鉄道コム

鉄道コらム

クルマは楽々通る坂道、でも路面電車は? 宇都宮には「碓氷峠」並みの坂も登場

2023年8月23日(水) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

2023年8月開業の路面電車「芳賀・宇都宮ライトレール」、通称「ライトライン」。宇都宮駅の東口と、芳賀町の芳賀・高根沢工業団地停留場を結ぶ、約14.6キロの路線です。

路面電車として建設されるこの路線は、当たり前ですが一部区間で既設の道路上を走行します。しかしその経路上には、最大で60パーミル、つまり1000メートル進むと60メートル登るという勾配が存在します。1997年に廃止された信越本線の横川~軽井沢間、いわゆる「碓氷峠」の区間では、最急勾配は66.7パーミルでした。数値はわずかに及ばないものの、芳賀・宇都宮ライトレールは碓氷峠級の勾配を有することになります。

芳賀・宇都宮ライトレールの「碓氷峠級」の勾配
芳賀・宇都宮ライトレールの「碓氷峠級」の勾配

ゴムタイヤを使う自動車が走る道路では、鉄製のレールと車輪の組み合わせで走る鉄道よりも、勾配の基準は緩やかです。道路の勾配はパーセント(パーミルの10倍、たとえば60パーミルは6パーセント)で表されており、高速道路上ですら5パーセント(=50パーミル)の勾配は山間部では珍しくありません。

そんな道路上を走る路面電車では、ルートの設定次第で、このような自動車には難しくなく、鉄道車両には厳しいレベルの勾配を通らされることもあります。たとえば都電荒川線(東京さくらトラム)では、王子駅前~飛鳥山間に60パーミル級の坂が存在。自動車や同じ東京都交通局の都バスが難なく走り抜ける横を、路面電車がゆっくりと上り下りする姿が見られます。

王子駅前~飛鳥山間の坂を上る荒川線。車両の前後に大きな高低差があることがわかります
王子駅前~飛鳥山間の坂を上る荒川線。車両の前後に大きな高低差があることがわかります

芳賀・宇都宮ライトレールでは、将来的に宇都宮駅西側への延伸も計画されています。この延伸が実現した際には、宇都宮駅東口から約60パーミルの勾配を経由して、東北本線や東北新幹線を乗り越えるということ。これが実現した際には、宇都宮の「峠」がさらに増えることになります。

余談ですが、日本の道路で最も急な勾配は、東京都と大阪府に存在する37パーセント=370パーミルだということ。ちなみに、ケーブルを用いて坂を上り下りするケーブルカーは、日本では東京都の高尾山ケーブルが最も急(鉄道事業法準拠の路線に限る)で、最大勾配は608パーミルだそう。車両の自力登坂ではありませんが、実は鉄道(の仲間)の方が急な坂道を上り下りしているのです。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

側面はふたたびラッピングに

京急が2025年度に1000形8連2本の導入を発表。側面は「塗装」から「ラッピング」に戻る形に。

画像

JR東海の311系、6月末引退

名古屋圏で活躍した311系が6月末で定期運用終了。引退前の記念装飾掲出、廃車回送乗車ツアーも。

画像

「緑色のサザン」復活

特急「サザン」用の南海10000系1本が、6月からデビュー時の濃淡グリーンのツートンカラーに。

画像

名鉄の新型車両「500系」

既存の100系を置き換える車両。鶴舞線直通用として、2026年度より順次導入。

画像

ニコン「Z5II」の実力は?

スタンダード機でも性能充実! 鉄道カメラマンの助川康史さんが、ニコンの新ミラーレスカメラ「Z5II」の魅力をご紹介します。

画像

5月の鉄道イベント一覧

新緑がまぶしい季節となりました。5月のプラン立てには、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。