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鉄道ファンでも思考回路はショート寸前……だったかも? 阪神なんば線開業前の、混沌極まる「停車駅バラバラ『すぎる』作戦」

2024年2月26日(月) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

特急など最速達の列車が停車する駅を、急行といった下位の速達列車が通過する。「下克上」とも呼べる変則的な停車駅の設定は、都市を走る私鉄路線でいくつか見られます。そのメリットは、「混雑を各種別に分散できること」。各列車の混雑度をなるべく揃えることで、輸送力の強化が期待できるのです。筆者が「停車駅バラバラ作戦」と呼ぶ、こうした運転形態は、西武池袋線や東武伊勢崎線(スカイツリーライン)などで見られます。が、かつては阪神電車が、その王者とも呼べる路線でした。その複雑さは、西武や東武をはるかに凌駕する、「停車駅バラバラ『すぎる』作戦」ともいえるものだったのです。

阪神なんば線開業前に設定されていた、阪神本線の準急。「停車駅バラバラ『すぎる』作戦」の一構成員でした
阪神なんば線開業前に設定されていた、阪神本線の準急。「停車駅バラバラ『すぎる』作戦」の一構成員でした

阪神電車は2009年3月、阪神なんば線の開業とともに種別や停車駅を再編。その「バラバラっぷり」はずいぶんと落ち着きを見せました。が、それ以前の運転形態は、鉄道ファンでさえ思考回路がショートするほど複雑でした。以下、いくつか例を出してみましょう。

  • 直通特急・特急がとまる魚崎駅を急行が通過
  • 区間特急・快速急行がとまる青木駅を準急が通過
  • 区間特急がとまる香櫨園駅を準急が通過
  • 急行がとまる福島駅を区間急行が通過

当時、平日の朝ラッシュ時において、全列車がとまる駅は神戸三宮(駅名は現在のもの、以下同様)、大阪梅田を除くと芦屋のみ(快速急行は芦屋駅通過ですが、当時は平日朝の設定がありませんでした)。停車駅ベースでみると、「神戸三宮と大阪梅田以外、全列車がとまる駅は『ない』」というありさま。「急行は特急より格下」と思っていると痛い目に遭う、混沌極まる運転形態だったのです。

阪神なんば線開業直前、2006年時点の阪神本線(神戸三宮~大阪梅田間)の停車駅一覧。種別ごとの停車駅が「バラバラ『すぎる』ことがわかります
阪神なんば線開業直前、2006年時点の阪神本線(神戸三宮~大阪梅田間)の停車駅一覧。種別ごとの停車駅が「バラバラ『すぎる』ことがわかります

乗客にとっては「ややこしい」の一言に尽きる「停車駅バラバラ『すぎる』作戦」ですが、やはり混雑の分散には大きく貢献していたと筆者は感じます。当時、阪神の速達列車はすべて6両編成で、並行する阪急神戸線やJR神戸線よりも短い編成で運転されていました。1列車ごとの定員が小さいなかで各列車の停車駅を工夫し、輸送力を極限まで高めていたのです。限られた環境で最良のパフォーマンスを出す、阪神電車の努力の結果だったともいえるでしょう。

ちなみに、阪神なんば線開業後、停車駅のバラバラっぷりは落ち着いたものの、下位種別の下克上が「完全になくなった」わけではありません。現在、青木おおぎ駅では、平日の朝に「快速『急行』が区間『特急』を追い抜く」光景が見られます。また、直通特急・特急がとまる御影駅(平日朝以外は芦屋駅も)を、快速急行は通過します。が、これには、「両駅のホームが短く、延伸できない」という、混雑の分散とは別の理由があります。どちらもホームの長さがたりず、やむを得ず通過の扱いにしているのです。

快速急行が御影駅(と土休日の芦屋駅)を通過する原因となった、近鉄車両(と8両編成)による直通列車
快速急行が御影駅(と土休日の芦屋駅)を通過する原因となった、近鉄車両(と8両編成)による直通列車

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