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京急の着席サービス「ウィング・シート」を体験

2019年11月1日(金) 鉄道コムスタッフ

京浜急行電鉄では、10月26日のダイヤ改正にあわせ、着席サービス「ウィング・シート」の提供を開始しました。

ウィング・シートは、土休日の一部快特を対象に設定する着席サービス。ラッシュ時間帯に運転される「モーニング・ウィング号」「イブニング・ウィング号」(以下ウィング号)の着席サービスを、日時・号車限定で、日中時間帯にも拡大したようなサービスです。対象列車は、クロスシート車両の2100形が充当される泉岳寺~三崎口間の一部快特。40分おきの提供となっています。

ウィング・シート設定列車に充当される2100形
ウィング・シート設定列車に充当される2100形

乗車可能駅は、下り列車が泉岳寺~上大岡間の各停車駅、上り列車が三崎口、三浦海岸、京急久里浜、横須賀中央、金沢文庫、上大岡の各駅。その他の停車駅では降車は可能ですが、乗車することはできません。

ウィング・シートの利用には、乗車券に加えて座席指定券の購入が必要です。座席指定券は300円で、乗車当日の朝4時30分より、会員制の予約サイト「KQuick」で発売。駅や車内での購入はできないため、注意が必要です。

事前に会員登録が必要ですが、VISAやJCBなどグローバルブランドのクレジットカードがあれば、数分で登録が可能です。購入はスマートフォンからも対応。時刻表で乗りたい列車を選び、QRコードを発券します。座席は窓側や通路側、ボックス席を指定できるので、家族連れであれば車端のボックス席を指定し、向かい合わせで旅行を楽しめます。

座席指定券はスマートフォンで購入できます
座席指定券はスマートフォンで購入できます

ダイヤ改正初日の10月26日、このウィング・シートを体験してみました。乗車駅は横須賀中央駅。14時57分に発車する快特のウィング・シートに乗り込みます。

一部の駅では発車標でウィング・シートを案内していたようですが、横須賀中央駅では表示はなし。駅の放送のみでウィング・シート提供列車との案内がなされていました。

それもあってか、列車の到着前から、2号車の乗車目標には乗客が並んでいました。しかしながら、そのほとんどはウィング・シートの利用者ではない人たち。スタッフに声を掛けられ、他の乗車目標へと移動する様子が幾度か見られました。

列車は時刻通り到着。ドアが開きますが、ウィング・シートが設定されている2号車では、乗降可能なドアは三崎口側の1箇所のみ。泉岳寺側のもう1箇所には緊締幕が張られ、乗降できないようになっています。

2号車の泉岳寺側からは乗車できず、緊締幕が張られています
2号車の泉岳寺側からは乗車できず、緊締幕が張られています

乗車すると、車内にスタッフが待機しているので、スマートフォンの画面を見せます。QRコードをスキャンして手続きは終了。指定された座席に着席し、目的地まで向かいます。

車内は従来の2100形の設備そのままですが、座席のヘッドレストが緑色のものに変更されています。

ヘッドレスト以外は従来からの2100形そのままの室内
ヘッドレスト以外は従来からの2100形そのままの室内

この日のウィング・シートの乗客は10人ほど。その多くは試乗目的と思われる人たちでしたが、ボックス席には子どもを含めた家族連れが座っていました。この日、貫通扉から見える隣の一般車両は立ち客が出るほどの混雑。特に子ども連れの場合では、着席できるか否かは疲労度に大きな違いとなるでしょう。終点の泉岳寺までは50分ほど。停車駅や所要時間は快特と変わりませんが、快適に移動できました。

ウィング・シートと同様の座席指定車両は、京阪電気鉄道が「プレミアムカー」として、2017年より導入しています。8000系のうち1両を改造した車両を用いており、車内は2+1列のリクライニングシートを配置。専属のアテンダントにより、ブランケットや携帯電話充電器の貸し出しサービスも提供されています。

プレミアムカーの車内。2+1列のリクライニングシートを設置しています
プレミアムカーの車内。2+1列のリクライニングシートを設置しています

プレミアムカーの乗車率は好調なようで、京阪は2020年度を目処に、8000系と同じく京阪特急に使用している3000系にも、プレミアムカーを導入することを発表しています。現在、プレミアムカーを連結した特急は日中は20分おきの運行となっていますが、3000系への導入により、10分おきの運行が可能となります。

翻って、京急のウィング・シートの提供列車は、下り列車は泉岳寺駅9時55分発から15時15分発までの9本、上り列車は三崎口駅11時16分発から15時56分発までの8本、かつそれぞれ40分おきと、運転時間帯や本数が限られています。そのため、朝の7時台や8時台に途中駅の川崎や横浜から着席したい、あるいは18時台に横須賀から都心方面に移動したい、という需要には応えられません。また、車両も既存のものをそのまま使用しているため、プレミアム感はありません。

しかしながら先述したように、ウィング・シートの前後の車両は、試乗した列車では立ち客も出るほどの混雑率。土休日の午前中の下り列車、午後の上り列車は、行楽客の利用が多く、告知やダイヤの設定次第では、かなりの需要が見込まれそうです。

ウィング・シートは、これまでに2018年秋、2019年ゴールデンウィーク、同年秋と、3回試行されており、今回のダイヤ改正において万を持して定期設定となりました。初日ということもあってか乗車率はかなり低めでしたが、利用者への周知に加え、運行時間帯の拡大によって、多くの利用が見込まれるのではないでしょうか。

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