レイルマン中井の『ペンタックス K-5』で撮るワンランク上の鉄道写真 | 第四回 動画も高画質に楽しめるペンタックスK-5 作例 中井精也 文/取材 シバタススム | ここ最近のデジタルカメラでは、写真だけではなく、ハイビジョン動画が撮影できる機種が多く登場している。前回から紹介している『K-5』もフルハイビジョンの撮影に対応したカメラだ。『K-5』が写真で撮影において高精細で優れた画質なのは1回目に解説した通りだ。そして、3回目ではアーティスティックな表現ができるのもご紹介した。では、動画撮影においてはどれだけの性能を秘めているのか? 最終回の第4回目は『K-5』の動画ついて紹介していく。また、中井カメラマンの動画撮影テクニックやオススメレンズについても解説していく。

ビデオカメラと比べてどれだけ高画質に撮れるのか?

 『K-5』の仕様を見ると、動画に関しては、(1)Full HD:1920×1080(16:9)、(2)HD:1280×720(16:9)、 (3)VGA:640×480(4:3)と3種類を撮ることができる。これは一般的なビデオカメラと同等のスペックだ。しかし、実際に撮影してみると一般的な民生用のビデオカメラと比較しても画質が上回っているように見える。民生用のビデオカメラでは、本体を小型化し撮りやすくするために撮像センサーやレンズのサイズがデジタル一眼レフカメラに比べて小型なものを採用している。

しかし、写真をより高画質により高精細に撮るために作られたデジタル一眼レフカメラは、大型の撮像センサーと明るく解像力に優れたレンズを使うため、比較すると発色性に優れ、ディテールがシャープでキレが良く、映画のような前ボケや後ボケなど被写体以外をぼかした映像を撮ることができる。

『K-5』で撮影したフルHDの動画を静止画として切り出したもの。
静止画で見るとフルHD動画の画素数は200万画素であるため、やや荒さが感じられるが、この画質がそのまま動画になっていることを考えればその画質の良さが実感できるだろう。動画でSLを撮ると、どうしても黒い部分にカラーノイズが乗ってしまったり、暗部の微妙なトーンが潰れてしまうことがある。しかし、『K-5』の優れたセンサーとレンズ性能により、明るいハイライトの部分はできるだけ白飛びさせず、かつ暗部の部分は微妙なトーンまでしっかりと表現している。また、ピストン周辺などの暗い部分を見てもカラーノイズは全く見られない。これは一般的な民生用ビデオカメラにはない『K-5』ならではの表現力と言えるだろう。

page top

動画をよりドラマチックにるデジタルフィルター

 第3回目で写真をよりアーティスティックに加工できる「カスタムイメージ」「デジタルフィルター」「クロスプロセス」の機能を紹介したが、この機能は実は写真だけではなく、動画に使うこともできる。これを使うことで普通の動画にはない色味や表現方法など一歩進んだ作品作りを行うことができる。同様の機能を使えるビデオカメラもあるが、『K-5』の高画質とこれらのエフェクト機能の組み合わせは、映画のような映像作品に匹敵する動画を自分の手で表現できる可能性を秘めている。
 中井カメラマンが多用する技法の「ほのか」ももちろん使える。実際に「ほのか」を使った"ゆる鉄"動画がコレだ!「ほのか」のエフェクト効果と、絞りを開けることで得られるデジタル一眼レフならではの柔らかいボケ味が独特のふんわりとした表現を醸し出している。

全体の色を淡くし、ふんわりとした雰囲気の動画はまるで映画のワンシーンのような仕上がりだ。

※本動画の配信はYouTubeを使用しています。カメラで撮影した元の画質とは若干異なりますのでご了承下さい。また、回線速度やPCの性能によって、コマ落ちする場合がありますので、スムーズに再生できない場合は、画質を落とした「360p」設定にして再生してください。

page top

PCがなくても動画を最適な長さにできるフレーム編集機能

 鉄道の動画を撮影する場合には、列車が来る少し前から録画を開始することが多いが、撮影した動画を見てみると、なかなか列車が来ない「もどかしい動画」になってしまうことがある。このような場合はPCの動画編集ソフトで前後のフレームをカットして最適な長さに調整するのが基本となる。しかし、動画を編集するためには、ソフトの使いこなしやPCのスペックもある程度必要になるため、手を出しにくいというケースもあるだろう。『K-5』はこの編集をカメラ内で行ってくれる「フレーム編集機能」が搭載されている。これを使えば、不要な部分はカメラ内でカットして、新たに保存することができるため、元のデータを消去することなく、編集することができる。例えば撮影の帰りに余った時間で編集すれば、家に帰ってから改めて編集するといった手間も減らすことができる。

遠景から列車の発車を狙っていると、いつ発車するか分からないときがある。特に発車時の汽笛はしっかり映像に入れたいポイントのため、汽笛が鳴ってから録画を始めたのではタイミングが遅い。そのため、ある程度、発車の前から動画を録画することになる。このようなときに、汽笛の直前までの不要部分はカットすると、間延びしないテンポの良い動画となる。

※本動画の配信はYouTubeを使用しています。カメラで撮影した元の画質とは若干異なりますのでご了承下さい。また、回線速度やPCの性能によって、コマ落ちする場合がありますので、スムーズに再生できない場合は、画質を落とした「360p」設定にして再生してください。

上の動画から1シーンを切り出したもの。200万画素のため、大判プリントをすると、やや荒さが出てしまうが、ブログなどWebに掲載するのであれば、十分な画質だ。

 動画を見ていると、「このシーンは切り出して写真にしたい」と思うことがある。このような場合もPCの編集ソフトを使わなければならないが、『K-5』であれば、編集機能にJPEG保存機能が搭載されているため、動画を見ながら欲しいシーンをJPEGに保存することができる。また『K-5』は「Motion-JPEG」というJPEGの画像を連続させて動画にする形式を採用しているため、AVCHD形式のカメラと比べて好きなシーンをより正確で高画質に切り出すことができる。
 このようにフレーム編集とシーン切り出しがある『K-5』ならば、基本的な動画編集はPCを使わずにカメラ内で全て完結することができる。

page top

より高度な動画を撮るためのオススメアクセサリー

 動画を撮るのであれば、やはり「音」も大切な要素だ。ディーゼルカーのエンジン音や走行中のジョイント音などが楽しめるのは動画ならではの面白さだ。その「音」をよりしっかりと録るためにオススメしたいのが、外部マイクの接続だ。『K-5』の内蔵のモノラルマイクでもある程度は録れるが、カメラの動作音が入ってしまうことがある。これはどんなカメラであっても同様で、カメラに内蔵されているマイクの宿命と言ってもよい。ならば外部マイクを使ってみよう。

 マイクはシチュエーションによって最適なタイプが異なるため、ある程度使い分ける必要がある。特に鉄道の場合にはレンズを向けた列車の音を録るのが目的となるため、マイクを向けた先の音をとらえやすい指向性のあるガンマイクがオススメだ。『K-5』は外部マイク用の端子(ステレオミニピン)があるため、ホットシューに搭載できる外部マイクを繋げれば、動画の音もより臨場感のあるものになる。

わざと踏切の側で撮影した作例。内蔵マイクでは、踏切の音を拾いすぎてしまうが、指向性のあるガンマイクを使ったため、列車の走行音がピックアップされて、踏切の音にかき消されることなくバランスよく入っている。

※本動画の配信はYouTubeを使用しています。カメラで撮影した元の画質とは若干異なりますのでご了承下さい。また、回線速度やPCの性能によって、コマ落ちする場合がありますので、スムーズに再生できない場合は、画質を落とした「360p」設定にして再生してください。

page top

レイルマン中井のオススメ レンズはこれだ!

『DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR』

 レイルマン中井こと、中井カメラマンに『K-5』に装備するのにオススメのレンズを聞いてみた。

 中井カメラマン: オススメはやっぱり『DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR』です。レンズキットのセットになっているレンズですから、そこまでの性能は期待してませんでしたが、正直言って意外でした。

 この写りは素晴らしいです。写真自体のキレもいいですし、レンズ周辺部分の画質も落ちることなく均一に写せます。よくないレンズで編成写真を撮ると、編成の最後尾がレンズの周辺部に来てしまうので、絞りを絞っても流れたようになってしまいます。しかし、このレンズであれば、中心から周辺まで画質が変わることなく期待通りの画像を作ってくれますね。18~135ミリという画角も鉄道写真にとってはとても使いやすいです。もちろん、動画を撮ってもその画質の良さが発揮できます。もし、『K-5』を買うなら、ボディだけではなくて、ぜひ『K-5 18-135レンズキット』を選ばれた方がいいですよ。

 他にも望遠用として『DA55-300mmF4-5.8 ED』『DA★60-250mmF4ED[IF] SDM』と広角用に『DA12-24mmF4 ED AL[IF]』を揃えておけば、どんなシチュエーションでも万能に撮ることができますね。

この4回の連載の取材中、様々なレンズを使いつつも中井カメラマンは『DA18-135mmF3.5-5.6EDAL[IF] DC WR』を使うことが多かった。

page top

コラム | レイルマン中井の撮影テクニック講座その4 動画撮影編

 中井カメラマン: 動画の撮影は写真とはテクニックが異なる部分が多いです。例えば構図ですが、写真の場合には架線柱などの遮蔽物がないようにうまく構図を作らないといけませんが、動画の場合には動いている車輌を撮るので、ある程度遮蔽物があっても邪魔に感じません。遮蔽物の有無よりも、列車がどのような動きをするのかを動画の最初から最後まで把握して構図を作る必要があります。写真の場合には最適な1点を考えれば良いですが、動画は連続した時間のつながりをそのままとらえるので、列車の動きなど状態の変化に常に気を配る必要があります。そのため、撮影ポイントも動画と写真では異なります。

 また、動画の場合には周囲の音にも注意を払わなければなりません。いくらいい構図になるといっても周囲が車などの騒音がひどい場所は最適ではありません。周囲ができるだけ静かな場所を選びましょう。踏切は近寄りすぎると警報機の音で走行音がかき消されてしまうので、近寄りすぎないようにしましょう。走行音やジョイント音をより的確に入れるなら、ガンマイクも必携ですよ。

写真で撮るなら架線柱や茂み、柵などの遮蔽物が多くあまり最適ではない場所だ。しかし、動画で撮ると小さな川の水面に列車を映しながら、カーブをすべらかに通り過ぎていく味のある構成になる。

※本動画の配信はYouTubeを使用しています。カメラで撮影した元の画質とは若干異なりますのでご了承下さい。また、回線速度やPCの性能によって、コマ落ちする場合がありますので、スムーズに再生できない場合は、画質を落とした「360p」設定にして再生してください。

page top

中井カメラマンプロフィール

中井 精也
(なかい せいや)
1967年10月東京生まれ

小学校6年のときに父親からカメラをもらったのがきっかけで鉄道写真を撮り始め現在に至る。中学から大学までずーっと鉄道研究会に所属する筋金入りの鉄ちゃんでもある。大学卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。雑誌、広告撮影のほか、テレビ出演、「JAL旬感旅行」の鉄道写真ツアー講師など幅広く活躍している。2004年春から毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する「1日1鉄!」(ブログ)を更新中!鉄道の旅の臨場感を感じさせる写真を撮りたいといつも考えている。
社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
ブログ『1日1鉄!』 >>

PENTAX K5 スペック

有効画素数
約1628万画素
連続撮影速度
最高約7コマ/秒
ISO感度
ISO100~12800、カスタム設定により拡張ISO80~51200使用可能、バルブ時はISO1600まで
動画撮影機能
フルHD(最高1920×1080 25fps)
Motion JPEG(AVI)
ファインダー
ペンタプリズムファインダー 視野率約100%、
倍率約0.92倍(50mmF1.4レンズ、∞)
液晶モニター
3.0型 約92.1万ドット 反射防止ARコート
カスタムイメージ
鮮やか、ナチュラル、人物、風景、雅(MIYABI)、ほのか、モノトーン、 リバーサルフィルム、銀残し
サイズ/重量
131(幅)×97(高さ)×73(厚さ)mm/約660g(本体のみ)
ラインナップ
・K-5 ボディ
・K-5 18-135レンズキット
 ※smc PENTAX-DA18-135mm
 F3.5-5.6ED AL[IF]DC WR(フード付き)が付属
・K-5 18-55レンズキット
 ※ smc PENTAX-DA18-55mm
 F3.5-5.6AL WR(フード付き)が付属
公式サイト PENTAX K5

DA★60-250mmF4ED [IF] SDM

画角
26.5~6.5度
構成枚数
13群・15枚
最小絞り
F32
最短撮影距離
1.1m
フィルター径
67mm
最大径×長さ
82×167.5mm
質量 (重さ)
1040g

DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR

画角
76~11.9度
構成枚数
11群・13枚
最小絞り
F22-F38
最短撮影距離
0.4m
フィルター径
62mm
最大径×長さ
73×76mm
質量 (重さ)
405g

DA18-55mmF3.5-5.6AL WR

画角
76~29度
構成枚数
8群・11枚
最小絞り
F22-F38
最短撮影距離
0.25m
フィルター径
52mm
最大径×長さ
68.5×67.5mm
質量 (重さ)
235g