鉄道の歴史を語るアイテムとして、大きな存在と言える記念きっぷ。約30年にわたる平成の間にもさまざまなきっぷ類が発売されました。
数としては十分ではありませんが、筆者の手持ちの中からピックアップし、仕分けてみたところ、平成ならではの特徴のようなものが見えてきました。大まかには、数字並びに始まり、磁気式が登場し、路線や駅の開業とともにさまざまな趣向のものが発売され、といったものです。
今回は、記念きっぷを通して、平成時代を振り返ってみます。
![「天皇陛下御即位記念乗車券」。令和元年も同名の記念乗車券が発売されます](https://images.tetsudo.com/report/162/01.jpg)
平成初期のきっぷ
平成から令和への改元では、5月1日を中心に各社局で記念きっぷが発売されます。昭和から平成の際は、改元への準備期間がなかったこと、時世のムードが変わるまで月日を要したこともあり、改元を記念するタイプのものは身近な範囲ではなかったと記憶しています。平成2年(1990年)になると、即位の礼に関する行事が設けられ、同年11月12日には「即位礼正殿の儀」が行われました。その記念に発売された一つに、写真の「天皇陛下御即位記念乗車券」があります。京王帝都電鉄(当時)発売のもので、新宿駅発の乗車券3枚と、台紙、封筒のセットで500円。有効期間は同年末まででした。
改元記念ではありませんが、平成元年発売の記念きっぷは少なからずありました。ここでは、中野駅の開業100周年記念入場券を紹介します。お手製の台紙に当時の趣が見てとれるうえ、中野駅の電話番号が03に続いて3桁というところにも歴史を感じます。同年4月9日に開催された記念イベントの会場(中野駅付近の公園)で購入しました。
![中野駅の開業100周年記念入場券(左)と、小田急の「平成5年5月5日入場券」(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/02.jpg)
きっぷ券面の日付で和暦を使う場合、改元後の年数が浅い間は年月日を使った数字並びがしやすいということで、平成初期は「2.2.2」「2.3.4」「3.3.3」といったタイプの記念きっぷが毎年のように発売されました。
小田急電鉄では「日付けシリーズ」として、その年月日になると各駅で発売されていました。台紙は共通で、発売駅の入場券をセットする様式でした。
京成電鉄では、「777記念乗車券」というのが発売されました。京成上野→京成金町間で運転していた「第777列車」が台紙にデザインされ、同列車の運転区間にあわせた乗車券3枚のセットでした。
名古屋鉄道の「888記念きっぷ」は、同社の「八」がつく駅3つと、「8」がつく形式名の車両3タイプをデザインしたもの。懐かしい顔ぶれの車両が並び、違う意味でも保存版と言えます。駅の方は八神駅、八百津駅が5年後の平成13年(2001年)9月末をもって営業終了。こちらも歴史を感じます。2つ減ってしまった「八」の駅ですが、現時点でまだ3つあります。次の888、楽しみです。
JR西日本では、「1.11.11」から「11.11.11」までの歴代記念台紙をデザインした「22.2.2」の入場券が発売されました。入場券を買うと共通の台紙がついてくるというスタイルでしたが、同じ数字が並ぶ形での記念きっぷ発売は、今回の改元により、この次の「22.2.22」が最後となりました。
数字並びの記念きっぷ、令和時代でも継承されることでしょう。
![こちらは東京急行電鉄の「5.5.5」。池上線8駅の入場券セットで、発売額は600円でした。大人用入場券は90円だったことがわかります](https://images.tetsudo.com/report/162/03.jpg)
![京成の「777記念乗車券」(左)と、名鉄の「888記念きっぷ」(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/04.jpg)
![JR東日本10周年記念を兼ねた「9.9.9(サンキュウ)新宿駅記念乗車券」。発売額は990円でした。こちらも今となっては懐かしの車両がデザインされています](https://images.tetsudo.com/report/162/05.jpg)
![「10.10.10」記念入場券の例。上はJR四国、下が京浜急行電鉄です。京急の台紙は、同年11月18日の羽田空港駅開業記念を兼ねたものでした](https://images.tetsudo.com/report/162/06.jpg)
![JR西日本の「22.2.2」記念入場券(左)と、京王の「平成11年11月11日記念入場券」(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/07.jpg)
![数字並びの別の例として、「開運88キップ」といったものも出ました。平成5年(1993年)12月28日、JR東日本盛岡支社発売です](https://images.tetsudo.com/report/162/08.jpg)
![開けると、縁起かつぎに一役買いそうな同社管内の6つの駅のきっぷが現われます。発売額は末広がりにちなんで880円でした](https://images.tetsudo.com/report/162/09.jpg)
磁気式カード、1日乗車券など
交通系ICカードの登場で、その役割が薄れつつある磁気式カード。自動改札機にそのまま挿入できるタイプのものができた時は画期的に思えたものですが、今では過去の話になりました。
磁気式全盛とも言える時期には、記念カードと呼べるものが各社局から発売。JR東日本の「イオカード」、営団(当時)・都営の両地下鉄共通の「SFメトロカード」、都営地下鉄専用(当時)の「Tカード」などの記念版が手元にありました。パスネットのスタート、営団地下鉄から東京メトロへの変遷もカードから見てとることができました。
対象路線が乗り放題になる1日乗車券などの記念版も数多く発売されましたが、紙式に加え、磁気式が登場するようになったことも平成時代の特徴と言えるでしょう。
![横長台紙の例。上が「新宿駅MILLENNIUM」、下が「大阪駅開業120周年記念オレンジカード」です。発売年はそれぞれ2000年、1994年になります](https://images.tetsudo.com/report/162/10.jpg)
![新宿駅MILLENNIUMは、イオカード2枚セット。記念オレンジカードは、大阪駅の錦絵をデザインしたカード3枚のセットです](https://images.tetsudo.com/report/162/11.jpg)
![発売第1号の「SFメトロカード」(1996年3月26日発売)と、営団地下鉄半蔵門線の全線開業記念SFメトロカード(2003年3月19日発売)](https://images.tetsudo.com/report/162/12.jpg)
![東京メトロ東西線5000系の1日乗車券(左)と、「小田急線全線1日フリー乗車券」(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/13.jpg)
![5000系の1日乗車券は、同車両の引退記念イベントで発売されたもの。小田急の1日乗車券は、1997年の開業70周年を記念しての発売でした](https://images.tetsudo.com/report/162/14.jpg)
![1989年3月19日の都営新宿線全線開通を記念した都営地下鉄1日乗車券(左)と、1997年12月19日の都営12号線(当時)の新宿~練馬間開業記念のTカード(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/15.jpg)
![こちらはICカードタイプ。「東京駅開業100周年記念Suica」(左)と、仙台市交通局のICカード「icsca」の地下鉄東西線開業記念デザイン(右)](https://images.tetsudo.com/report/162/19.jpg)
平成は、紙、磁気式、ICカードと、きっぷの進化を体感する時代でもあったと、記念きっぷを見ながら思うのでした。
路線延伸など
記念きっぷは、新会社設立に伴う新規開業のほか、路線の延伸や新駅の開業でも発売されます。それらがメインと言ってもいいかもしれません。
1991年3月31日の北総開発鉄道(当時)新鎌ヶ谷~京成高砂間の延伸開業では、北総・公団線、京成線、都営浅草線、京浜急行線の相互乗り入れが始まり、その記念乗車券が発売されました。
京成や京急では、空港アクセスのための延伸もあり、それらの記念きっぷが発売。両社のほかにも、各地で空港直結の路線や駅の整備が進み、記念きっぷの発売も充実していくことになります。これも平成時代の一つの特徴と言えるでしょう。
![「北総開発鉄道線相互乗り入れ開始記念乗車券」。直通運転で使われた各社局の車両も注目ポイントです](https://images.tetsudo.com/report/162/16.jpg)
![名鉄の空港線開業10周年記念して発売された入場券セット(上)、京成の「成田空港ターミナル乗り入れ記念乗車券」(左)、京急の羽田空港駅開業記念入場券(右)。各社各様です](https://images.tetsudo.com/report/162/17.jpg)
![阪神なんば線開業記念「九条駅」「ドーム前駅」「桜川駅」入場券セット。2019年で同線開業から10周年となり、記念の「1dayチケット」が発売されました](https://images.tetsudo.com/report/162/18.jpg)
令和時代も、鉄道の変化は続き、その変化の数だけ記念きっぷも増えていくことでしょう。歴史の証しともなる記念きっぷ。引き続き、追いかけていきます。