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「納得の1枚のために」は、器物損壊の理由にならない 「撮り鉄ロープ切断事件」の報道に思う

2024年1月20日(土) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

1月12日、鉄道写真を趣味とする「撮り鉄」に関係する悪いニュースが、またしても出てしまいました。その内容は、「3人組の撮り鉄が、鉄道撮影の邪魔になるという理由で、線路脇にあるロープを切り、逮捕された」というもの。

線路の横、とくに上り線と下り線の間に張られているロープを、見たことがある方も多いと思います。黄色と黒の2色構成のものが多く、撮り鉄からは「タイガーロープ」とも呼ばれています。これは、2本の線路を分離することで、線路内の工事や作業の安全性を確保するために設置されているもの。このロープがあれば、片方の線路で列車が走っている中でも、反対側の線路では立ち入り禁止箇所がわかるというわけです。

これを撤去すると、線路内における作業員の業務に支障をきたすほか、安全が確保できないという理由から列車の運休にもつながります。また、ロープやそれを支える杭などは鉄道会社の持ち物ですから、壊せば器物損壊罪が成立します。当然、「納得の1枚を撮ること」が、それらを撤去してよい理由にはなりません。

線路の横にあるロープ。これも鉄道会社の所有物であり、壊すことは立派な犯罪行為です
線路の横にあるロープ。これも鉄道会社の所有物であり、壊すことは立派な犯罪行為です

筆者も撮り鉄の1人として、余計なものを極力排除したいという気持ちは、とてもよくわかります。が、車両カタログなどに載っている写真を見ると、こうしたロープが写っているものも掲載されています。つまり、撮影者自身はともかく、他人が見た場合、ロープを気にしないケースも往々にしてあるのです。こうした実例がある以上、自己満足のためだけに悪行に走るとは、なんと愚かなことかと筆者は思うのですが、いかがでしょうか。

鉄道車両を、ロープがかかる場所で撮影(2両目から後ろの床下部分に注目)。たしかに少し目障りかもしれませんが、それが撤去してよい理由にはなりません
鉄道車両を、ロープがかかる場所で撮影(2両目から後ろの床下部分に注目)。たしかに少し目障りかもしれませんが、それが撤去してよい理由にはなりません

前述のとおり、設備の破壊は、器物損壊罪に当たる、立派な犯罪行為です。今回逮捕された3人のうち、2人の年齢は20代で、その名前も報道されています。この後裁判となり、刑が確定すれば、「前科者」として、この愚行を背負っていかなければなりません。「犯罪行為が自分に悪影響をおよぼす」という想像力が、あまりにも欠けているといえます。

リスクを考えられない、いや、考えようとしないその姿勢が、撮り鉄全体の問題点のひとつであると、筆者は考えます。撮り鉄に限らず、人は写真を撮るとき、意識をファインダーの中に集中させがちです。しかし、それで周囲に迷惑をかけるのは、愚か者というほかありません。過度なこだわりは、自分の首を絞めるだけ。ましてや事件に発展すれば、今後の人生に大きな影を落とします。この趣味を長く続けるなら、ひいては、1人の社会人として生きていくなら、どう行動すべきか、またはどんな行動を避けるべきか。当たり前のことですが、それを当たり前に考えなければいけないのです。

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