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導入例のない新幹線、「スーパー特急方式」とは

2022年4月23日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

日本の高速鉄道といえば新幹線、加えて現在開発・建設が進められている超電導リニアもありますが、かつては「スーパー特急」といった方式も検討されていた時期がありました。

かつて「スーパー特急」の採用が計画されていた北陸新幹線
かつて「スーパー特急」の採用が計画されていた北陸新幹線

スーパー特急とは、名称に「スーパー」を冠した列車のことではなく、高規格新線に在来線走行が可能な列車を走らせるもの。正式には「新幹線鉄道規格新線」といいます。将来のフル規格の新幹線導入を前提とした暫定的な方式で、線路設備の規格は新幹線と同等となっていますが、線路幅は新幹線の1435ミリではなく、在来線と同じ1067ミリ。最高速度は時速160キロ~200キロ程度とする計画でした。秋田・山形新幹線のように、既存在来線の線路幅を新幹線と揃え、新幹線車両を時速130キロで走らせる「ミニ新幹線」とは逆の考え方となります。

2022年開業予定の西九州新幹線を例に挙げると、当初の開業区間となる武雄温泉~長崎間をスーパー特急方式で整備していた場合、博多~武雄温泉間は既存の在来線に乗り入れでき、従来通り博多~長崎間の直通列車が運行できます。また、在来線の最高速度が低い区間に絞って高速新線を建設するため、整備費用面のメリットがあると言われていました。

一方、最高速度はフル規格に劣るほか、あらたに時速200キロで走行可能な在来線車両の開発が必要。費用面でも、線路設備自体はフル規格とほぼ同等となるため、新規整備区間に限ってはそれほどコスト削減には繋がりません。加えて、車両は在来線規格のため、既存のフル規格路線である九州新幹線や山陽新幹線との直通運転も不可能です。

スーパー特急は、北陸新幹線や九州新幹線、西九州新幹線での導入が予定されていましたが、いずれも開業前にフル規格での整備に変更。西九州新幹線においては政治問題もあり武雄温泉以東の建設が不透明となっていますが、その他の2路線については、他新幹線直通も含めたフル規格での整備のメリットを発揮しています。

海外の高速鉄道「TGV」や「ICE」などでは、高速鉄道車両が在来線に直通可能なため、日本でいえば新幹線車両がそのまま和倉温泉駅に乗り入れるような運用も可能です。2022年現在は導入例のないスーパー特急ですが、仮に実現していれば、海外高速鉄道のような面白い運用形態が生まれていたのかもしれません。

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高速鉄道「ICE」と在来線列車が同じホームに発着するドイツ

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