピクトグラムが描かれています。

各車両に1か所設置されたフリースペース
各車両に1か所設置されたフリースペース
フリースペース区画の車体側面には、これを示すピクトグラムが描かれています
フリースペース区画の車体側面には、これを示すピクトグラムが描かれています

なお、2019年にデビューした丸ノ内線用の2000系では、フリースペースにモバイル機器充電用のコンセントが設置されていますが、17000系では非設置。これは、2000系の結果を反映する以前より17000系の設計がスタートしていたこと、路線ごとの特性に応じたことによるということです。東京メトロでは、今後の結果を見て検討する可能性は示したものの、現段階では設置する考えはないとしています。

運転台は、速度計が液晶画面に表示されるなどの違いはあるものの、基本的には10000系や7000系副都心線対応改造車の配置を踏襲しました。これは、5社間での相互直通運転を実施するにあたり、各社間で乗務員室の機器配置を可能な限り揃えるという取り決めによるもの。形式ごとに差異はありますが、他社の車両についても、類似した配置となっています。

17000系の運転台。速度計が液晶画面に表示されるなどの違いはありますが、基本配置は10000系を踏襲しています
17000系の運転台。速度計が液晶画面に表示されるなどの違いはありますが、基本配置は10000系を踏襲しています

10000系よりも省エネに

床下機器では、現在の東京メトロでは標準となっている、VVVFインバータ制御装置と永久磁石同期電動機(PMSM)を採用。制御装置にはフルSiC素子を採用しており、10000系よりも約20%の消費電力削減を実現できるといいます。モーター搭載車と非搭載車の比率(MT比)は4:6で、起動加速度は3.3km/h/s、常用減速度は3.5km/h/s。営業最高運転時速は110キロとなっています。

17000系のVVVFインバータ制御装置。フルSiC素子を採用しており、10000系よりも省エネ化を図っています
17000系のVVVFインバータ制御装置。フルSiC素子を採用しており、10000系よりも省エネ化を図っています

保安装置は、東京メトロや東急電鉄、横浜高速鉄道みなとみらい線、西武有楽町線で採用している車内信号式ATC、東武鉄道のT-D-ATC、西武鉄道のATSに対応。さらに無線列車制御システム(CBTC)にも準備対応しています。

また、17000系では丸ノ内線用の2000系に引き続き、「車両情報監視・分析システム(TIMA)」を搭載。営業線走行中の車両機器の動作データを、インターネット経由で本社や指令所、車両基地に送信できます。これによって、故障が発生した際の状況を指令所などでいち早く確認できるようになるほか、データの蓄積・分析によって故障の低減に繋げることも目指しています。

なお、全編成が10両編成で製造された10000系では、7000系の8両編成が検査などで運用を離脱した際に、一時的に中間車2両を抜いて8両編成で走ることができるようになっています。

一方、17000系では、10両編成を一時的に8両編成として運用することは想定していないとのこと。置き換える7000系と同様、10両編成は10両編成用の、8両編成は8両編成用の運用にのみ就くことになるといいます。

17000系は、2020年9月ごろより乗務員訓練を開始し、2021年2月に営業運転を開始する予定です。2021年4月までに10両編成6本を、2022年度中に残る8両編成15本を、それぞれ投入する計画となっています。

17000系の設計に関わった、東京メトロ 車両部設計課 課長の荻野智久さんは、「お客様の日常をさりげなくしっかりと支えて、末永く愛される電車になってほしい」と説明。また、東京メトロが培った技術・経験を統合して生まれた車両であり、「安全・安定・省エネ・快適といった技術的な取り組みも知ってもらいたい」とも語っていました。

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