プロの鉄道写真家から見てどんなカメラなのか?

Q.まず、EOS 60Dの最初の印象を教えて下さい。

広田先生:
この機種から付いたバリアングル液晶はとても面白い機能だね。低い位置のものをローアングルで撮ったり、自分の身長以上の場所から掲げて撮ったりできるから、撮影の幅を広げてくれるカメラだと思うよ。今までより自由な視点で写真が撮れて撮影が楽しくなるカメラだね。

広田先生の作品

銚子電鉄デハ701の車体にギリギリまで接近し、見上げて撮影した作例。塗装の割れた部分が静かにデハ701が積み重ねてきた車体の年齢を物語っている。

撮影モード絞り優先
焦点距離24.0mm
シャッター速度1/3200秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス

Q.「使いやすさ」などはいかがでしょうか?

広田先生:
さすがキヤノンだけあって、よく作り込まれていると思うよ。特に他のカメラに比べてグリップの握りが深いから、僕はとっても握りやすい。小指を丸めてカメラを下から支えたり、中指でシャッター、人差し指でダイヤルという持ち方ができる。こうすると、カメラが安定して撮りやすいし手ブレも軽減できるんだ。これが僕のおすすめの撮り方かな。

Q.シャッターの反応速度などはいかがでしょうか?

広田先生:
シャッターの反応速度は申し分ないね。プロ用としても数回使って速度の感覚を掴めば十分実用になるレベルだと思う。ミラーレスもいいけど、一眼レフカメラに慣れている人ならこの反応速度はやっぱり心地いい。

広田先生の作品

写真の奥に向かって走り抜ける列車を、近距離からの撮影にも関わらず、ピタリとベストな位置で捉えたもの。車輌の先頭部分が右端ギリギリにある構図は、シャッタータイミングを正確に捉えないと難しい。

撮影モード絞り優先
焦点距離18.0mm
シャッター速度1/5000秒
絞り数値f3.5
ISO感度200
AFモードAIサーボ

Q.カメラとしての絵作りはどうでしょう?

広田先生:
ハッキリと色が出て、シャープ感のある絵が撮れるね。ISO感度が200以下に設定できるから精細感もよく出るよ。他社のカメラはISO200からのものもあるから、これは優れたポイントだね。僕のオススメのISO感度は160かな。あと、ホワイトバランスはマニュアル設定しなくても「オート」のままで十分に適切な色温度にしてくれる。コントラストの高い印象的な写真が好きな人はよくフィットすると思うよ。

広田先生の作品

空や車輌の青さと、外川駅の木造のしっとりとした感じが上手く1枚の写真に表現されている。

撮影モード絞り優先
焦点距離25.0mm
シャッター速度1/320秒
絞り数値f8
ISO感度160
AFモードAIフォーカス

Q.アートフィルター機能についてはいかがでしょうか?

広田先生:
印象的な絵を作ってくれて面白い機能だね。そのままだと何気ない普通の写真でもアートフィルター機能を使うと、全く違ったいい写真になることもある。そのままで撮ってもいいけど、「トイカメラ風」のフィルターとか遊べるものがあるから、ぜひ色々と試してみて遊んで欲しい機能だね。

広田先生の作品

犬吠駅の異国情緒あふれる雰囲気がアートフィルター機能の「トイカメラ風」でよりエキゾチックに表現されている。

撮影モード絞り優先
焦点距離18.0mm
シャッター速度1/800秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス

どんな人に向いているカメラなのか?

Q.ズバリ、どんな人に向いているカメラでしょうか?

広田先生:
撮り鉄はもちろん、乗り鉄の人にもオススメしたいね。ボディも小型で軽量だし、そんなに荷物にならないから気軽に鞄に入れて旅行に持って行けるカメラだと思う。車輌もいいけど、旅先の風景やその土地の名物とか自分なりの旅行の思い出を収めるのに使って欲しいね。

広田先生の作品

銚子電鉄の名物「ぬれ煎餅」。こうした旅で出会ったその土地ならではの風景を写真に収めるのはとても楽しいことだ。

撮影モード絞り優先
焦点距離135.0mm
シャッター速度1/160秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス

Q.初心者がレンズキットからステップアップするとしたら、どんなレンズを購入したら良いでしょうか?

広田先生:
まず、レンズを持っていない人や、初めて一眼レフカメラを買う人なら、『EOS 60D・EF-S18-135 IS レンズキット』がオススメだね。このレンズで多くの被写体には対応できると思う。レンズキットを買って、次に揃えるレンズとしては、広角ズームの『EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM』とかイイかも知れないね。

広田先生の作品

レンズキットに添付されているレンズ『EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS』で撮影した18mmの画角のカット。レンズの広角側を使えば、旅先で訪れた駅の風景などをワイドに撮ることができる。

撮影モード絞り優先
焦点距離18.0mm
シャッター速度1/800秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス

このように語り、広田先生は銚子電鉄の風景を満喫しながら、とても楽しそうにEOS 60Dを使っておられた。EOS 60Dはプロの視点から見ても鉄道写真との親和性が良いカメラだと言える。

コラム:駅から気軽に行ける撮影地 第2回

聖橋の橋上(お茶の水)

JR東日本 武蔵野線の市川大野駅。対向式ホームの配置だが、中間に貨物列車待避用の側線がある。ここがオススメな理由は、ディズニーリゾート向け団体臨時列車「舞浜臨」の列車が時間調整のため、側線に停車することがあるからだ。特に大宮方面から舞浜に回送する秋田や仙台の583系などは、ここで10分前後停車するため、夜間でもゆっくりとバルブ撮影をすることができる。また、ホームから側線の見通しが良く、障害物が少ないのも嬉しい。とはいえ、停止位置の関係で 583系の先頭車はホームよりも西船橋駅寄りに停車するため、撮影できるのは最後尾からとなる。
もちろん、乗降客の邪魔にならないように撮影は行って欲しい。午後が順光。
■お勧めレンズ:広角~標準
■JR東日本 市川大野駅ホーム上地図

田端運転所付近

上野方面から尾久車両センターに回送する列車が通る踏切。基本的に営業運転の列車は通過しない。朝にはあけぼの、カシオペア、北斗星が上野から回送で推進運転で入場するところが見られる。また、これらの寝台特急が入場すると、連結を外された牽引機が機関庫に入るため、すぐ近くまで回送されるところを見ることもできる。
 ただ、撮影できる場所が狭く限られており、この踏切自体が車や人の通行も多いため、周囲に十分注意して邪魔にならないようにする必要がある。
■お勧めレンズ:広角~標準
■JR東日本 田端駅より徒歩 約10分地図

水上駅周辺

本銚子駅のホーム上から外川方面を望んだ場所。緑のトンネルの中を列車が走り、木立の隙間から日光が差して幻想的な絵が撮れる。また、駅のすぐ上には跨線橋があり、ここから狙っても面白い絵が撮れるだろう。午後が順光。
■お勧めレンズ:広角~標準
■銚子電鉄 本銚子駅上地図

【!撮影時の注意!】

  • 立ち入りを禁止されている場所に無断で入らないようにしてください。
  • 車道の近くなどでは、車や通行者に注意し、通行の妨げにならないようにしてください。
  • ゴミは必ず自分で持ち帰りましょう。
  • 撮影地が混んでいる場合にはお互いに譲り合って撮影しましょう。
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1969年東京生まれ。スピード感あふれる乗り物に幼いころから興味をいだき2歳で初めて鉄道写真を撮る。現在は写真展などで作品を発表するなかカメラやレンズを初めとする機材全般のインプレッションや開発を多く手掛ける。

また写真教室や撮影会、TVなどで写真の楽しさを広く伝えようと活動中。2008年よりデジ侍のメンバーとして参加を開始。2009年はNYで写真展を開催。EOS学園東京校講師。 広田泉先生の講座はこちら→「EOS学園

有効画素数
約1800万画素 CMOSセンサー
連続撮影速度
最高約5.3コマ/秒
撮影可能アスペクト比
3:2、4:3、16:9、1:1
動画撮影機能
フルHD(最高1920×1080 30p)対応
MPEG・4 AVC/H.264
液晶モニター
バリアングル機能搭載
ワイド3.0型(3:2)/約104万ドット
ピクチャースタイル
スタンダード、ポートレート、風景、ニュートラル、忠実設定、モノクロ、ユーザー設定1~3
アートフィルター機能
ラフモノクロ、ソフトフォーカス、トイカメラ風、ジオラマ風
サイズ/重量
144.5(幅)×105.8(高さ)×78.6(奥行き)mm/約755g
ラインナップ
EOS 60D・ボディ
EOS 60D・EF-S18-135 IS レンズキット
EOS 60D・EF-S18-55 IS レンズキット

EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM

レンズキットの付属レンズより広い、35ミリ判換算で16~35ミリをカバーするレンズ。
広い画角を利用し周囲の情景を入れることで、よりその場の状況や空気感を出すことができる。
また、寝台列車の個室の室内を記念に撮ったり、駅弁や食堂車の料理など近距離のものを撮るのにも向いている。

EF-S55-250mm F4-5.6 IS

ロケーションの関係でどうしても望遠が必要な場合にオススメしたいのがこのレンズ。
35ミリ判換算ではなんと、88~400ミリ相当だ。400ミリ相当があれば、肉眼でハッキリ見えないような距離でもクッキリと捉えられる。少し線路から遠い撮影ポイントでも十分にズームして撮ることができるので、撮影の幅を広げられる。また、有名な撮影地は混んでいて、なかなかいいポジションが確保できない事が多いが、このズーム性能を利用して人のいない場所から撮ることもできる。レンズの長さは108ミリ、重量は390gとこのズーム性能の割には小型なため持ち運びやすいのがポイント。

作例2

使用機材 Canon EOS 60D・EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS
撮影モード絞り優先
焦点距離18.0mm
シャッター速度1/250秒
絞り数値f6.3
ISO感度200
AFモードAIフォーカス
撮影モード絞り優先
焦点距離36.0mm
シャッター速度1/400秒
絞り数値f7.1
ISO感度200
AFモードワンショット
撮影モード絞り優先
焦点距離135.0mm
シャッター速度1/2500秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス
撮影モード絞り優先
焦点距離135.0mm
シャッター速度1/1600秒
絞り数値f5.6
ISO感度200
AFモードAIフォーカス