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鉄道技術展

ホームドアやドローン、印刷まで、さまざまな業界が出展した鉄道技術展

2020年1月1日(祝) 鉄道コムスタッフ

鉄道・交通システムやインフラ技術、運行管理、車両、インテリア、旅客サービスなど、鉄道に関するあらゆる技術を対象とする「鉄道技術展」が、千葉県の幕張メッセにて開催されました。

幕張メッセにて開催された鉄道技術展
幕張メッセにて開催された鉄道技術展

第6回目となる今回は、車両製造メーカーや部品メーカー、メンテナンス関連会社など、535社・団体が出展しました。

新世代の車両を展示

鉄道車両メーカーの「日本車輌」は、新型の新幹線「N700S」のグリーン車内モックアップを展示。進化した車内空間の快適性を実感できる展示ブースとなっていました。

N700Sのモックアップ
N700Sのモックアップ

同じく鉄道車両メーカーの「総合車両製作所」は、同社の次世代ステンレス車両ブランド「sustina」で採用されたレーザー溶接のサンプルを展示。従来のスポット溶接による構体よりもフラットな仕上がりとなっており、同社の技術力を表していました。

レーザー溶接のサンプル(左)。従来工法である右側のスポット溶接のサンプルと比べると、フラットな仕上がりとなっているのがわかります
レーザー溶接のサンプル(左)。従来工法である右側のスポット溶接のサンプルと比べると、フラットな仕上がりとなっているのがわかります

ところで、sustinaといえば、東急5050系5576号車や2020系、京王5000系のように、レーザー溶接を採用したフラットな仕上がりの車体をイメージする方が多いかもしれません。しかしsustinaとは、共通の「プラットフォーム」、つまり車体構造や機器システムを採用した車両群のこと。E235系のように鋼材を重ね合わせた部分があったとしても、共通のコンポーネントを採用していればsustinaブランドに含まれる車両となります。

車両メーカーではありませんが、京阪電気鉄道のトータルデザインなどを手掛けてきた「GKデザイングループ」も、ブースを展開。2020年春にデビューする近鉄の新型名阪特急「ひのとり」の大型モデルなどを展示していました。

GKデザイングループがデザインを担当した「ひのとり」
GKデザイングループがデザインを担当した「ひのとり」

続々登場、新たなホームドア

近年設置が進められているホームドア。このホームドアを開発・製造するメーカー各社では、さらに進化したホームドアのコンセプトモデルを展示していました。

JR西日本グループのJR西日本テクシアは、JR京都線などに設置されている昇降式ホーム柵の改良型、「支柱回転動力伝達型昇降柵」を展示しました。これまでに設置された昇降式ホーム柵は、動作時に支柱から「腕」が垂直に伸びる仕組みとなっていますが、この支柱内部の構造が複雑となる欠点がありました。この新型昇降柵は、腕が回転しロープを昇降させるので、動作機構がシンプルとなり、低コスト化を実現しています。

JR西日本テクシアの新型ホーム柵。「腕」が回転してロープを昇降させます
JR西日本テクシアの新型ホーム柵。「腕」が回転してロープを昇降させます
裏側から見た新型ホーム柵。こちらは柵が降りた状態です
裏側から見た新型ホーム柵。こちらは柵が降りた状態です

また、左右に扉が動く可動柵でも、パイプを使用した新型機を展示。JR京都線のJR総持寺駅に設置されている親子式の新型ですが、子扉をパイプとすることで、列車の風圧による荷重の低減や軽量化、低コスト化を実現したといいます。

パイプを使用した新型ホームドア
パイプを使用した新型ホームドア

そして、同社が開発している究極のホームドアが、「マルチフルスクリーンホームドア」です。一般型車両や特急車両など、さまざまな形式のドア数・編成長に対応するフルスクリーンタイプのホームドアで、車両ドアに合わせて開閉する「子扉」に加え、戸袋に当たる「親扉」も可動するのが特徴。幅広い車両への対応に加え、ホームと軌道側を完全に隔離した安全性の高いホームドアとなっています。会場ではLEDパネルによるモデル展示のみとなっていましたが、2023年開業予定の「うめきた新駅(仮称)」への設置を目指し、開発が進められています。

マルチフルスクリーンホームドアのモデル展示
マルチフルスクリーンホームドアのモデル展示

JR東日本グループのJR東日本メカトロニクスは、軽量ホームドア「スマートホームドア」を展示しました。パイプ構造を採用したことにより、従来型のホームドアよりも50%軽量化され、設置工事やメンテナンスが省力化されています。2017年より町田駅に試行設置されている製品ですが、会場では扉などの形状が異なる新型が展示されていました。この新型のスマートホームドアは、京浜東北線の蕨駅を皮切りに、JR東日本の各駅に展開されていく予定となっています。

スマートホームドア
スマートホームドア

信号・通信機器や発車標などを手掛ける京三製作所も、新型のホームドアを展示。従来型の扉に加え、パイプやパンチングメタルの扉を採用し、軽量化を図っています。最も軽量なのはパイプ型ですが、このタイプでは「傘などの物を掛ける」「軌道側に手を出す」といった危険な行為ができてしまうデメリットもあります。一方のパンチングメタル型では、軽量化という観点では劣りますが、安全性と軽量化の両立を図ることができるといいます。

京三製作所の新型ホームドア。左下にあるものが、パンチングメタルの扉です
京三製作所の新型ホームドア。左下にあるものが、パンチングメタルの扉です

ホームドアの制御機器も進化しています。QRコードを開発したデンソーは、新開発した「tQRコード」を活用したホームドア開閉制御システムのモックアップを展示。車両の扉にQRコードを貼るだけで、さまざまな編成長やドア数に対応してドアを開閉制御できるシステムです。現在、都営浅草線などで導入が進められており、浅草線内で東京都が管理する駅においては、2023年度までに設置を終える予定です。

tQRコードを活用したホームドア開閉制御システムの展示
tQRコードを活用したホームドア開閉制御システムの展示

券売機やホームドアシステムなどを開発している高見沢サイバネティックスは、ホームドアの列車連携システムを担うドア開閉検知センサーを展示していました。列車が定位置に停車後、車両ドアの開閉を検知してホームドアを連動させるためのものです。この製品ではセンサーに加えてカメラも搭載しており、将来的には乗降中の旅客も検知できるようにしたいということでした。

ドア開閉検知センサー
ドア開閉検知センサー

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