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E5系や400系が展示、シミュレータは日本最速? 鉄道博物館の新館をお見せします

2018年6月29日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

7月5日、「鉄道博物館」の新館がオープンします。これまでの本館の南に新たに建設された新館は、スペースの増加にとどまらず、本館の展示の再構成を含め、新たな鉄道博物館の幕開けとも言えます。6月26日にオープンに先駆けて開催された内覧会から、生まれ変わった鉄道博物館の魅力をお伝えします。

新館1階 仕事ステーション

新館に足を踏み入れると目に入るのが、新幹線E5系と400系の先頭車。ここは新館1階の「仕事ステーション」。「鉄道を支える仕事に挑戦して、プロフェッショナルになりきる『体験型ミュージアム』」がコンセプトで、運転士や車掌のみならず、保線や運輸指令など、さまざまな分野のスタッフが鉄道に関わることを学べるスペースです。

E5系と400系の先頭車。デビュー時期が約20年離れている両形式、要求された性能からくるデザインや車体の幅などを比較することもできます
E5系と400系の先頭車。デビュー時期が約20年離れている両形式、要求された性能からくるデザインや車体の幅などを比較することもできます

まずは気になる車両から。展示されるのは、東北新幹線のフラッグシップE5系と、初の新在直通用形式である400系。E5系はモックアップですが、保安装置や走り装置などを除いては実物同様の構造とのこと。製造も山口県の日立製作所笠戸事業所が担当しています。普段は車内非公開とのことですが、今回はグランクラスとなる客室部分のみ公開されました。

E5系のモックアップ。保安装置や走行用機器、サービス機器を除いて、車体は実物と同じ構造です。車両番号は「E514-9001」。E5系には実在しない試作車の番号を名乗っています
E5系のモックアップ。保安装置や走行用機器、サービス機器を除いて、車体は実物と同じ構造です。車両番号は「E514-9001」。E5系には実在しない試作車の番号を名乗っています
通常非公開となる車内は、グランクラスを再現。後方の数脚は、実物同様にリクライニングも可動します
通常非公開となる車内は、グランクラスを再現。後方の数脚は、実物同様にリクライニングも可動します

つづいて400系。こちらは実際に「つばさ」などで使用された本物。この411-3号車は、2010年の引退後、福島にて保存されていたということです。車体塗装はデビュー時のものに復元されています。こちらは開館後も客室部分は公開されるとのこと。運転室は通常非公開となります。

初の新在直通用形式として「つばさ」などに使われた400系。JR東日本としては初の新型新幹線形式であるほか、200系との連結も実現したなど、技術的マイルストーンとしての価値が高い車両です
初の新在直通用形式として「つばさ」などに使われた400系。JR東日本としては初の新型新幹線形式であるほか、200系との連結も実現したなど、技術的マイルストーンとしての価値が高い車両です
かつて時速240キロで駆け抜けた400系の運転台。こちらは通常非公開です
かつて時速240キロで駆け抜けた400系の運転台。こちらは通常非公開です
客室部分は一般公開されるとのこと。こちらは鉄道博物館で唯一所蔵するグリーン車。現在山形新幹線で活躍するE3系と異なり、座席配置が1-2列となっています
客室部分は一般公開されるとのこと。こちらは鉄道博物館で唯一所蔵するグリーン車。現在山形新幹線で活躍するE3系と異なり、座席配置が1-2列となっています

隣の展示に移りましょう。こちらの209系のモックアップは、車掌シミュレータ。ドア開閉や車内放送などの仕事体験ができます。体験料金は1回500円で、整理券制となります。

209系のモックアップを使用した車掌シミュレータ。リニューアル前やかつての交通博物館では、運転シミュレータとして使用された躯体です
209系のモックアップを使用した車掌シミュレータ。リニューアル前やかつての交通博物館では、運転シミュレータとして使用された躯体です
前方監視の視点から。シミュレータでは、ドア開閉や安全確認、車内放送などが体験できます
前方監視の視点から。シミュレータでは、ドア開閉や安全確認、車内放送などが体験できます

駅の仕事体験コーナーも。こちらでは、みどりの窓口や券売機でのきっぷの購入・発売を体験できます。

券売機や改札を再現した駅の仕事体験コーナー。MV35型指定席券売機やEV4型自動券売機、最新型のEG20型自動改札機などが設置されています
券売機や改札を再現した駅の仕事体験コーナー。MV35型指定席券売機やEV4型自動券売機、最新型のEG20型自動改札機などが設置されています
指定席券売機では、新幹線のきっぷを発券可能。もちろん実際の乗車には使用できません。隣の自動券売機でも、近距離きっぷが発券できます
指定席券売機では、新幹線のきっぷを発券可能。もちろん実際の乗車には使用できません。隣の自動券売機でも、近距離きっぷが発券できます
発券したきっぷは、自動改札機に通すことができます
発券したきっぷは、自動改札機に通すことができます

このほか、クイズ形式での指令シミュレーションや踏切安全設備体験など、表裏両面から鉄道を支える仕事の数々を体験できるゾーンとなっています。

指令や保守などの仕事を学べるコーナーも。文字での紹介だけでなく、触って体感できるコーナーです
指令や保守などの仕事を学べるコーナーも。文字での紹介だけでなく、触って体感できるコーナーです
架線の直径を計るコーナー。手前にある新品の架線と、奥にある摩耗した架線の比較を体感できます
架線の直径を計るコーナー。手前にある新品の架線と、奥にある摩耗した架線の比較を体感できます
踏切などの安全設備も。日本信号のMWF II型や東邦電機工業の全方向踏切警報灯など、最新型の設備をそろえたとのこと
踏切などの安全設備も。日本信号のMWF II型や東邦電機工業の全方向踏切警報灯など、最新型の設備をそろえたとのこと

新館2階 仕事ステーション

鉄道系の博物館で、車両展示と共に人気を集めるのが運転シミュレータ。新館の2階には、E5系のシミュレータをはじめ、計4台のシミュレータが設置。また、かつて本館に設置されていた運転士体験教室も、こちらに移設されています。

シミュレータの中でも目玉となるE5系新幹線のシミュレータ。実物そっくりの運転台で、最高時速320キロの運転を体感できます。映し出される映像は実写で、迫力の走行風景が視界を覆います。体験は1回500円で整理券制。所要時間は約15分で一日の定員も限られるとあり、開館直後は大人気となりそうです。

大人気となりそうなE5系のシミュレータ。実物同様の運転台で、新幹線の高速運転を体験できます
大人気となりそうなE5系のシミュレータ。実物同様の運転台で、新幹線の高速運転を体験できます
最高時速である320キロ付近に到達。この速度での運転を体験できる鉄道シミュレータは、国内「最速」ではないでしょうか
最高時速である320キロ付近に到達。この速度での運転を体験できる鉄道シミュレータは、国内「最速」ではないでしょうか

このほかにも、京浜東北線E233系、高崎線211系、山手線205系のシミュレータが設置されています。これらの体験料金は無料。列に並べば誰でも体験できます。

リニューアル前の211系シミュレータや205系シミュレータに加え、車いすに対応したE233系シミュレータが仲間入り。代わりに、以前設置されていた200系シミュレータが、老朽化により引退したとのことです
リニューアル前の211系シミュレータや205系シミュレータに加え、車いすに対応したE233系シミュレータが仲間入り。代わりに、以前設置されていた200系シミュレータが、老朽化により引退したとのことです

新館2階 未来ステーション

最新の研究により想像される未来の社会や鉄道を体験できる未来ステーション。ここでは、来館記念カードのQRコードで自分のアバターを作成し、今後30年前後に想定される未来を体感できます。

創造型ミュージアムと位置付ける未来ステーション。大きな展示物は無いですが、未来を体験し、考えることができるブースです
創造型ミュージアムと位置付ける未来ステーション。大きな展示物は無いですが、未来を体験し、考えることができるブースです
自らの顔写真を基に作成されたアバターで、未来の社会や鉄道を体験できます
自らの顔写真を基に作成されたアバターで、未来の社会や鉄道を体験できます
ブースの最後にはアイデア投稿コーナーも。自分が思い描く未来を絵や文章で投稿できます。投稿した内容は、他のアイデアとあわせて、来館者によって比較投票されることもあります
ブースの最後にはアイデア投稿コーナーも。自分が思い描く未来を絵や文章で投稿できます。投稿した内容は、他のアイデアとあわせて、来館者によって比較投票されることもあります

新館3階 歴史ステーション

この新館で、もっとも力が入っているのが、この歴史ステーションではないでしょうか。かつて本館2階にあった歴史展示を移設のうえパワーアップしたこのブース。鉄道開業以前から現代までの歴史を、技術や社会とともに学ぶことができます。

中央の「ひろば」に、時間に正確な運行を磨いてきた象徴として時計を設置。その周囲には、各時代を象徴する駅などを再現した社会展示、その時代に磨かれた技術展示が5つの区分に分けられ展示されています
中央の「ひろば」に、時間に正確な運行を磨いてきた象徴として時計を設置。その周囲には、各時代を象徴する駅などを再現した社会展示、その時代に磨かれた技術展示が5つの区分に分けられ展示されています
技術展示では、電気や車両など、7つの技術の「ライン」が壁面に引かれています。これを辿りながらの見学も、各分野を時系列に見ることができ、理解が深まりそうです
技術展示では、電気や車両など、7つの技術の「ライン」が壁面に引かれています。これを辿りながらの見学も、各分野を時系列に見ることができ、理解が深まりそうです
5つのコーナーを抜けた先には、現代に繋がる国鉄分割民営化以降の展示も
5つのコーナーを抜けた先には、現代に繋がる国鉄分割民営化以降の展示も

新館4階 ビューレストラン・トレインテラス

かつてエントランス付近にあったレストランは、新館最上階の4階に移転。こちらでは、目の前を通過する新幹線を眺めながら食事を楽しめます。料理への注目もお忘れなく。ベロネーズやハチクマライスなど、昭和のレシピを再現したメニューを始めとする数々が、我々の胃袋を満たしてくれます。

新幹線の線路が目の前にあるビューレストラン。ピーク時にはひっきりなしに行き交う新幹線を見ながらランチが楽しめます
新幹線の線路が目の前にあるビューレストラン。ピーク時にはひっきりなしに行き交う新幹線を見ながらランチが楽しめます
ベロネーズやナポリタン……とE7系。料理は美味しそうですが、それ以上に子どもたちにとっては新幹線が最高のスパイスでしょうか
ベロネーズやナポリタン……とE7系。料理は美味しそうですが、それ以上に子どもたちにとっては新幹線が最高のスパイスでしょうか
メニューには、あの「シンカンセンスゴイカタイアイス」も。降車駅までの時間を気にせず、のんびりと味を楽しめます
メニューには、あの「シンカンセンスゴイカタイアイス」も。降車駅までの時間を気にせず、のんびりと味を楽しめます

レストランに併設されたトレインテラスは、屋上から在来線を眺めることができるビュースポット。宇都宮線や高崎線、川越線の列車を眺めながら、ここでお弁当を食べるのもいいかもしれません。

トレインテラスの最先端は、川越線のトンネルや新幹線も見える特等席。1テーブルしかないので早い者勝ちです
トレインテラスの最先端は、川越線のトンネルや新幹線も見える特等席。1テーブルしかないので早い者勝ちです

新館屋外 てっぱくひろば

かつて設置されていたてっぱくひろばが、新館南側にリニューアルオープン。子ども向け遊具のほか、ミニはやぶさ号も。目の前を走る電車を見ながら遊べるスペースは、小さな子どもたちが喜びそうです。

てっぱくひろばのミニはやぶさ号。乗車は1回200円です
てっぱくひろばのミニはやぶさ号。乗車は1回200円です

また、本館と新館の間には、かつて上越新幹線などで活躍したE1系が、3月より展示。以前よりランチトレインとして設置されている183系も、リニューアルにあわせてお色直しされました。

新幹線初のオール二階建て車両として1994年にデビューしたE1系E153-104号車。2012年の引退時の塗装で保存されています
新幹線初のオール二階建て車両として1994年にデビューしたE1系E153-104号車。2012年の引退時の塗装で保存されています
このE1系や、続いてデビューしたE4系では、2階席のうち自由席車両は3-3列配置となっているのが特徴。通常よりも1列増やし、大量輸送を可能としました。なお、E1系の車内は通常非公開です
このE1系や、続いてデビューしたE4系では、2階席のうち自由席車両は3-3列配置となっているのが特徴。通常よりも1列増やし、大量輸送を可能としました。なお、E1系の車内は通常非公開です
183系を使用したランチトレイン。車内で飲食が可能です
183系を使用したランチトレイン。車内で飲食が可能です

本館 車両ステーション

ただ新館がオープンするだけではない鉄道博物館。本館にも手が加えられています。36両の実物車両が展示され、かつてヒストリーゾーンと呼ばれたブースは、車両ステーションへと名前を変更。車両の歴史・技術に特化した展示となりました。なお、これら本館のブースは、4月に展示が開始されています。

目の前の200系が動き出すように見える「新幹線スコープ」。現役当時の200系の迫力を体感できます
目の前の200系が動き出すように見える「新幹線スコープ」。現役当時の200系の迫力を体感できます
中央線の前身である甲武鉄道が製造した車両の末裔「ハニフ1」は、プロジェクションマッピングにより、かつて都心で活躍していた時代が再現されました
中央線の前身である甲武鉄道が製造した車両の末裔「ハニフ1」は、プロジェクションマッピングにより、かつて都心で活躍していた時代が再現されました
2階の歴史展示は、新館の歴史ステーションに集約。車両ステーションの展示は、模型も交えて解説する車両中心の歴史展示となりました
2階の歴史展示は、新館の歴史ステーションに集約。車両ステーションの展示は、模型も交えて解説する車両中心の歴史展示となりました
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