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2019年の鉄道を振り返る[車両・列車編]

特急型車両の動き

中央本線では、2018年にデビューしたE353系の追加投入が進み、定期列車は全てE353系に統一。前年で引退したE351系に続き、E257系も中央本線の定期列車から撤退した。特急列車の車種統一にあわせて「スーパーあずさ」の列車名は廃止され、「あずさ」「かいじ」と、新たに設定された富士急行線直通特急「富士回遊」の3系統となった。

JR四国では、振り子式気動車の2700系が8月にデビュー。1989年にデビューした振り子式気動車、2000系の置き換えが始まった。近年の車体傾斜式車両は空気ばねを使用するものが主流で、JR四国でも空気ばね式の気動車、2600系を開発していた。だが、曲線区間が連続する土讃線では、空気ばねを連続作動させるには条件が厳しく、2600系の量産を断念。営業列車に投入された車両としては、2001年デビューのキハ187系以来の振り子式車両となる2700系が開発された。

西武鉄道では、3月に001系「Laview」がデビューした。次世代のフラッグシップトレインを目指した設計で、銀無垢の車体や、肘掛け下まで伸びる大きな窓など、これまでにないデザインが注目された。2019年度までに7編成が導入される予定で、池袋線の特急「ちちぶ」「むさし」で運用する10000系「ニューレッドアロー」は、順次置き換えられる。

かつて「あさま」などで活躍していた189系は、篠ノ井線の「おはようライナー」廃止により、3月に営業運転を終了した。碓氷峠を越える特急列車向けに製造された車両だが、1997年の長野新幹線(当時)開業後は、その活躍の場を移した。中央本線用となった編成は、「あずさ」などに投入されたものの、2018年の「ホリデー快速富士山」用車両置き換えによって、定期的な運用を喪失。古巣の長野車両センターに残ったN102編成も、2015年3月以降の定期運用は、塩尻~長野間のおはようライナーのみとなっていた。189系の引退で、国鉄型特急車両による定期運用は、185系による「踊り子」と、381系による「やくも」の2列車のみとなる。

明と暗の新幹線

2019年現在は最高営業速度が時速320キロの新幹線。2019年は、さらなる速度向上に向けた取り組みが始まった。JR東日本は、試験用の新幹線車両E956形「ALFA-X」を、5月に導入した。ALFA-Xは、時速360キロでの営業運転実現に向けた車両で、従来のE5系よりも先頭部の「鼻」が長くなっている。また、性能の向上だけではなく、メンテナンスの革新や、将来の自動運転実現に向けた研究も実施される。将来のE5系に代わる次世代車両の開発に向け、東北新幹線にて深夜に走行試験が進められている。

上越新幹線では、3月にE7系の運用が始まった。当初は東京~越後湯沢・新潟間の5往復に投入され、老朽化したE4系などを順次置き換え、2022年度末には上越新幹線の全列車をE7系に統一する予定となっていた。

しかし、10月に襲来した台風19号の影響で千曲川が氾濫し、長野車両センターに留置されていたE7系・W7系10編成が浸水。JR東日本とJR西日本は、被災車両全車の廃車を決定した。この被害によって、北陸新幹線のダイヤに影響が出たほか、上越新幹線へのE7系投入計画も変更。北陸新幹線のダイヤ復旧を優先し、上越新幹線向けに製造していたE7系は、北陸新幹線へ転用されることとなった。

2019年に登場した一般型車両

東京メトロは、2月に丸ノ内線の新型車両、2000系の営業運転を開始した。丸ノ内線の「丸」をモチーフに、車体や側面窓、車内などに丸いデザインを各所に取り入れている。また、真っ赤な車体には丸ノ内線伝統の「サインウェーブ」を描いており、従来車両の面影が見られる。7月には方南町駅が6両編成の入線に対応し、同駅への乗り入れも開始された。

相模鉄道は、4月に12000系の営業運転を開始した。11月に開業した「相鉄・JR直通線」での運用に対応した車両で、JR東日本のE233系をベースとしながらも、「YOKOHAMA NAVYBLUE」で塗装した外観や、グレー基調でまとめた内装など、相鉄グループが進める「デザインブランドアッププロジェクト」のコンセプトを盛り込んだ意欲的な車両となっている。デビュー当初は相鉄線内のみでの運用だったが、11月からは相鉄・JR直通線を経由して、東京都内へも顔を出している。

9月には、新潟地区でGV-E400系がデビューした。ディーゼルエンジンを用いて発電し、モーターを回す電気式気動車で、気動車ながら電車との部品が共通化された車両となっている。今後も新潟地区への投入が進められ、新津運輸区のキハ40系は順次置き換えられる。

京成電鉄では10月、3100形がデビューした。2019年に投入された編成は、成田スカイアクセス線用の3150番台。外観は成田スカイアクセス線の路線カラーであるオレンジ色を基調に、浅草寺雷門や成田山新勝寺など、沿線各所のイメージが描かれている。車内では、一部に折りたたみ式の椅子が配置され、大型のスーツケースを置くスペースとして活用できるようになっている。

また、新京成電鉄では、12月に80000形がデビュー。京成3100形との共同開発によって生まれた車両で、車体設計は共通だが、内装や機器面など、京成電鉄とは違った点が多々ある形式となっている。デビュー時点では新京成線のみでの運用だが、将来的には京成各線への乗り入れも予定されている。

名古屋鉄道では、12月に9500系を導入した。2004年登場の3300系をベースとした設計だが、外観デザインが変更されている。なお、9500系の導入により、2ドア転換クロスシート車両の5700系・5300系が置き換えられ、名鉄の一般型2ドア車両は消滅した。

2019年に引退したベテラン車両たち

6月、大阪環状線では、201系のラストランが行われた。同線の201系は、JR京都・神戸線への321系投入によって転属した車両で、大阪環状線成立以来3代目となる形式。新型車両である323系の投入により、順次置き換えが進み、2017年に引退した103系に続き、6月に全編成が大阪環状線より撤退した。201系の撤退により、大阪環状線の普通・快速列車は、全てが3ドア車両での運転に統一された。なお、大阪環状線から撤退した201系のうち、一部の編成は吹田総合車両所奈良支所に転属。おおさか東線や大和路線などに活躍の場を移している。

同じく6月には、京浜急行電鉄の800形が引退した。前面デザインから「だるま」の愛称で親しまれていた800形。3ドア車が基本の京急において、800形はラッシュ時対策のため、1967年にデビューした700形に続き、4ドア車両として1978年にデビューした。この800形の引退により、関東大手私鉄の一般型車両において、片開き式の客用扉を持つ車両は全滅したことになる。

10月には、和歌山線・桜井線への227系投入により、105系が両線の定期運用から退いた。105系は、新造された3ドア車と103系から改造された4ドア車の2タイプがあったが、和歌山線・桜井線で主に活躍していたのは後者。特に、かつて常磐緩行線で活躍していた103系1000番台の面影を残す車両は人気が高く、注目を集めていた。定期運用終了後、4ドア車は多くが廃車回送されたが、現在も一部車両が残存し、紀勢本線の紀伊田辺~新宮間などで運用に就いている。

JR貨物では、同社初の新形式機関車であるEF200形が、3月に運用を退いた。ハイパワーな性能を持つ意欲的な設計の機関車として、1990年に試作機が登場し、1993年までに全21両が製造されたが、さまざまな制約により大規模な投入は見送られ、主力直流機関車の立場は後続のEF210形が担うこととなった。

車両の引退ではないが、JR四国が保有した121系は、7200系への更新工事の進捗により、2月に形式消滅となった。足回りの老朽化が進んでいた121系は、2016年より更新工事が進められており、最後に残ったR02編成も、2月に更新工事を終えて出場。車体外観こそ大幅な手入れはないが、機器類は全くの別形式と言っていいほどの進化を遂げた。

保存車両の引退も

2019年は、動態保存車両の引退も相次いだ。

3月には、長崎電気軌道の150形151号、700形701号、1050形1051号の3両がさよなら運転を実施し、営業運転を終了。7月には、伊豆急行開業時に導入された100系最後の1両、クモハ103が営業運転を終了した。11月には、真岡鐵道のSL列車「SLもおか」けん引機として活躍していたC11形325号機が、真岡鐵道での営業運転を終了。東武鉄道への譲渡のため、12月にJR東日本の大宮総合車両センターへと回送された。

長崎電気軌道の3両と真岡鐵道C11形の引退は、運行費用がかさむことが理由。旧型の車両を運行する場合、部品が枯渇しているなどの負担が多く、運行経費も現代の車両より多く必要となる。また、伊豆急行のクモハ103の場合は、車両の全般検査が迫っていたことに加え、伊豆急行線で導入が進む新型の保安装置への対応が困難だったことも、理由に挙げられる。

動態保存ではないが、秩父鉄道は5月から7月にかけて、三峰口駅横の「秩父鉄道車両公園」に保存していた車両を、全て解体撤去した。また5月には、高松琴平電気鉄道が、動態保存車両を2020年に全て引退させると発表している。状況はさまざまだが、保存車両に対する各社の厳しい現状を感じさせる年となった。

着席サービスとライナー列車

「京王ライナー」の運転開始や「Q SEAT」の設定など、着席サービスの拡大が見られた2018年だが、2019年もこの傾向は続いた。

JR西日本では、3月に新快速での有料着席サービスとして「Aシート」を導入した。既存車両を改造し、在来線特急並みのリクライニングシートを設置。12両編成のうち1両に設定している。現在は1日2往復のみの運転で様子見段階のようだが、需要次第で設定列車の増加が期待される。

京浜急行電鉄では10月より、土休日の一部快特で「ウィング・シート」の設定を開始した。これまで平日朝夕にライナー列車「ウィング号」を設定していたが、日中に定期的な着席サービスを提供するのは同社としては初めてのことだった。

一方で、JR東日本においては、通勤ライナー列車の運行形態見直しが進められた。中央線系統では、特急車両の置き換えにあわせて、3月に「中央ライナー」「青梅ライナー」が廃止。あらたに特急列車として「はちおうじ」「おうめ」が設定さた。特急列車となったことで中央線特急「あずさ」「かいじ」と取り扱いが統一されたが、一方でライナー時代に比べ、料金面で実質的な値上がりとなる面もあった。

総武線系統では、「ホームライナー千葉」が、快速列車の増発により、3月に廃止された。東京・新宿~千葉間で夕方のみ運転されていた列車で、各列車とも満員に近い状態で運転されるなど、根強い人気があった列車だった。

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