新紙幣に抜擢、多くの鉄道に関わった渋沢栄一

2019年4月9日(火) 鉄道コムスタッフ

財務省は4月9日、2024年度の上期を目処に、新しい日本銀行券と500円貨幣を発行すると発表しました。

新たな日本銀行券の肖像に選ばれたのは3人。1000円札は、ペスト菌を発見するなど医学の進歩に貢献した北里柴三郎。5000円札が、後の津田塾大学を創立した津田梅子。そして1万円札が、実業家の渋沢栄一です。この渋沢栄一は、日本の多くの鉄道にも関わってきた人物でした。

渋沢栄一が設立に関わった、現在の秩父鉄道を走るSL「パレオエクスプレス」
渋沢栄一が設立に関わった、現在の秩父鉄道を走るSL「パレオエクスプレス」

1840年に現在の埼玉県深谷市で生まれた渋沢栄一。若年時は反幕府思想である尊皇攘夷論の影響を受けていましたが、その後一転して徳川慶喜に仕えます。慶喜が第15代将軍となった後の1867年には、後の水戸藩主となる徳川昭武に随行し、パリで開催された万国博覧会や、ヨーロッパ各国を視察しました。大政奉還による政変後は、一旦は明治新政府の大蔵省に勤めるものの、数年で下野。その後は、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)の総監役(後に頭取)就任を皮切りとして、民間での道を歩み始めました。

渋沢栄一 国立国会図書館ウェブサイト提供
渋沢栄一 国立国会図書館ウェブサイト提供

渋沢と鉄道との関わりは、1875年に設立した「鉄道会社」という組織が始まり。東京鉄道会社、東京鉄道組合と名前を変えたこの組織は、新橋~横浜間の鉄道路線払い下げを目論んでいたといいますが、これは結局実現せずに終わります。この東京鉄道組合は解散となるものの、出資者の資金を海上保険業に投資。これが、現在の大手保険会社である東京海上日動へと繋がっています。

国によって建設が進められた現在の東海道本線は、京都(当時は大宮通仮停車場)~大阪間が1876年に開業しました。ですが、淀川の西側を通るこの官設路線に対し、淀川東側の住民は恩恵が受けられません。そこで企図されたのが、淀川東側を走る民営鉄道路線の建設です。関西では、南海鉄道や山陽鉄道(現在の山陽本線を運営)を設立した実業家、松本重太郎を始めとするグループが、この淀川東側を走る路線を計画していました。一方で関東でも、渋沢らの財界人グループが、同じエリアでの路線建設を目指していました。一見対立するような構図でしたが、両社は合同。畿内電気鉄道を1903年に設立し、1906年には社名を京阪電気鉄道に変更。1910年に、現在の京阪本線にあたる、天満橋~五条(現在の清水五条)間を開業させました。

渋沢が設立に関わった京阪電気鉄道
渋沢が設立に関わった京阪電気鉄道

渋沢は関東の私鉄設立にも関わりました。渋沢らは、東京郊外に住宅地を開発することを目指した株式会社「田園都市」を、1918年に設立しています。田園都市は、ただ住宅地を開発するのみでなく、鉄道路線もあわせて建設し、都心から郊外の住宅地へと住人を輸送することを目指していました。田園都市は、山手線と接続する路線の建設を始めるものの、開業前に鉄道事業を目黒蒲田電鉄として分社化。目黒蒲田電鉄の経営陣には、鉄道省出身の実業家、五島慶太が加わり、現在の東京急行電鉄(東急)の祖となりました。

東急に繋がる会社の設立にも、渋沢の関与がありました
東急に繋がる会社の設立にも、渋沢の関与がありました

渋沢はこれらの他にも、現在の東北本線などを建設した日本鉄道や、秩父鉄道の前身である上武鉄道、現在の鹿児島本線などを運営していた九州鉄道など、数多くの事業者に関わってきました。渋沢栄一記念財団によると、渋沢が直接関わった鉄道事業者は71社(社名変更や合併による経歴上の重複含む)。もちろん、渋沢はこれら全ての会社を設立したというわけではなく、助言や資金面の援助といった、サポートする役割に回ったものも数多くあります。しかしながら、渋沢が関わったことで事業が認可されるなど、その大物たる存在感が、今日まで至る事業の設立に欠かせないということもありました。

渋沢の肖像が採用される1万円札の裏面には、東京駅の赤レンガ駅舎が描かれます。1914年に開業したこの東京駅の開業祝賀会では、発起人の一人として、渋沢が名を連ねていました。日本社会の発展に貢献した人物である渋沢と、東京の玄関口として活躍した東京駅。両者が同じ紙幣に描かれたのは、何かの縁なのでしょうか。

1万円札の裏面に描かれることとなった、東京駅の赤レンガ駅舎
1万円札の裏面に描かれることとなった、東京駅の赤レンガ駅舎

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