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助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」 第6回:「流し撮り」に挑戦!(2)

2022年1月3日(月) 鉄道カメラマン 助川康史

「鉄道写真なんでもゼミナール」第5回は「流し撮り」の基本的なお話をしましたが、改めて復習しましょう。

「流し撮り」とは、静止画である写真に動く被写体に動感を与えるテクニカルな写真表現です。カメラは手ブレをする程のスローシャッターに設定し、動く被写体に同調するように追いながらカメラを振って撮ります。上手く決まると、被写体は止まり、背景が流れるというスピード感あふれる作品が撮れます。

被写体の動きにカメラを同調させて振る「流し撮り」
被写体の動きにカメラを同調させて振る「流し撮り」

鉄道写真愛好家だけでなく、モータースポーツや動物、航空機など、様々な写真分野で楽しむ写真愛好家が、SNSや写真コンテストなどで数多くの作品を発表しています。そこで、今回は流し撮りのより具体的な撮り方と、フォトジェニックな撮り方をお伝えします。

流し撮りで止まって見える範囲は?

流し撮りは、基本的に被写体の動きに同調した部分のみがブレずに他が流れます。真横に流し撮りをする場合はブレない部分は線、同じく斜めに流す場合は点になるなど、流し方によってブレない箇所の見え方は大きく変わります。

「なぜ流し撮りをすると、ブレていない箇所は部分的になってしまうのか?背景を流しても車体全体がブレないように撮る方法はないのか」という質問をいただいたことがあります。

まず、流し撮りでブレない箇所が面でなく、線や点でしかない理由ですが、それは列車の動きが線運動なのに対して、流し撮りは自分を軸にして回る円運動だからです。

列車は線運動だが、流し撮り時のカメラの動きは円運動。列車とカメラの動きが同調するのは一点のみとなる(イメージ・編集部作成)
列車は線運動だが、流し撮り時のカメラの動きは円運動。列車とカメラの動きが同調するのは一点のみとなる(イメージ・編集部作成)

正確に同調する箇所は、線運動と円運動が交わる一点しかないため、その一点から離れるほど、ブレは大きくなります。そのため列車の側面を完全に写し止めて背景を流すには、カメラも列車と同じく線運動をしなくてなりません。ようするに、完全に線路と平行する道路を、車などに乗って、列車と等速で走りながら撮る以外に方法はありません。

ただ、完全にファインダー内に見える車体全体を、なるべくブラさず撮ることもできます。それは線路からとにかく離れ、望遠レンズで流し撮りをすることです。線路から離れるほど円運動の半径は大きくなり、線運動に近くなります。その分、ブレないで見える範囲が大きくなるわけです。

望遠レンズを活用すれば、ブレて見える範囲が少なくなる
望遠レンズを活用すれば、ブレて見える範囲が少なくなる

ただし、望遠レンズでの流し撮りは、手元で数ミリ動きがずれると、ファインダー越しに見る列車は数メートルずれることがあります。標準レンズよりも意外と等速で列車を追い続けるのが難しいのが、望遠レンズでの流し撮りなのです。流し撮りは写り方の特徴をよく理解し、とにかく練習をして速度感に慣れるというのが重要になります。

狙うはヘッドライト!

人物写真を撮る時、皆さんは体のどこの部分を意識しているでしょうか。イメージ的な作品を撮る場合もありますが、大抵の場合は、人物の目を基準にピントや構図などを考えているはずです。

では、鉄道車両ではどうでしょう。私は、人物の目にあたる部分は鉄道車両でいうとヘッドライトだと思っています。実際にデザイン的にも目に見える車両も多く、光を放つだけあって、列車の表情の中でも最も存在感を持っている箇所です。流し撮りは車体の1点しか写し止められないというのが基本ですから、やはりヘッドライトを写し止めるのが一番です。

流し撮りではヘッドライトを写し止めるのが一番
流し撮りではヘッドライトを写し止めるのが一番

流し撮りでヘッドライトを追い続けるには、目標が必要です。その目標は、ファインダーの格子線表示を利用したり、予測したヘッドライトの位置にAFポイントを表示させると良いでしょう。

逆に、列車の鼻先を画面隅から切れないように追うのは、あまりお勧めしません。先述しましたが、流し撮りは1点しか写し止められないので、鼻先を追っかけてしまうとヘッドライトを写し止められないこともあります。先頭部のデザインが垂直な通勤型車両はともかく、流線形のデザインである新幹線車両や特急車両は鼻先を追っかけて撮っていては、ヘッドライトはブレて写ります。特にE5系やE6系など、鼻先とヘッドライトが離れている車両はその差が顕著なだけに、ブレも大きくなります。

流線形車両では鼻先を追ってしまうとヘッドライトがブレることに
流線形車両では鼻先を追ってしまうとヘッドライトがブレることに

「狙うはヘッドライト!」、この言葉を基本に流し撮りに挑戦してください。

イメージチックな流し撮り(1)「超スロー流し」

流し撮りはシャッタースピードが遅くなれば遅くなるほど、背景が流れる効果は大きくなるというのは前回お話した通りです。シャッタースピードを遅くすれば、写真はよりスピード感が増しますが、さらに遅くすると、背景は輪郭が見えなくなるほど大きく流れ、列車は背景に浮き上がる様な幻想的な表現になります。これが「超スロー流し」の世界です。

シャッタースピードを遅くした「超スロー流し」
シャッタースピードを遅くした「超スロー流し」

ちなみに私は、1/15秒以下が超スロー流しをするためのシャッタースピードと考えています。最適なシャッタースピードは、列車の速度やレンズの焦点距離、列車との距離で変わるので「これが最適なシャッタースピード!!」とは断定はできません。そのためにも普段から流し撮りに挑戦して、様々なシャッタースピードで表現

読者からの質問コーナー

読者から頂いた質問にお答えするこのコーナー。今回のテーマ、流し撮りに関してのご質問です。

Q. 私は身体的な影響もあり、手持ちで長時間カメラを保持し続けるが難しいです。三脚等を使用しては流し撮りはできないでしょうか。

A. 結論から申し上げますと「できます!」。

実は、私も流し撮りで三脚をよく使います。特に超望遠レンズで真横に走る列車を撮る場合は必須です。

超望遠での流し撮りでは三脚は必須だという助川さん(撮影:編集部)
超望遠での流し撮りでは三脚は必須だという助川さん(撮影:編集部)

三脚を使った流し撮りは、細かな上下動を抑えることができます。また、ここが一番重要ですが、超望遠レンズでの流し撮りの際は、手持ちで手ブレ補正機能を使用する場合よりも、意図しない補正動作が掛からないために安定して撮影できます。

超望遠レンズの流し撮りは、線路と離れて撮影するため、意外とカメラの振り方がゆっくりになります。手ブレ補正機能を使うと上下動を抑えてくれる一方、あまりにゆっくりな動きのために、列車に併せて横に振る行為を手ブレと感知して、動きを止めようと補正する場合もあります。レンズによっては手ブレ補正に「流し撮り検知モード」が付いているものもありますが、それも、やはりある程度レンズを振る速さが無いと、逆に横への動きも止めようとするようです。

さて、三脚を使った流し撮りのセッティングの方法ですが、三脚にカメラをセットし、横方向のスイングのみをフリーしてそのほかは固定します。そしてファインダーを覗きながらカメラを振り、線路がつねに水平に流れるよう、調整をすれば良いのです。

調整の方法ですが、三脚のヘッドを動かしても線路との水平は出ません。3本ある脚をそれぞれ伸ばしたり、縮めたりして調整します。最初は時間がかかるかもしれませんが、慣れるとどのように脚を調整したら良いのかわかるので迅速にできるようになります。

「右上から左下」というような流し撮りの場合も、脚の長さを調整するのですが、ある程度の角度が付くと、三脚の重心バランスが崩れて脚が浮き上がりやすくなります。そういう場合はアタッチメントを使い、三脚ヘッドの上にもう一つ三脚ヘッドを付けることで対処できます。下の三脚ヘッドを線路と平行になるよう傾けて、上の三脚ヘッドでスイングをすれば良いのです。この方法を使えば、大概の場面で三脚を使った流し撮りができるようになります。

ただ、重量のあるレンズの場合はそれでもバランスが崩れることがあるので、撮影時は注意しましょう。

次回より、助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」は隔月連載となります。

春の足音が聞こえてくる頃ということで、春の鉄道風景写真撮影についてお話しいたします。どうぞご期待ください!!

また、鉄道写真やカメラ、レンズに関わる質問も随時募集しております。あわせてよろしくお願いいたします。

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