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京成電鉄16年ぶりの新型一般車、3100形を詳しく見る

2019年10月11日(金) 鉄道コムスタッフ

京成電鉄は、新型の一般型車両「3100形」を、報道陣に公開しました。2003年にデビューした3000形以来、約16年ぶりとなる新型一般型車両、その車内外をご紹介します。

京成電鉄の新型一般型車両、3100形。10月26日より営業運転を開始します
京成電鉄の新型一般型車両、3100形。10月26日より営業運転を開始します

オレンジ色で成田スカイアクセス線をアピール

3100形は、「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」がコンセプト。質実さ、実用本位といった京成の基本思想をベースに、空港アクセスを担う車両して、より便利で快適な移動空間の提供を目指した車両としています。形式名は3100形ですが、現在成田スカイアクセス線の主力一般型車両である3050形と同様、同線用車両と位置付け、今回の導入編成については3150番台としています。

3100形の車体は、デザインを一新した先頭部や足回りなどの機器類を除き、基本的には従来の3000形と共通。日本車輛製造の「日車ブロック工法」を採用した18メートル級車両となっています。車両の製造はこれまで同様、日本車輛製造と総合車両製作所の2社が担当します。

車両の外観は、成田スカイアクセス線を走行することを強調するため、同線の案内カラーであるオレンジを基調としたデザインを採用。水色をベースとした3050形とは印象が変化しています。また先頭部や側面には、3050形と同様に、空港アクセスのシンボルである飛行機をアクセントとして配置。さらに3100形では飛行機に加え、浅草寺雷門や成田山新勝寺など、沿線各所のイメージイラストをアクセントとして描いています。

成田スカイアクセス線用の車両として、車体カラーリングはオレンジ色を採用。飛行機や沿線各所のイメージイラストを、アクセントとして描いています
成田スカイアクセス線用の車両として、車体カラーリングはオレンジ色を採用。飛行機や沿線各所のイメージイラストを、アクセントとして描いています

先頭部は3000形から一新し、絞りや折りを入れたデザインに。急行灯と尾灯は一体型とし、スピード感を表現したデザインとなっています。

側面の行先表示器は、3000形と比較して約2倍に拡大。フルカラーで4か国語の表示に対応します。また、京成電鉄として初めて、駅ナンバリングの表示にも対応しています。なお、3151編成における撮影時のシャッタースピードについては、先頭部の表示器は1/1000秒まで、側面の表示器は1/500秒まで、それぞれ表示を切ることなく撮影できます。

細かい点ですが、3号車の「弱冷房車」は、扉上のステッカーが従来の京成電鉄標準のものから変更され、新京成電鉄と同じものとなりました。担当者によると、弱冷房車ステッカーを多言語化することとなり、従来から英語表記があった新京成電鉄のものを採用することで、コストの削減を図ったといいます。

混雑緩和で折りたたみ式座席を設置

座席は、背もたれを従来より高くしたハイバック式を採用。座面は外観と同じオレンジ色を基調とし、日本のシンボルである桜と、千葉県の県花である菜の花をアクセントとして描いています。

3100形の座席の特徴と言えるのが、各車両4か所(先頭車は3か所)に設置されたスーツケース置場です。8人掛け座席の中央2席を、スーツケース置場として折りたためるようにし、車内混雑対策とするものです。

京成電鉄の担当者によると、成田スカイアクセス線での運用時、大きなスーツケースが通路や座席前を塞ぎ、車内の移動や着席に支障があるという声が、沿線住民から寄せられていたとのこと。一方で、特急列車のような固定式の荷物置場の設置では、座席定員が減ってしまいます。そこで、折りたたみ式の荷物スペースを設置することで、混雑緩和と閑散時間帯の座席定員数確保の両立を狙ったといいます。

大型のスーツケースを3個程度置ける幅が確保されています
大型のスーツケースを3個程度置ける幅が確保されています

折りたたみ式の座席は、折りたたんだ状態でのロックと下げ位置でのロック、ロック無しの3段階で運用可能。実際にどの設定を基本とするかは、営業運転開始後に利用者からの反応を見つつ検討するそうです。

このほか、従来から設置されている先頭車の車いす用スペースに加え、中間車にもフリースペースを設置。車いすやベビーカー用としての利用を想定しています。

ドア上に設置される車内案内表示器は、17インチのものを採用。京成電鉄では初めて2画面となり、停車駅などの案内表示に加え、広告などの放映が可能となっています。広告などのデータ伝送は、JR東日本の成田エクスプレスなどと同様、WiMAX回線を使用するとのことです。

車内には、プラズマクラスターイオン発生装置や、防犯カメラも設置。いずれも京成電鉄の一般型車両としては初の装備品です。座席下に設置される客室内の暖房は、従来より強化され2系統に。従来よりもきめ細やかな温度設定を実現したほか、暖房性能が1.3倍に向上しています。

非常用のドアコックは、設置位置を従来の座席下から扉上に変更。混雑時でも位置を把握しやすくなっています。

京成3100形 客室内 - Spherical Image - RICOH THETA

進化した搭載機器類

3000形の印象を残す車体と比べ、機器類では大幅な進化が見られます。

制御装置は、京成電鉄初のハイブリッドSiC素子適用PWMインバータを採用。1基で主電動機4台を制御するVVVFインバータ制御装置を2群ずつ搭載する、1C4M2群制御となっています。

制動装置(ブレーキ)は、3000形のMBSA形を基本とし、回生ブレーキを有効に活用する遅れ込め制御としています。また、回生ブレーキ領域拡大のため、回生定トルク領域の終端速度を高め、機械ブレーキによるエネルギーの無駄を減らしています。さらに低負荷回生制御を改善し、架線電圧が高い場合でも回生絞り込み量を最小限とすることで、回生ブレーキが使用できる場面を増やしています。

主電動機(モーター)の定格出力は140キロワット。京成電鉄初の全閉式三相かご型誘導電動機を作用し、電動機内部への粉じんの進入を防いでいます。

空気圧縮装置(コンプレッサー)は、京成電鉄初のオイルフリースクロール式を採用。1号車と8号車に設置しています。補助電源装置(SIV)は、3号車と6号車に設置。3000形と同様、1台が故障した場合でももう1台が編成全体を担当する自動受給電制御の機能を備えます。

乗務員室は、基本構成は3000形に近いものの、マスコンハンドルのノッチ段が、ブレーキ5段から7段に変更。きめ細やかなブレーキ操作が可能となっています。また、従来はLEDで表示していたノッチ表示器は、14段表示に変更されています。さらに、京成電鉄の一般型車両として初めて「定速制御」を採用。時速25キロ以上での走行時、ボタン操作で速度を一定に保った運転が可能となりました。

京成3100形 乗務員室 - Spherical Image - RICOH THETA

車掌スイッチは「間接制御方式」を採用。ドア鍵が不要となり、ドアを開く際には、軸を捻って押し上げる操作となります。また、冷暖房使用中の長時間停車時に使用する「選択扉」機能を継続搭載するほか、新たにドアカット機能も備えています。

3000形や3700形で行先や種別、誤通過を防止用の「停車駅予報装置」などの設定用に設置されていた「設定器」は、3100形では廃止。運転台横に設置されたタッチパネル式モニタ装置に、機能が集約されました。

3100形の性能は、運転最高速度が時速120キロ。起動加速度は時速3.5キロ毎秒、減速度は常用最大が時速4.0キロ毎秒、非常ブレーキが時速4.5キロ毎秒。編成は6M2Tで、編成出力は3360キロワットとなっています。

今後の運用は

3100形は、10月26日(土)のダイヤ改正にあわせて、営業運転を開始する予定。成田スカイアクセス線の「アクセス特急」運用を中心に運転される予定で、京成線のほか、都営浅草線、京急空港線などにも乗り入れます。

なお、既存のアクセス特急の主力である3050形については、今回の3100形の導入により2本が同運用を離脱し、一般色へカラーリング変更のうえ京成本線系統へ。残る4本についても、3100形と同様にオレンジ色のカラーリングに変更となるほか、3100形の導入によって順次置き換えが進められる予定となっています。

また、本線系統用3100形の導入について、京成電鉄の担当者は「計画が定まっておらず、今のところは未定」としています。

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