日本全国をまわっていると「ここは動画で撮りたいなぁ」と思うシーンに出会うことがあります。たとえば大好きな路線の車窓。一枚の写真で表現する、という行為とは相反するものです。以前は「なにがなんでも写真で表現する」と意気込んでいましたが、最近では動画でも表現すべきと考え方も柔軟になってきました。
どうしてもロケに出る際は、写真用の機材がメインとなってしまいます。いろいろと機材をバッグに詰めこんでいくと大きなビデオカメラが入るスペースはなくなってしまい、「また次の機会に」なんて置いてきぼりになってしまうことが多く、なかなか動画撮りの夢は叶いませんでした。
ところが今回使用したソニーのハイビジョンビデオカメラ「HDR-TG1」はハイビジョン撮影ができるというのに本当にコンパクト。旅先で使うシェーバーと同じ大きさです。今回は泊まりがけのロケですが特に人と会う用事もありません。シェーバーと交換に「TG1」を連れ出すことにしました。
広田 泉(ひろた いずみ)
1969年東京生まれ。写真家・広田 尚敬の次男として生まれる。
スピード感あふれる乗り物に、幼いころから興味をいだき、父の手ほどきをうけて鉄道写真を撮りはじめる。
2005年ジャンル別フォトコンテスト鉄道部門審査員。2008年日本カメラ・月刊カメラマンで連載を開始。講師をはじめ各種イベントなどで写真の楽しさを広めようと活躍中。
(広田 泉オフィシャルサイト「鉄道写真.com」プロフィールより転載)
実際に使ってみると操作は簡単。マニュアルを読むのが苦手という人でも直感的に操作ができるので、ストレスなくハイビジョン撮影することができるのではないでしょうか。ズームレンズの動きをコントロールする回転式のダイヤルが、実にコントローラブルなところも気に入りました。片手で持って親指1本で操作できるので実にスマートです。
液晶部分を開くとすぐに起動する「クイックオン機能」が搭載されているので、アングルの調整やシミュレーションなどを行っておけば、電車の走行音などが聞こえてからのタイミングからでも慌てずに、撮影に入れるのは便利だと感じました。
あと何分使えるという情報が画面に出てくるのはいいですね。携帯電話に表示されるバッテリー残量のように「漠然と減っている」という状態より攻めた撮影ができました。
それでも予備のバッテリーは、あらかじめ購入しておいたほうがいいかもしれません。その際はアクセサリーキットの「ACC-TCH5」がおすすめ。チャージャーとバッテリーがセットになっているものなのですが、本体に付属されているチャージャーよりコンパクトにできているから、外出時にはトータルの荷物も最小限に抑えることができます。
やはり動画で撮るというのは写真で撮るのとは、また違った楽しさがあると実感しました。時間を追ってひとつの作品として残せるということ。また動きをダイレクトに捉えるということ。同時に音声も記録できるというのも大きな魅力ですね。最近では動画をウェブ上にアップすることが気軽にできるようになってきたことからも、より身近な存在になってきたといえるのではないでしょうか。
何日間か「TG1」を使って撮影してみましたが、普段使っているデジタル一眼レフカメラのアスペクト比である3:2に比べて16:9は当然ながら横に長い画面となります。これが私にとっては実に新鮮なフォーマットに感じられました。
今回は敢えて、そのあたりを意識せず撮影しましたが、今後は16:9に合わせて新しいアングルを探す必要がありそうですね。また「TG1」には光学10倍のズームが搭載されており、最初は「もう少し広角が欲しいかな」と感じましたが動体を撮影するならば被写体ぶれが強烈すぎるだろうから、このあたりがちょうどいいのかもしれません。
気軽にビデオカメラを持ち歩き、手軽にハイビジョン動画が撮れるようになったなんて、いい時代になったものです。「これを使ったらセミナーで、もっと分かりやすく撮影法を説明することができるかなぁ」なんて、すっかり欲しくなってしまった「TG1」。
今後はロケの必携アイテムになってしまいそうです。
ちなみに、この「TG1」には静止画機能もついています。また、動画で撮影していると「この部分を写真に残したい」と感じることが少なからずあるのではないでしょうか。そういったときのために「TG1」には付属されたソフトを使い、後から動画を切り出すことができるので、これはユニークな機能だと感じました。
実際に静止画を切り出してみると、若干シャープネスが甘いと感じる人もいるかもしれません。でもコンパクトデジタルカメラ、あるいはエントリー型デジタル一眼レフに見られるようなオーバーシャープネス、高すぎるコントラスト、激しい彩度とは一線を画す、優しい描写であることが分かります。
これはパソコンの液晶モニターで見るよりプリントで栄える写真だと感じたので積極的にプリントして飾ってみましょう。ほっとする写真が仕上がるはずです。
一般的な携帯電話より一回り大きいだけのビデオカメラ"ハンディカム"「HDR-TG1」。わずか約300gのコンパクトサイズなので、いつでも一緒に行動できる1台です。ボディはサビに強いチタン製。さらに、すり傷から保護するプレミアムハードコーティングが施されているので、街歩きでも野外でもOK。線路沿いであの車両が来た瞬間に手のひらにあるビデオカメラです。