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事情さまざま、わずかな製造数で終わってしまった鉄道車両たち 東海・西日本編

2020年5月24日(日) 鉄道コムスタッフ

量産化を断念した新型特急車

日本初の振り子式気動車としてJR四国が導入した2000系。これの置き換えを目指して、同社は2017年に2600系を投入しました。

2017年にデビューした2600系。サンライズ・カシオペアさんの鉄道コム投稿写真
2017年にデビューした2600系。サンライズ・カシオペアさんの鉄道コム投稿写真

先代の特急型車両である2000系では、険しい四国の山間部を高速で走行するため、制御付き自然振り子装置を搭載していました。2600系でも車体傾斜装置の搭載を目指しましたが、JR四国ではコストの削減を目指し、振り子装置ではなく空気ばね式の車体傾斜装置を採用しました。

空気ばね式の車体傾斜装置は、それまでの振り子式よりも構造が簡単で、現在ではN700系やE5系などの新幹線車両にも搭載されるほど普及しています。一方、遠心力を利用して車体を傾ける振り子式と異なり、空気ばね式では圧縮空気を台車の空気ばねに送り込んで車体を傾けるため、車体の傾斜は圧縮空気タンクやコンプレッサーの性能に依存することとなります。

JR四国では、空気ばね式車体傾斜装置を搭載した8600系電車を、2014年に導入していました。しかし、線形の悪い路線で積極的に活用するには空気ばね式は不向きで、8600系では圧縮空気の不足という問題が発生。空気タンクの増設などを図りましたが、それでも従来の振り子車両である8000系より車体傾斜装置の作動箇所を削減することとなってしまいました。

2600系でも、8600系と車体傾斜装置の構造を共通化することで、メンテナンスコストの削減を狙っていました。しかしながら、2600系の量産投入が想定されたのは、山間部でカーブが連続する土讃線。空気ばね式の2600系では、圧縮空気の不足が8600系以上に問題となりました。スペースに余裕がある付随車を連結する電車の8600系とは異なり、床下まで機器類がギッシリと詰まった気動車の2600系では、空気タンクを増設するにも限度があります。製造された車両では屋根上にも空気タンクを搭載していますが、それでも土讃線の線形には対応できないという判断が下されました。

結局、2600系の増備は、2017年に投入された2両編成2本のみ。2000系の置き換えは、制御付き自然振り子装置を搭載した2700系で対応することとなり、2600系はカーブの少ない高徳線の特急「うずしお」などで、細々と運用されることとなってしまいました。しかしながら、2600系の走行機器類の設計は2700系にも受け継がれており、車体傾斜装置以外の部分では成功作だったと言えます。

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