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鉄道事業者はコロナにどう対応した? 2020年の対策振り返り

2020年12月29日(火) 鉄道コムスタッフ

イベントはオンラインで

3月8日運転の「『ありがとう東海道新幹線700系』のぞみ号」をもって引退する予定だった、JR東海の700系新幹線。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大によって、この列車の運転は取り止めとなってしまいました。この列車のように、3月以降に予定されていた臨時列車や大規模イベントは、中止となるものが多くみられました。

3月8日に運転される予定だったJR東海の700系ラストラン列車は、感染拡大で運転取り止めに
3月8日に運転される予定だったJR東海の700系ラストラン列車は、感染拡大で運転取り止めに

その一方で、「鉄道の日」を中心として例年開催されていた大規模イベントを、なんとかして開催しようとする事業者も。中小私鉄ではリアルイベントを開催することもありましたが、多くの参加者が参加する大手私鉄のイベントは、リアルイベントは断念。その代わりとして、動画配信を中心としたオンラインイベントがいくつか開催されました。

例年は5月に開催されている、京浜急行電鉄の「京急ファミリー鉄道フェスタ」。2020年は5月開催予定を秋開催に延期したものの、結局リアルイベントは中止に。その代わりとして、ライブ配信や録画配信によるリモート配信にて開催しました。近畿日本鉄道の「きんてつ鉄道まつり」や、東京都交通局の「都営フェスタ2020」なども、同様にオンライン開催となりました。

「きんてつ鉄道まつり」や「都営フェスタ」などでは、従来は会場で実施している部品販売も、オンラインでの販売に。このようなイベントのほか、記念乗車券などをオンラインで購入できるようにした事業者も。例年ならば現地でしか購入できなかった商品が、今年は全国からインターネット経由で購入することができました。

特設サイトで車両部品などを抽選販売した、東京都交通局の「都営フェスタ2020」(画像:東京都交通局)
特設サイトで車両部品などを抽選販売した、東京都交通局の「都営フェスタ2020」(画像:東京都交通局)

また、テレワークの普及とともに注目を集めたウェブ会議サービス「Zoom」や、「YouTube」のライブ配信機能などを活かし、オンライン中継イベントを開催する動きもありました。

東武鉄道では、SL「大樹」の車内からZoomで配信するイベントを開催。JR東日本秋田支社でも、秋田総合車両センターの見学イベントをZoomを用いて開催しました。京成電鉄や小田急電鉄でも、オンラインでの中継イベントを開催しています。

リアルイベントでは列車定員や会場の広さで自然と人数が限られてしまいますが、オンライン中継イベントでは理論上はリアル会場よりも多い参加者を集めることができます。京成電鉄が開催したオンライン鉄道講座では、定員は200組400人。小田急電鉄は回送列車乗務員室からの前面映像を中継するもので、定員の設定はなし。臨場感はリアル会場に劣ってしまいますが、参加者を増やすことができるオンラインイベントは、コロナ禍が落ち着いた後も検討されるのではないでしょうか。

運休が多発した臨時列車、増収を目指した臨時列車

新型コロナウイルス感染拡大の第一波が到来した3月以降、需要の減少や外出自粛の呼びかけに対応し、一部列車の運転を取り止める事業者が相次ぎました。その多くは多客期運転の臨時列車でしたが、「成田エクスプレス」や「はるか」、「スカイライナー」など、定期列車も運休する事業者もありました。

大幅に運休となった「成田エクスプレス」。日中は鎌倉駅に12両編成2本が留置されています
大幅に運休となった「成田エクスプレス」。日中は鎌倉駅に12両編成2本が留置されています

需要減少による列車運休が相次いだ一方、JR東海では、8月より東海道新幹線で「のぞみ」を1時間に最大12本運転する「のぞみ12本ダイヤ」を設定しました。

Go To トラベルキャンペーンの開始などで、8月ごろには利用者がゆるやかに増加していた東海道新幹線ですが、例年のように、繁忙期に立席が出るほどの需要が戻ってはいませんでした。そのような状況では、「のぞみ」を毎時12本運転せずとも、東海道新幹線の需要に応えることはできます。しかしながら、需要と一致する運転本数、つまり全「のぞみ」がちょうど満席となるレベルに本数を絞ってしまうと、車内が「密」な空間となってしまいます。

「のぞみ12本ダイヤ」を設定した東海道新幹線
「のぞみ12本ダイヤ」を設定した東海道新幹線

本来であればさらに少ない本数でも需要を満たすことができますが、「余裕をもって座席を提供することで、お客様に安心して乗ってもらえるようにするため」(JR東海)、JR東海では利用者の安全・安心のために列車の増発に踏み切ったのです。

感染拡大が収まった夏から秋にかけては、普段は見られないイベント列車も登場。航空便の需要が激減し、空港アクセス特急の運休に踏み切った京成電鉄と南海電気鉄道では、空港アクセス特急用の車両を用いたツアー専用列車を多数設定しました。

京成電鉄では、「スカイライナー」用のAE形によるツアーを複数回開催。このほか、「スカイライナー」の運休によって余裕ができたダイヤを活用し、普段は成田スカイアクセス線に入線しない一般車両による、同線でのツアーも開催されました。

南海電気鉄道でも、「ラピート」用の50000系によるツアーを設定。11月には普段入線しない和歌山市駅発着で運転されたほか、12月には高野線の橋本駅へ初入線しました。

関西国際空港アクセス列車の「ラピート」。12月には高野線橋本駅へ初入線しました
関西国際空港アクセス列車の「ラピート」。12月には高野線橋本駅へ初入線しました

これらのように、感染者数の減少が見られた夏以降には、臨時列車は再び運転されるようになりました。しかし、11月ごろから情勢が悪化し、12月には第一波を超す感染者数を記録したことで、ふたたび臨時列車は削減傾向に。大晦日から2021年の元旦にかけて運転する予定だった終夜臨時列車は、各社とも運転を見合わせ。元旦に運転される予定だった初日の出鑑賞用の臨時列車も、多くが運休となっています。

国の要請で揺れる鉄道

12月現在、国外からの入国者については、空港から家やホテルまでの移動に公共交通機関を使用することは、原則認められていません。しかしながら、国や自治体が全入国者の動向を逐一監視しているわけではないので、空港アクセス路線などを利用してしまう入国者がいることが問題視されていました。

そこで国土交通省では、入国者専用の車両を設定できないか、京成電鉄と協議。これを受けた京成電鉄は、12月28日より、「スカイライナー」の入国者専用車両に乗車できるサービス「KEISEI SMART ACCESS」を提供しています。

このサービスは、「スカイライナー」上り列車15本を対象に実施。8号車を入国者専用車両とし、7号車は空車とすることで、他の利用者との接触を避けます。京成上野駅到着後は、自家用車での出迎えを受ける必要がありますが、目的地までハイヤーを利用できるプランも設定しています。

入国者専用車両を設ける「スカイライナー」
入国者専用車両を設ける「スカイライナー」

このように国の要請で始まるサービスがある一方で、要請を受けて取り止めざるをえなくなったサービスも。その一つが、年末年始の終夜臨時列車です。

12月上旬には、初詣参拝客などの利用者が見込まれるJR線、関東の大手私鉄などで、終夜臨時列車の運転が発表されていました。しかしながら、12月の急速な新型コロナウイルス感染拡大を受け、東京都は終夜臨時列車の運転取り止めを要請。これを受けて、2020年から2021年にかけての終夜臨時列車は、すべて運転取り止めとなりました。

また、伊豆方面や房総方面、江ノ島方面など、初日の出鑑賞者に向けた臨時列車も、運転の取り止めが発表されています。

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