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東武線と日比谷線を座って直通、「THライナー」に乗ってみました

2020年6月6日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

新列車に早速乗車

運行開始当日、さっそくTHライナーに乗ってみました。乗車したのは、上り2本目のTHライナー4号。始発の久喜駅から霞ヶ関駅までの移動です。

ホームに降り立つと、多くのファンがTHライナーを待ち受けていました。THライナーの座席販売数は299席とのことですが、この日は2号、4号とも満席となったそうです。

やがて70090型が回送として入線。折り返しTHライナー4号となります。70090型は4ドア車両ですが、THライナーで開くドアは各車1か所のみとなっています。

座席指定区間では、開くドアは各車1箇所のみ
座席指定区間では、開くドアは各車1箇所のみ

早速車内に入ってみます。化粧板やドア上の案内表示器など、基本的な仕様は70000系と共通。しかしながら、70090型特有の装備であるロング/クロス転換座席がクロスシートにセットされており、プロトタイプの70000系とは明らかに違う印象を受けます。

座席の座り心地は、どちらかと言うと硬め。JR東日本E233系のクロスシート以上、京成電鉄AE形の座席未満、といった辺りでしょうか。ただ、不快な硬さというわけではなく、THライナーで想定される乗車時間であれば、快適に過ごせそうです。

70090型の座席
70090型の座席

ちなみに、座面には寝具などでも使用されている「ブレスエアー」を採用したとのこと。車両パンフレットでは「ホールド性や通気性が良く、長時間でも快適に座ることができる」と説明されています。

9時23分、列車は定刻通り出発。車内自動放送による案内が始まりますが、次の停車駅はなんと上野。時刻表上では春日部駅などにも停車するのですが、東武線内の停車駅を全て飛ばした案内です。どうやら、乗車専用駅は停車駅として案内しないようで、他の駅については「乗車専用駅のため、お降りになれません」と放送していました。

列車は、東武動物公園、春日部、せんげん台、新越谷と停車。特急列車よりも停車駅が多く、料金不要の急行列車に近い停車パターンです。東武鉄道では停車駅について、通勤需要を想定し、利用者が多い駅を選定したとのことで、特急列車のような速達性ではなく、日比谷線直通列車における着席保証をメインとしていることが窺えます。

事実、THライナーの所要時間と、北千住駅で急行列車と日比谷線を乗換えた場合の所用時間は大差ありません。久喜~霞ヶ関間で比較すると、久喜駅9時23分発のTHライナーでは1時間17分、久喜駅9時28分発の急行に乗車し北千住駅で乗換えた場合は1時間15分と、ほぼ同一。東武鉄道の担当者も、北千住駅で乗換えた場合と同等となるダイヤ設定だと説明しています。

北越谷駅から始まる複々線区間では急行線を快走してきたTHライナーですが、西新井駅にさしかかると同時に速度を落とします。西新井~梅島間に新設されたポイントを通過するためです。これまで日比谷線から乗り入れる列車は緩行線しか走ることができませんでしたが、東武鉄道では今回のTHライナー運行に先立ち、西新井駅より300メートル北千住方にポイントを新設しました。

西新井駅付近に新設されたポイント
西新井駅付近に新設されたポイント

緩行線に移り、荒川を渡ると、列車はまもなく北千住駅に到着。時刻表上では通過となっていますが、ここで東武鉄道と東京メトロの乗務員が交代するため、THライナーはドアを開けませんが一旦停車します。

北千住駅に停車。乗務員交代のための停車なのでドアは開きません
北千住駅に停車。乗務員交代のための停車なのでドアは開きません

ところで、東武線と日比谷線のほか、常磐線、千代田線、つくばエクスプレス線の5路線が集まる北千住駅では、なぜ乗降を取り扱わないのでしょうか。東武鉄道の担当者によると、THライナーはあくまで東武線と日比谷線の直通需要に応える列車で、各社線内のみの利用は霞ヶ関~恵比寿間を除き想定していないのだそう。東武線では特急「りょうもう」「スカイツリーライナー」なども運転されているため、THライナーではこれら特急列車との棲み分けを図っているようです。

乗務員交代が終わると、いよいよ日比谷線に入線。東武線内とは打って変わって、のんびりとした速度で走ります。これは、約5分間隔で運転される一般列車の間にTHライナーを走らせるダイヤとなっているため。日比谷線内の所要時間はTHライナーも一般列車も同じですが、速度を上げると先行列車に追いついてしまうため、一般列車よりも速度を落として運転しているのです。

日比谷線内にも通過駅がありますが、ゆったりとした速度で走ります
日比谷線内にも通過駅がありますが、ゆったりとした速度で走ります

なお、東武鉄道では自動放送の声担当者にアナウンサーの久野知美さんを、東京メトロでは森谷真弓さんをそれぞれ起用していますが、THライナーでは東京メトロ線内でも久野さんの放送で統一。西武鉄道が運行するS-TRAIN同様、直通他社線内でも声の担当はそのままとなっています。

上野、秋葉原、茅場町、銀座と停車し、いよいよフリー乗降区間との境界である霞ヶ関駅に到着。銀座駅までは各車1か所のドアのみが開いていましたが、ここからは全ての扉が開きます。この先も座席はクロスシートで運用。午前中の2本のみと数は少ないですが、ちょっぴり「乗り得」な列車です。

なお、霞ヶ関駅までが座席指定区間となっているのは、東武線からの直通需要を勘案してのことだそう。東京メトロの担当者は、東武線からの直通利用者は大部分が霞ヶ関駅までの乗車となっているといい、そのために上り列車は霞ヶ関駅以遠がフリー乗降区間、下り列車は霞ヶ関駅始発となっているのだそうです。

THライナーは、霞ヶ関駅から先、終点の恵比寿駅まで各駅に停車します。恵比寿駅到着後はそのまま回送となり、中目黒駅の引き上げ線に入線。座席をロングシートモードにした上で、折り返しの一般列車に充当されるとのことです。

今回の乗車は霞ヶ関駅まで。久喜駅から霞ヶ関駅までの所要時間は1時間17分、特に日比谷線内ののんびりとした走行の影響で時間が掛かった印象がありますが、それでも一般列車のみを乗り継いだ最速パターンとほぼ同じです。混雑した電車で1時間強の区間を立席乗車とする苦労を考えると、THライナーの利用は選択肢に入ってくるのではないでしょうか。

コーヒー一杯分とはいきませんが、少々の課金で快適さを得られるTHライナー。特に新型コロナウィルスが蔓延している昨今では、混雑した一般列車を避けるという意味でも、THライナーを利用する価値はありそうです。

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