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製造から半世紀、活躍が続く東急7700系の歴史を辿る

2018年8月24日(金) 鉄道コムスタッフ

東京急行電鉄(東急)の池上線と東急多摩川線で活躍する7700系。日本初のオールステンレス車両として製造された初代7000系からの流れを汲むこの形式は、新造車両への置き換えにより、2018年度で引退することとなります。日本の鉄道史のマイルストーンとなった7000系・7700系。その歴史を紐解きます。

営団地下鉄(当時)日比谷線への直通運転も考慮した車両として、1962年にデビューした7000系。1966年にかけて134両が製造された7000系は、アメリカの鉄道車両メーカー、バッドとのライセンス契約により、日本で初めてオールステンレス車両として製造された鉄道車両となりました。

東急車輛製造横浜製作所(現:総合車両製作所横浜事業所)に保存された7000系デハ7052。東急車輛産業遺産制度(現:J-TREC産業遺産制度)第2号に指定されています。東急車輛製造公開イベントにて撮影
東急車輛製造横浜製作所(現:総合車両製作所横浜事業所)に保存された7000系デハ7052。東急車輛産業遺産制度(現:J-TREC産業遺産制度)第2号に指定されています。東急車輛製造公開イベントにて撮影

オールステンレス車両とは、外板と内部の骨組みの双方がステンレス鋼で構成された車両のこと。7000系以前にも外板にステンレス鋼を採用したセミステンレス車両は数例が存在しましたが、これは技術的には普通鋼製の外板をステンレス部材に変更しただけのものでした。7000系を製造した東急車輛製造は、バッドとのライセンス契約によりステンレス車体の製造技術を獲得し、現在に至るまでの日本の鉄道車両製造技術の発展に貢献してきたのです。

また、7000系は台車も特徴的でした。車体と同じくバッドとのライセンス契約によって導入されたパイオニアIII台車は、軸ばねを省略するなど、軽量化を目指した独特な設計のもの。通常は車輪の内側に設けられるブレーキディスクが、表側に露出していることも特徴的でした。このパイオニア台車は、ボルスタアンカやブレーキディスクの設置位置変更などの改良が加えられながらも、東急8000系のほか、京王3000系、南海6000系などに採用されました。しかしながら、乗り心地に難があるほか、軽量化を目指したが故に、冷房化改造が実施できないなど、後の活躍に影響を与える伏線が、すでに現れていました。

7000系が使用したパイオニアIII台車「TS-701」。軸ばねが省略され、軸受が台車枠に直接取り付けられていることが特徴です
7000系が使用したパイオニアIII台車「TS-701」。軸ばねが省略され、軸受が台車枠に直接取り付けられていることが特徴です

7000系は東横線を皮切りに、田園都市線(現在の大井町線・田園都市線二子玉川以西)や目蒲線(現在の目黒線・東急多摩川線)など、池上線と世田谷線を除く各線に投入。東横線と日比谷線の直通運転にも使用されるなど、東急各線を中心に縦横無尽に活躍しました。また、東急グループの伊豆急行に貸し出され、伊豆急行線の夏季輸送を支えたこともありました。

日比谷線直通列車に充当される7000系(adap2005さんの鉄道コム投稿写真)
日比谷線直通列車に充当される7000系(adap2005さんの鉄道コム投稿写真)

製造以来、東急各線を中心に活躍してきた7000系ですが、1980年代に入ると、部品の老朽化や設備の陳腐化が隠せなくなってきます。ただし、普通鋼製の車体よりも長持ちする7000系のオールステンレス車体は、まだまだ活躍できる状態でした。そこで車体以外の部品を取り替え、足回りや設備を当時の最新車両と遜色ないレベルに更新して生まれたのが、7700系です。

7000系の車体を流用して生まれた7700系
7000系の車体を流用して生まれた7700系

制御装置は、抵抗制御から9000系と同等のGTO素子を採用したVVVFインバータ制御に、台車も8000系と同等のものに交換。運転台はツーハンドルマスコンからワンハンドルマスコンのデスクタイプに変更。客室設備も9000系などと同様のものとなり、冷房装置も搭載しました。ブレーキは一部車両が電磁直通ブレーキのままでしたが、後年に全車両が電気指令式へと変更されています。

骨組みと外板以外は全て新車、というレベルに生まれ変わった7700系。7000系として製造された134両のうち54両が改造され、当初は6両編成として大井町線に、後に4両編成が目蒲線、3両編成が池上線に投入されました。池上線投入時に実施された編成組み換えでは、余剰中間車3両を改造し、1000系に類似した顔とIGBT素子を使用したVVVFインバータ制御装置を搭載した編成、7915F(クハ7915-デハ7815-デハ7715からなる3両編成)が生まれていることが特筆されます。

当初より池上線に投入された編成は、「歌舞伎」とも呼ばれる車体デザインが特徴です
当初より池上線に投入された編成は、「歌舞伎」とも呼ばれる車体デザインが特徴です

2000年に目蒲線が目黒線と東急多摩川線に分割された後も、東急多摩川線と池上線で活躍を続けた7700系。しかしながら、両線向けに製造された7000系(2代目)の導入により、先述の7915Fを皮切りに、2007年より置き換えが順次進められています。当初は2011年度に置き換えが完了する予定でしたが、導入計画の変更により置き換えは中断。2014年からの1000系1500番台の改造投入や、2017年度からの7000系増備車の製造により、2018年に置き換えが完了する見通しとなりました。

2代目7000系や1000系と肩を並べる7700系
2代目7000系や1000系と肩を並べる7700系

東急線からの引退が秒読みとなった7700系。しかしながら、改造前の7000系を含め、地方私鉄に譲渡された車両は現在でも広く活躍しています。

7000系は、弘南鉄道や福島交通、北陸鉄道、秩父鉄道、水間鉄道に譲渡。譲渡時に不足する先頭車を補うための先頭化改造車も現れ、東急線での活躍時とは違った姿を見せています。2018年現在は秩父鉄道からは完全に引退し、福島交通の車両も元東急1000系への置き換えが進められていますが、その他の鉄道では代替計画の発表はなく、まだまだ活躍が続きそうです。

弘南鉄道へ譲渡された7000系。弘南線と大鰐線の両線で活躍しています
弘南鉄道へ譲渡された7000系。弘南線と大鰐線の両線で活躍しています

また、改造後の7700系も譲渡された車両があります。2000年の目蒲線分割時に余剰となった3編成のうち、先頭車6両が十和田観光電鉄へと譲渡されました。十和田観光電鉄線は2012年に廃線。7700系と同時に譲渡された7200系は解体を免れたものの、7700系は6両全てが解体され、現存しません。

このほか、三重県と岐阜県を走る養老鉄道では、東急線から引退する7700系を15両購入し、既存車両の置き換えに充てると発表しました(鉄道コム未来ニュース記事)。今後30年程度の使用を見込んでいるといいます。7000系としての製造からはおよそ50年が経過しますが、長持ちするオールステンレス車体が奏功し、さらなる活躍の場を得た形です。

日本の鉄道車両史には欠かせない存在である7000系・7700系。東急線からはまもなく引退となりますが、新天地に移った車両たちの第二の活躍は、まだまだ続きそうです。

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