工場や運行業務は? トロバスのウラ側へ
車両だけでは運行できないのは、どの運輸業でも同じです。ここからは、トロリーバスの運行を支えるウラ側をご紹介しましょう。
まずやってきたのは、トロリーバスの整備工場。扇沢駅構内にあり、駅の到着ホームから遠目に窺うこともできます。
通常の鉄道車両と同様、トロリーバスでも検査周期が法律により定められています。関電トンネルトロリーバスでは、3~4日ごとの「要部検査」、1か月ごとの「1か月検査」、1年ごとの「重要部検査」、そして3年ごとの「全般検査」を実施。この整備工場で検査するほか、「下界」の工場で実施することもあるそうです。整備に携わる人員は、普段は10人以下の小規模精鋭。しかし、トロリーバスが運休する冬期には、運転士の半数が共に車両整備に携わるといいます。なお、残りの半数は、トンネルなどの設備点検担当となります。
続いては指令室へ。関電トンネルトロリーバスの運行をリアルタイムに見守る指令室。安全監視のほか、乗客数に応じた配車や台数によって変わる停止位置の指示など、実際の運行を影からサポートする施設です。
関電トンネルトロリーバスでは、複数台を1編成とした運行形態を取っています。閉塞は、架線に設置してあるトロリーコンタクタを使用したチェックイン・チェックアウト方式の自動閉塞。また安全性のため、運行票(スタフ)も併用しています。このほか、関電トンネルでは工事用車両も通行するため、トロリーポールを持たない工事用車両用として、ループコイルを用いた保安装置も併設しています。
トロリーバスに必須の架線。関電トンネルトロリーバスでは、主にき電吊架式を採用。カーブ部分や黒部ダム駅では、離線防止のために剛体架線を使用しています。なお、架線があるのは扇沢~黒部ダム間の本線のみで、工事用道路や駅と整備工場の間には敷設されていません。トロリーバスが整備工場に入場する際には、蓄電池を使用して走行します。
いざ、関電トンネルへ
それでは、扇沢駅からトロリーバスに乗車して、関電トンネルへと向かいましょう。
いよいよ発車時刻。信号が青に変わり、発車メロディが鳴ると、駅長(信号取扱上の責任者)の合図をもとに、トロリーバスが次々とVVVFインバータの音を響かせて発車していきます。
「世界中のスケールと迫力」から始まる車内放送を聞くうちに、トロリーバスは関電トンネルへ。全長5.4キロメートルの関電トンネルは、黒部ダム建設の物資を運ぶために1956年から1958年にかけて建設されました。先述したように工事は難航を極め、特に破砕帯では突破に7か月を要しました。トロリーバスは破砕帯を難なく通過していきますが、途中にはその破砕帯を示す照明や掲示があります。
一直線のトンネルを進み、長野県と富山県の県境を越えると、トンネル貫通点付近の信号場に到着。「列車交換」がある場合、上下列車がこの位置ですれ違います。
信号場を出発したトロリーバスは、関電トンネルをさらに進み、扇沢駅からおよそ15分、トンネル内に設けられた黒部ダム駅に到着しました。黒部ダムの展望台へは、ここから220段の階段を登ります。