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助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

あえて「車両が無い」鉄道写真を撮る!? 列車の写真だけではない魅力的な作品づくりのポイント

2024年4月13日(土) 鉄道カメラマン 助川康史

鉄ちゃんだからこその鉄道写真

多くの方は、「鉄道写真=鉄道車両が入った写真」と考えるのではないでしょうか。特に「ガチ」の鉄ちゃんであればあるほど、それは至極当然のことと思っているかもしれません。それは鉄道写真という写真分野においては最も大きな特徴であると私は思っています。私が撮る鉄道写真の9割8分5厘は、必ず鉄道車両が入っています(笑)。

鉄道車両がメインでなくとも、立派な鉄道写真
鉄道車両がメインでなくとも、立派な鉄道写真

鉄道写真の重要性の一つに「現在の鉄道の記録」というのがありますが、それは歴史的にも文化的にも大切なことではないでしょうか。鉄道文化を一番わかりやすく表し、また存在感を放つのが鉄道車両。多くの人が鉄道車両の格好良さと美しさに惹かれるからこそ、多くの鉄道写真愛好家がカメラを向ける被写体になりえるのです。編成写真や車両を大きく撮るスタイルは、まさに鉄ちゃんだからこその鉄道写真なのです。

だが敢えて言おう、それだけではないと!「鉄道写真」というカテゴリーは、「写真」という大きな枠の中にあります。「写真」は、人物写真や動物写真、風景写真やスポーツ写真など、様々なカテゴリーがあり、表現方法や狙い方もたくさんあります。

鉄道写真だからといって、車両だけを写すのはもったいない!鉄道に関する色々な物にも目を向けて撮影しましょう!!というのが今回のお話です。

私の鉄道写真遍歴

恥ずかしながら、私の鉄道写真遍歴を少しお話ししましょう。

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多くの鉄ちゃんがそうであるように、私も物心付いた頃から鉄道車両が大好きな「ガチ鉄」の一人で、近くの線路に行ってはずっと行き交う列車を見ているのが好きな鉄道少年でした。

コンパクトカメラを持って鉄道写真撮影を始めたのが、小学校1年生の時。程なくして父親が使っていた一眼レフカメラを借りて、より高度な撮影に挑むようになります。とはいっても、やはり撮影スタイルは近所の線路際に行っては列車を大きく撮ることの繰り返し。その時に撮影した車両たちは、現在引退してしまった車両たちばかりなので、貴重な写真であることには間違いありません。しかしその時は、鉄道写真に対しての認識は、芸術性や感性を求めることはなく、鉄道模型や販促品の鉄道部品のように、車両をコレクションするツールの一つにしか感じていませんでした。

いつも見慣れている特急や急行、はたまた団体列車やジョイフルトレイン、時にはお召し列車も撮影したことがありました。当時は車両を撮影することばかりを主眼に置いていたので、構図やバランス、そして列車にかかってしまう電線や標識、フェンスなどをフレームアウトして撮影することも考えず、恥ずかしくてご披露できないほどの腕前。しかし、好きな列車を撮影することが、何より楽しかったことを覚えています。

そんな私が本格的に鉄道写真向き合うようになったのは、我が師・真島満秀著の「鉄道写真教室」(小学館)を近所の本屋で購入したことがきっかけでした。車両を綺麗に撮る方法はもちろん、流し撮りや鉄道風景、駅や線路だけの作品が撮影テクニックと一緒に掲載されていて、とにかく読み漁りました。当時の本は装丁が今に比べて弱く、ページを閉じる部分が外れかけてしまったところもありますが、今でも私の鉄道写真原点として家宝の様に保存しています(笑)。

一時期は少年野球→高校球児と野球に打ち込んでいたため、鉄道写真から離れたこともありましたが、大学や専門学校時代は撮影を再開。バイブルである「鉄道写真教室」のほかにも、自然風景や人物写真、スナップ写真などの撮影ノウハウ本やカメラ&写真雑誌なども購入して、鉄道写真とは違う様々な表現やカメラの知識を吸収しました。鉄道以外の被写体の撮影にもたくさん挑戦し、その時に身に着けた「写真眼」が今の私の撮影スタイルに大いに役立っていると感じています。

車両の無い鉄道写真を撮ることの難しさ

先述した通り、鉄道少年の心を持つ鉄道車両大好きな「大きなお友達(笑)」にとっては、カメラを向けるべき被写体は鉄道車両。私もその気持ちには激しく同意します!車両写真の代表格である編成写真で、特に走行中の車両を撮影する編成写真は、好きな車両を撮ることの嬉しさだけでなく、思い描いた構図とバランスで格好良く撮影できたことの喜びは格別です。まさに一発必中を狙うスナイパー的な感覚ではないでしょうか。

しかし、今回のテーマは、車両の無い鉄道写真の話。編成写真ならではの撮る楽しさと嬉しさとは違う、別次元の撮影をすることになります。だからこそ、車両大好きな「ガチ鉄」の皆さんには、食指が向きにくくなります。また、車両が入る鉄道風景写真であっても、「ガチ鉄」であればあるほど車両を大きく写しがちで、車両と風景が主張しあう、どっちつかずの鉄道風景写真になってしまいます。

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「車両の無い鉄道写真」を撮影する勇気を持とう鉄道車両を如何に小さく、さらには排除して撮影することは、「ガチ鉄」では勇気が必要です。それが車両の無い鉄道写真を撮ることの難しさに繋がっているのではないかと私は思います。ですが、その難しいと感じる部分を、あえて打破する気持ちを持ってみましょう。より鉄道写真

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