鉄道コム20周年記念 × アサヒカメラ2019年2月号 合同企画

いまさら聞けない、鉄道写真 Q&A

懐かしの鉄道写真コンテスト 懐かしの鉄道写真コンテスト

(Q)

スマートフォンで長い編成を撮る方法は?
(東京都・MKの小部屋さん)

助川スマホのカメラは広角なので、標準レンズや望遠レンズになるアタッチメントを買えばいいんじゃないですか。全部を広角で収めようとすると、列車の頭は小さくなるし、写真としても面白くないんです。でも、それは電車の端から端まで全部入れようとして、しかも電車に寄るからなんですよね。離れて標準・望遠レンズで撮ればいいと思います。

櫻井スマホで作品を撮ろうというのはちょっとね。たとえば動画で撮る。どんなに長い編成でも大丈夫ですよ。

助川あれ? この写真は7両?

櫻井あ、本当だ。

助川この写真の問題は連写ができないためにシャッターチャンスを選べないことですね。列車の位置がまだ奥過ぎます。

櫻井東大コンプレックスではない?(笑)

助川駅ホームでの撮影のコツとしてはしゃがむこと。ローアングルにすることで迫力が出ます。スマホの利点は網があっても隙間からレンズを向けられることなんですよね。細かい網でもいけます。フェンスが多いですからね。

(Q)

夕焼けを撮影したいのに車両の色がうまく出ません。
(三重県・田中宏樹さん)

助川難しいですよねえ。

櫻井これはもうちょっといい場所を選んだほうがいいですね。この光線状態だったらもっといい写真になります。僕ならローアングルを狙って川岸ギリギリまで行きます。

助川自分もローアングルで見上げ、画面に空を多く入れますね。あと、明暗差をなくすためにハーフNDフィルターを使いますね。フィルターで空の露出を落とし、ニコンではアクティブDライティング、ソニーやキヤノンではオプティマイザーというカメラ内蔵の明暗差を和らげる機能を使う。そうすると車体の色は少し出ますが、このケースではシルエット狙いでいったほうがいいでしょう。

櫻井あるいはオレンジのフィルターをかけますね。太陽光モードで。どうしても動けない場合はこの富士山みたいな屋根をカットします。電柱も要らないですが。もっとも近鉄であれば本数は多いので、この光線状態で何パターンも撮れるはずです。

助川「もっと精進を」ですかね(笑)。

櫻井いっぱい撮ってください。この状況なら僕は真っ暗になるまで撮り続けますよ。

助川自分もそうです。太陽が落ちてからも勝負は続きますから

――このほか「プロ写真家と呼べるために必要なことは?」という質問もあります。

櫻井それで飯が食えるかどうかですよ。

助川はい、以上です(笑)。

(Q)

線路脇で撮るときに置きピン、AF追従モードのどちらがいいのでしょうか?
(東京都・あずさ55号さん)

櫻井置きピンは一発勝負。追従モードはうまくいけば何枚でも撮れます。二つに一つ、一枚でいいから傑作が欲しいのか、何枚も欲しいのか。その辺で判断は変わります。

助川自分の場合はレンズによります。標準なら置きピン、望遠なら追従モード。望遠レンズだと長く捉えていられるので連写が効いてくるんです。

――よく使うレンズは?

櫻井オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROです。単焦点でいちばん好きなのは35mm判換算で28mm。以前、イタリアで予備ボディー以外全部盗まれたとき、28mmの単焦点レンズで1週間乗り切りましたから。僕にとっては標準レンズ(笑)。

助川編成写真は標準~望遠、風景なら広角。もっとも使うとなるとニコンAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRですかね。焦点距離24~70mmの標準ズームはあまり出番がないかもしれません。編成だと70~200mmも多いですね。パースが自然に見えてきれいに撮れるんです。長編成の後部まで大きく見える望遠の圧縮効果がいい。新幹線は広角から標準、斜め45 度から狙います。

櫻井I Love 28mm(笑)。

助川「28mm縛り」はすごいですね。

櫻井今はズームの時代だから28mm相当前後のレンズを使っていますが、24mmだと車体が歪んで見える気がするんです。本当は35mmあたりがいいのかもしれませんが、僕は35mmが苦手なんです。最初に買ったニコンFのレンズが28mm、50mm、135mmだったんです。いろんなプロの写真家に単焦点一本で好きなものを撮るという企画があれば面白いと思いますよ。

助川そういえば「800mm一本で撮ってきてください」と依頼されたときはビビりましたね。

櫻井僕も300mmでと言われたときは本当に大変だった。35mm判換算で600mm相当ですからね。

助川28mmが標準なのに(笑)。

(Q)

鉄道と花の写真を撮る際、どちらにピントを合わせればいいですか?
(埼玉県・ブルーウィングさん)

助川これは趣味の問題。ただ、うちの事務所としては電車にピントを合わせます。

櫻井鉄道写真であれば当然鉄道でしょう。

助川イメージっぽい作風で、電車のライトだけ見せたいときは花にピントを合わせます。さっきの近鉄特急「しまかぜ」の写真も、電車だけに合わせればよかったんですよね。

櫻井そう。ピントが合うということはうるさいということでもあります。ボケは写真だけの特性。絵画の世界ではあまりありませんから。

助川ボケは重要です。

櫻井だから、ポートレートと鉄道写真って似ているんです。被写体への愛情もそう。間違っても顔に電線をかけないじゃないですか。

助川気配りなんですよ。なんでも盛り込もうとするのは風景写真でもダメですからね。

(Q)

夜の風景や地下鉄駅構内で逆光状態の際、白飛びさせない方法を教えてください。
(新小岩操車場さん)

櫻井これは単なる露出がアンダー。適正露出で撮ってください。

助川質問の条件では明暗差が大きすぎて、画像合成しない限りヘッドライトを白飛びさせず車体の露出を出すことは不可能。ヘッドライトの影響でなるべくゴーストやフレアを出さないよう、いいレンズを買うことに考え方を変えた方がいいです。ありがちなのがいいボディーは買うんだけど、レンズが良くないパターンです。

(Q)

一般人の写り込みの処理方法を教えてください
(栃木県・墜落さん)

櫻井一般人はいてあたりまえなんだから何とも思わないですね。

助川それを生かした写真を撮ればいいんです。

櫻井そう。お客さんのシルエットを生かすとか。旅客あっての電車ですから。

助川究極的には、撮影後のデジタル処理で無き者にするという方法もあります(笑)

(Q)

先に到着した撮影者が目の前でウロウロした場合、注意したほうがいいですか?
(次世代撮り鉄さん)

助川そこは「どういうふうに撮られますか?」とたずねます。構図などを聞いてそれに合わせて対処します。聞かれた相手も「撮り方を決めなくちゃ」と思うでしょう?

櫻井僕はこちらの撮り方を細かく伝えます。僕が先にポジションを取った際には必ず伝えます。

助川ウロウロしている撮影者って、だいたい撮り方に悩んでいる人ですよね。

櫻井たまにコミュニケーションができない人がいますけどね。

助川その場合もデジタル処理で無き者にします(笑)。後で消せると思えば、トラブルにもならないじゃないですか。

櫻井どんなことでも注意されると嫌なもんですからね。

助川大切なのは自己中心的にならないこと。

櫻井「みんなの電車」です。

助川また名言が(笑)。ホント、「俺の電車」にならないよう要注意です。

(Q)

息子が電車にハマり、一緒に巡って鉄道撮影していますが、車両の前で記念写真を撮っていると、「邪魔だ」「どけ」などと言われることがあります。どうしたらいいでしょうか?
(東京都・撮り鉄のママさん)

櫻井「みんなの電車じゃないんですか?」と言ってやればいいんですよ。

助川そのとおり。撮り鉄は記念列車や電車のラストランを駅のホームで撮らないほうがいいと思いますよ。混乱だけでいい写真はまず撮れないですし、一般客の迷惑になる可能性もありますからね。

櫻井はたしてどれだけの人がちゃんと切符を買っているんだろう? お金は落とさないといけないと思いますよ。

助川いい写真を撮りたいなら駅のホームじゃなく、外で撮るほうがいいと思いますね。

櫻井質問者はiPhoneで撮っているんですね。子どもの記念写真だ。

助川撮り鉄側には寛大な気持ちを持って欲しいですね。昔、JR品川駅のホームでお召し列車牽引機のEF5861とお座敷列車を展示するイベントがありました。子どもがEF5861の前で記念写真を撮ろうとしたら、おじさんが「どけよ!」と大声をあげた。つい自分もおじさんに怒りました。「いいじゃないですか! 子どもがどういう気持ちになるか考えたことがありますか!」と。おじさんは逃げちゃいましたけど、撮影に夢中になると周囲が見えなくなるんでしょうね。ここは親子に写真を撮らせてあげて当然。何なら記念に親子の写真を撮ってあげるぐらいの余裕が欲しい。むしろ親子の姿と車両がうまくハマれば、コンテストでの受賞だってありえますよ。

櫻井そうそう。いい絵になると思いますよ。

(Q)

三脚や脚立で撮る人、敷地に入って撮影する人を処罰してください。
(千葉県・吉田さん)

――お二人は裁判官じゃないんですが・・・・・・。

助川禁止の場所は当然として、地主さんや周囲の方に迷惑をかけなければ脚立使用も良いと思います。ただ、最近は「乗り鉄」のマナーが問題になった事案もありましたね。地下鉄千代田線で6000系がなくなるときに、みんな1両目にぎゅうぎゅう詰めになって混乱したんです。原因は6000系が駅に着いた時に先頭の写真を撮りたかったけど、停車時間がわずかなため、駅で降りてすぐ撮れるよう1両目に集中して乗車したからだったとか。混乱するのは目に見えているので、乗るなら撮影をあきらめる。撮影するなら乗るのをあきらめるくらいの覚悟は必要です。

櫻井最近はカメラを持っていない乗り鉄はほとんどいません。

助川撮り鉄も乗り鉄も共通の問題があることを認識しないといけません。察しと思いやりが何より大切です。

櫻井だから「みんなの電車」なんですよ!

アサヒカメラ2019年2月号

【特集】鉄道写真大百科

百戦錬磨のプロの写真家はどう対処するのか? 目からウロコのアイデアが満載です。

  • ●英国、スイス、タイに学ぶ鉄道写真快適撮影術 櫻井 寛
  • ●ミャンマー鉄道探訪記 日本の車両に出合う旅 米屋こうじ
  • ●6×6判二眼レフで撮る鉄道の「いきづかい」 吉永陽一
  • ●フルサイズミラーレス機 ニコンZ 7で撮る鉄道写真 助川康史
  • ●鉄道模型撮影の世界 より実物のように撮るには 金盛正樹
  • ●軽便鉄道を追っていた頃 諸河 久
  • ●いまさら聞けない鉄道写真Q&A 櫻井 寛、助川康史

ほか

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櫻井 寛(さくらい・かん)

1954年、長野県生まれ。鉄道員にあこがれ昭和鉄道高校に入学したが、在学中に鉄道写真にみせられ、日本大学芸術学部写真学科に進む。卒業後、出版社写真部勤務を経て、90年にフォトジャーナリストとして独立。93年、陸路海路のみで88日間世界一周。94年、『鉄道世界夢紀行』で第19回交通図書賞を受賞。近著『ぞっこん鉄道今昔』(朝日新聞出版)など著書多数。日本写真家協会会員、東京交通短期大学客員教授。

助川康史(すけがわ・やすふみ)

1975年生まれ。秋田経済法科大学法学部卒業。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。鉄道車両が持つ魅力だけでなく、鉄道をとりまく風土やそこに生きる人々の美しさを伝えることをモットーに日本各地の線路際をカメラを手に奮闘中。「鉄道ジャーナル」「鉄道ダイヤ情報」などの鉄道趣味誌や旅行誌の取材をはじめ、「JTB時刻表」「JR時刻表」の表紙写真を手がける。日本鉄道写真作家協会理事。