鉄道コムおかげさまで鉄道コムは25周年

助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

RAW現像&レタッチで絵作りをしよう!! 鉄道写真のプロが教えるRAW現像

2022年11月3日(祝) 鉄道カメラマン 助川康史

作品に命を吹き込むRAW現像&レタッチ作業

鉄道写真だけに限らず、様々な写真分野で最も多い質問が、撮影テクニック。そして、その次に多いのが、「RAW現像」や「レタッチ」などの、撮影後の処理の仕方です。

RAW現像とレタッチ作業は、写真という芸術作品の表現を高めることにつながる
RAW現像とレタッチ作業は、写真という芸術作品の表現を高めることにつながる

RAW現像やレタッチは、撮影時の状況を忠実に表現するというだけでなく、撮影者のイメージや意図を広げ、作品に命を吹き込む作業です。近年は鉄道写真界でも写真展や写真コンテストが数多く催されることになり、鉄道写真は絵画と同じような芸術作品として見られるようになってきました。

芸術性を見せるためには、「真を写す」という写真本来の意義に加え、撮影者の個性を反映させるといった表現方法も大切になってきます。その個性を表現する方法は、構図取りやシャッタースピードの設定など、撮影時にカメラやレンズで設定することと、撮影後にパソコンなどでRAW現像やレタッチをすることで可能になる表現があります。

もちろん、撮影時の撮って出し画像も良いですが、それだけでは表現できない世界を実現するRAW現像やレタッチの世界を、今回はお話していこうと思います。ちょっと鉄道写真から離れた専門的な内容になりますが、鉄道写真以外でも使える、写真界共通のテクニックですので、是非覚えてください!

JPEG? TIFF?? RAW???

まずは、RAW現像やレタッチといった作業のお話をする前に、写真データの記録形式のお話をしましょう。

世界的に広く普及している写真データの記録形式は、全部で3つあります。「JPEG」「TIFF」「RAW」です。写真撮影する時は、撮影データをどのような記録形式にするか、カメラで設定する必要があります。昔はTIFFを選択できるカメラもありましたが、現在はJPEGとRAWのどちらか(または両方)が選べることが一般的です。

現在のカメラでは、記録形式でJPEGとRAWを選べることが一般的
現在のカメラでは、記録形式でJPEGとRAWを選べることが一般的

ところで、「JPEGとRAWのどちらを選んだほうが良いのかわからない」という経験をした方も多いのではないでしょうか。それは、フィルム時代を経験してきたベテラン勢も、デジタルカメラに移行した際に経験したはずです。戸惑う理由は一つ。「記録形式の意味がよくわからない。なんでいくつもあるの?」です。記録形式が複数あるのは、もちろん理由があります。それでは一つずつ解説していきましょう。

◆◆JPEG◆◆

もっとも汎用性が高く、また扱いやすいのが「JPEG」です。ファイルの拡張子(ファイルの種類を表す表示)が「.jpg」「.jpeg」「.JPG」などになっています。

JPEGは、ほとんどのパソコンやスマホ、タブレットで写真を見ることができ、またブログやSNSでも気軽にアップしやすいというメリットがあります。JPEGは、TIFFやRAWと比べると、画像サイズが通常の大きさだとデータ量が軽いので、パソコンやタブレットなどでの表示速度も速く、大量保存にも向いている記録形式です。

その反面、グラデーションやコントラストなどの、表現しきれない、必要のない部分を除外、圧縮して記録する非可逆圧縮方式(いったん圧縮すると基本的に元に戻せないもの)なので、JPEG保存の写真は後で露出や彩度、コントラストを調整(レタッチ)しようとしても、すぐに色やコントラストの破綻が起きやすくなります。よって、JPEGは画像の最終形態として保存する記録形式と覚えておくと良いでしょう。

◆◆TIFF◆◆

JPEGと同じように、多くのパソコンやタブレット、スマホなどで表示できる汎用性の高い記録形式が「TIFF」です。ファイルの拡張子は「.tiff」または「.tif」と表示されます。

JPEGと違うところは、解像感が高く、色深度(1ピクセルが表現できる色数)があるところ。JPEGは非可逆圧縮方式なのに対し、TIFFは可逆圧縮方式。肉眼では見分けのつかない部分のオリジナルデータも残しているので、ディテールやグラデーションが豊かです。そのため、撮影後に露出の上げ下げやグラデーションを変えるといったレタッチ作業にも対応できます。また、汎用性の高い形式だけに、様々なレタッチソフトで作業できるのもメリットです。

なお、TIFFデータでは「8bitTIFF」と「16bitTIFF」の2形式が選択できることがありますが、8bitと16bitでは主に色数に大きな違いが出ます。8bitカラーの色数は256色(JPEGも8bitカラー)で、片や16bitカラーは一気に増えて6万5536色になります。人間の目は100万色も見分けることが可能といいますが、はっきり見分けられるのは10色程度とも言われます。そのため8bitカラーの256色でも十分な色数なのですが、レタッチで露出や彩度を変えためには、表示されていない部分の色情報も必要になるので、やはり16bitカラーの方が有利になります。

ロールプレイングゲームでいえば戦士&魔法使い&僧侶&商人&遊び人(笑)のような万能データであるTIFFですが、デメリットはデータ量の重さ。JPEGの数倍はあります。加えて、8bitTIFFに比べ、16bitTIFFはさらに重くなります。よって、パソコンでの表示が遅くなってしまい、性能の低いパソコンではレタッチをするとフリーズする可能性も。オンラインストレージなどを使用したデータのやり取りにも時間がかかってしまうので、取り回しは非常に悪くなります。

そのため、TIFFは写真展やコンテスト用の作品、ポスターなどの印刷物で、高解像で高品質なデータが必要な「ここぞ!」という場合に保存する形式と覚えておきましょう。

◆◆RAW◆◆

RAWは英語で「生」「そのままの」を意味するように、デジタルカメラの世界では、カメラが撮影したデジタルデータをそのまま、あるいは低圧縮で記録した画像形式のことを指します。

RAWデータは、各カメラメーカーの信号処理や記録方式の違いにより、互換性が無いデータです。そのため、カメラメーカーの専用RAW現像ソフトや、「Photoshop」に付属する「Camera Raw」、「SILKYPIX」などのレタッチソフトを使って現像作業をすることになります。拡張子は、ニコンが「.NEF」、キヤノンが「.CR3」、ソニーが「.arw」といったように、それぞれが独自の記録形式になっています。

RAWデータには撮影時の様々な情報が埋め込まれており、特にカメラメーカーの専用RAW現像ソフトでは、各社独自の機能や特徴を生かした現像作業も可能です。

ちなみに、RAWデータをレタッチしてJPEGに変換する作業を「現像」と言いますが、これはフィルム時代の「フィルム現像」から来ています。フィルムは撮影しただけでは何もできませんが、それを現像することにより、プリントなどに使用できます。RAWデータもそのままでは汎用性が無いので、JPEGやTIFFに変換することを、フィルム現像と同じ様に例えたのです。

RAWデータのメリットは、やはりカメラ本来の性能を活かし、データを余すことなく記録できること。可逆圧縮方式、または非圧縮データなので、撮影後のレタッチ&現像作業の許容範囲が広く、カメラの性能だけでなく、レンズの表現力も最大限に引き出すことができます。また、bitカラーも12~14bitのものが多く、16bitTIFFよりもデータは軽いのも特徴です。ただ先述した通り、メーカーごとに拡張子が違うので専用ソフトが無いと閲覧もできず、汎用性は低くなります。

ちなみに、私はRAWデータを保存用にしており、それから必要な画像をレタッチし、貸し出しや納品用のデータとして、JPEGに現像、ストックしています。

JPEG撮って出しではダメなの?

レタッチやRAW現像の話をするとよく聞かれるのが「『JPEG撮って出し』の画像はダメなの?」という質問。答えは「ダメ」ではなく、むしろ良い場合もあります。

残り5773文字/全文:10530文字

この続きはプレミアム会員になるとご覧になれます

プレミアムサービスのご案内 / 会員の方はチェックイン

プレミアム会員の入会はこちらから

カメラのJPEG記録は、「ピクチャーコントール」や「ピクチャースタイル」などの撮影モードの設定をそのまま反映した撮影状態で記録するものですが、シャープネスやコントラスト、彩度など、各撮影モードの中で最もバランスが良い設定になっています。そのため、状況によっては、下手にレタッチ&RAW現像するよりもき

バナー

アンケート

このリポート記事について、よろしければ、あなたの評価を5段階でお聞かせください。

鉄道コムおすすめ情報

画像

北陸新幹線いよいよ敦賀開業

3月16日のダイヤ改正で、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業。その他の各線でも動きが。

画像

「上沼垂色」復活

E653系4両編成1本が「上沼垂色」に。4月21日以降、「いなほ」「しらゆき」で運転。

画像

「対面乗換」でない理由は?

3月16日に開業する、北陸新幹線の敦賀駅。なぜ「対面乗換方式」が採用されなかったのでしょうか。検討時の配線図もご紹介。

画像

「きらめき」かつては北陸にも

今は九州を走る特急「きらめき」ですが、かつては北陸地方を走る列車の名前でした。

画像

新幹線をアグレッシブに撮る!!

速いスピードで駆け抜ける新幹線。撮影のコツを、鉄道カメラマンの助川さんが解説します。

画像

3月の鉄道イベント一覧

ダイヤ改正の3月到来。鉄道旅行や撮影の計画は、鉄道コムのイベント情報で。