鉄道コムおかげさまで鉄道コムは25周年

鉄道コらム

上野動物園に「ジェットコースター」型の移動手段登場へ モノレールに代わる乗り物、2026年度末に運用開始予定

2024年4月2日(火) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

東京都建設局は3月29日、廃止された「上野動物園モノレール」に代わる新たな乗り物の公募審査結果を発表しました。

上野動物園に整備する新たな乗り物のイメージ(画像:東京都建設局)
上野動物園に整備する新たな乗り物のイメージ(画像:東京都建設局)

かつての上野動物園モノレールは、1957年に開業し、車両老朽化などで2019年に運転を休止。2023年に廃止となりました。東京都では、従来のモノレールに代わる存在として、小型モノレールなどのコンパクトな乗り物を想定した、新たな乗り物の導入を計画。2024年にこれを公募していました。

2019年に運転を休止した上野動物園モノレール
2019年に運転を休止した上野動物園モノレール

小型モノレールというと、東京都北区の飛鳥山などで見られる「スロープカー」のような乗り物が存在します。しかし、公募の結果選定されたのは、「ジェットコースターと同様の構造を利用した脱輪の心配のない高い安全性の乗り物」という、新たな形態の乗り物でした。

この乗り物は、ジェットコースターに似た仕組みで動きます。線路には勾配が設けられており、上り勾配はモーター駆動で走行するとのこと。ジェットコースターの巻き上げ区間のような形です。下り勾配では位置エネルギーを使用。つまり、登った場所から坂道を下る勢いで走行するようなイメージです。当たり前ですが、この乗り物は一般的な輸送機関のため、ジェットコースターのようなスリリングな動きをする乗り物ではありません。

審査結果の公表文書内では触れられていませんが、この乗り物は、かつて東京大学生産技術研究所と泉陽興業、泉陽機工が共同で開発した「エコライド」そのものです。この乗り物は、2006年に研究が始まり、2008年には東京大学西千葉キャンパス(現在は廃止)内の実験線が完成。実用化に向けた試験が実施されていました。車両側には動力装置を持たず、地上の引き上げ設備とブレーキだけで動かせるエコライドは、省エネに配慮したエコな乗り物として実現したのですが、残念ながらこれまで採用に至った例はありませんでした。今回の上野動物園の採択案がエコライドであれば、これが初採用となります。

「エコライド」の概念イメージ(画像:泉陽興業)
「エコライド」の概念イメージ(画像:泉陽興業)

ちなみに、エコライドを売り出している泉陽興業は、ジェットコースターや観覧車など、遊園地のアトラクションを手掛けている会社。2021年に横浜で開業したロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」も、同社が運営しています。

廃止された上野動物園モノレールは、園内の移動手段として活躍してきましたが、もともとは、将来の都市部における新たな移動手段のテストとして、当時まだ開発途上だったモノレールを建設した経緯がありました。形は異なりますが、新たな都市部の交通手段として開発されたエコライドが、上野動物園モノレールと同じ場所に敷設されるのも、何かの縁でしょうか。

東京都建設局は、新たな乗り物について、2024年度に設計に着手し、2026年度末の運用開始を目指すとしています。

関連鉄道リポート

関連鉄道未来ニュース

鉄道コムおすすめ情報

画像

東上線に新型車両導入へ

9000系の置き換えに向け、車両の設計を開始。2024年度の東武鉄道鉄道事業設備投資計画で発表。

画像

めでたいでんしゃの「祖先」

7月13日に南海の観光列車「はじまりの『めでたいでんしゃ』」がデビューへ。2000系を改造。

画像

特別仕様車イベント走行

銀座線1000系特別仕様車で実施。車内照明の色味変更や「予備灯」点灯でレトロ感を演出。

画像

西武「2色塗り」復刻

2000系1本を対象に、1961年まで使用のデザインでラッピング。ただし先頭部のみ。

画像

あえて「車両が無い」鉄道写真

鉄道写真は、車両が写っている写真だけではありません。列車以外の鉄道写真の撮り方を、カメラマンの助川さんが解説します。

画像

5月の鉄道イベント一覧

新緑がまぶしい季節となりました。5月のプラン立てには、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。