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開業10周年! 都心と空港を結ぶ成田スカイアクセス

2020年7月17日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

7月17日、京成電鉄の成田スカイアクセス線(成田空港線)が開業10周年を迎えました。

かつては乗り換えなしに都心と空港を結ぶアクセス鉄道が無く、1991年以降も都心~空港間は最速で約1時間となっていた成田空港。しかし、成田スカイアクセス線の開業によって、京成上野~成田空港間を結ぶ「スカイライナー」が、日暮里~空港第2ビル間を最短36分で走破するように。かつてはアクセスが悪いと批判されていた成田空港も、この成田スカイアクセス線の開業で、都心との距離が大幅に縮まりました。

2種類の列車が走る成田スカイアクセス線

成田スカイアクセス線は、京成本線の京成高砂駅から分岐し、京成グループの北総鉄道北総線を経由して、成田空港へ至る51.4キロ(営業キロ、以下同様)の路線。有料特急列車の「スカイライナー」と、料金不要列車の「アクセス特急」の2種別が運転されています。

スカイライナーは、京成上野~成田空港間を走る列車。AE形によって最高時速160キロで運転されており、日暮里~空港第2ビル間は最速36分。成田スカイアクセス線開業前よりも所要時間を15分短縮しています。開業当初は上下あわせて54本が設定されていましたが、次第に増発されていき、2020年現在は82本が設定されています(新型コロナウイルス感染拡大により一部運休中)。

成田スカイアクセス線の主力「スカイライナー」
成田スカイアクセス線の主力「スカイライナー」

アクセス特急は、料金不要の優等列車。日中時間帯は都営浅草線や京急線に乗り入れ、成田空港~羽田空港間(押上以南はエアポート快特)で運転されていますが、一部時間帯では京成上野駅や三崎口駅を発着駅とする列車も設定されています。

3100形による、特別料金不要の「アクセス特急」
3100形による、特別料金不要の「アクセス特急」

主に使用される車両は、京成電鉄の3050形と3100形。3050形は成田スカイアクセス線開業時に8両編成6本が投入された車両で、2005年デビューの3000形を成田スカイアクセス線用に仕様変更したもの。3100形は2019年にデビューした車両で、荷物スペース兼用の折り畳み椅子を備えるなど、空港アクセスに特化した車両。現在も増備が進められており、将来的に7本が揃う予定です。

3100形と共にアクセス特急に使用される3050形(写真は旧塗装)
3100形と共にアクセス特急に使用される3050形(写真は旧塗装)

このほか、直通先である京浜急行電鉄の新1000形や600形なども、アクセス特急に使用されています。なお、同じく直通先である都営浅草線の車両や、線路を共用する北総鉄道・千葉ニュータウン鉄道の車両は、アクセス特急には使用されません。

アクセス特急に使用される京急新1000形
アクセス特急に使用される京急新1000形

紆余曲折を経て開業した空港アクセス鉄道

かつて、都心と成田空港を結ぶアクセス手段としては、東京~成田空港間の「成田新幹線」が計画されていました。しかしながら、新幹線が通過する予定だった沿線地域自治体の反対などによって建設工事は遅延し、1978年の成田空港開港には間に合わない結果に。さらに工事は凍結されてしまい、最終的に建設計画は放棄されてしまいました。

本命となる新幹線を欠いた成田空港へのアクセス手段としては、現在の東成田駅を発着するスカイライナーのほか、成田駅で特急「あやめ」などと接続する連絡バス、そして東京空港交通の「リムジンバス」に代表される空港連絡バスがありました。

しかしながら、京成電鉄のスカイライナーは、空港駅から空港ターミナルまでの連絡バスに乗り換えが必要なために利便性は悪い状態。成田駅で特急列車などと接続する連絡バスも乗り換えの手間が嫌われ、多く利用されることはありませんでした。空港連絡バスは、開港当初こそ比較的スムーズな運行が可能でしたが、次第に高速道路の渋滞による遅延が目立つようになっていきました。

この現状を鑑み、運輸省が「新東京国際空港アクセス関連高速鉄道調査委員会」を組織し、1981年に成田空港アクセスの再検討を開始します。そして翌1982年、A・B・Cの3案が提案されました。京葉線や現在の北総線を活用しつつ、東京~西船橋~新鎌ヶ谷~千葉ニュータウン中央~成田空港間の路線を建設し、国鉄が運営するA案、京成線と北総線を経由し、京成上野~京成高砂~千葉ニュータウン中央~成田空港間の路線を建設するB案、国鉄線を経由し、成田駅から成田空港までの新線を建設するC案です。

京葉線や北総線を経由するA案(赤)、京成線と北総線を経由するB案(水色)、成田駅から接続するC案(緑)の3案が比較・検討されました(国土地理院「地理院地図Vector」の淡色地図に加筆)
京葉線や北総線を経由するA案(赤)、京成線と北総線を経由するB案(水色)、成田駅から接続するC案(緑)の3案が比較・検討されました(国土地理院「地理院地図Vector」の淡色地図に加筆)

A案は、狭軌の国鉄線と標準軌の北総線を経由するため、北総線側の改軌が必須。さらに千葉ニュータウンのアクセスに大幅な影響を与え、北総線の建設目的である千葉ニュータウンへの乗り入れも不可能となるため、北総開発鉄道(当時)などへの補償が必須でした。

B案は、現在の印旛日本医大駅から成田空港駅までを建設する形式。C案よりも所要時間の短縮が見込め、最も現実的な案でした。しかしながらA案ほどではないものの新線建設に要する時間が必要でした。

C案は、成田~成田空港間のみを整備すればいいので、建設コストは他2案よりも最も低くなり、工期も短縮できます。一方、東京~成田空港間では千葉駅を経由する遠回りのルートとなるため、A・B案よりも所要時間が長くなる欠点もありました。

このうちのB案が本命とされ、B案完成までの暫定整備としてC案も建設が決定。1991年3月にC案となる成田線支線が開業し、同日に空港ターミナル直下へ乗り入れた京成本線とともに、都心と成田空港を結ぶアクセス路線がようやく整備されました。そして、本命のB案は成田スカイアクセス線として整備され、2010年にようやく都心と成田空港を結ぶ高速アクセス路線が実現したのでした。

国際線が発着する成田空港
国際線が発着する成田空港

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