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上位機種も超えた!? ニコンの「ニュースタンダード」機「Z5II」が登場! 鉄道撮影での実力は?

2025年5月3日(祝) 鉄道カメラマン 助川康史

手ごろな価格で鉄道撮影を難なくこなす! 「ニュースタンダード」機「Z5II」

ニコンは4月25日、新型のミラーレス一眼「Z5II」を発売しました。

ニコンの「ニュースタンダード」機「Z5II」、鉄道撮影での実力は?
ニコンの「ニュースタンダード」機「Z5II」、鉄道撮影での実力は?

2021年に発売された「Z9」、2023年に発売された「Z8」、そして、2024年発売の「Z6III」に「Z50II」と、ニコンのミラーレス一眼は「第2世代」とも言える、新しい世代に入りました。

この4機種に搭載されているのが、ニコンが誇る高性能画像処理エンジン「EXPEED7」!この画像処理エンジンのおかげで、AFシステムや画質などが飛躍的に進化し、それ以前の機種の性能を大きく凌駕する仕上がりとなっています。

そして、2024年7月のZ6III発売直後から、カメラ&写真趣味界では「次に出るニコンフルサイズ(FXフォーマット)ミラーレス一眼の『Z』は何か?」と話題になっていました。同年12月にはAPS-Cサイズ(DXフォーマット)機のZ50IIが発売され、「いよいよ次はフルサイズ(FX)」と期待も膨らみます。そしてそれから約5か月後の2025年4月、ついにZ5IIはベールを脱いだわけです。

先述したEXPEED7を装備するZシリーズの高性能&高機能を目の当たりにしたユーザーや業界人は、Z5IIの仕上がりにも注目しましたが、それは期待以上の性能を有したカメラとして発表されたのです。

そして、さらに注目されたのは、その価格。近年のミラーレス一眼は、メーカーを問わず高性能化&円安のせいで、価格が高騰……。特にフルサイズ機は、若い人には簡単に手の届かないカメラとなってしまいました。しかし、Z5IIは税込25万8500円(ボディのみ、発売時のニコンダイレクト価格)で手に入る、手ごろな価格のフルサイズミラーレス一眼として発表されたのです。

「まだ高い!!」ですって? それはこれから記載するZ5IIの性能をご覧頂ければ、納得すること間違いなし! それでは、Z5IIの性能や機能を、鉄道写真の作例と共に解説していきましょう。

Z9やZ8を超えた!? 被写体検出(乗り物)&高精度AF

最初の解説から刺激的な見出しですね(笑)。それもそのはず、ニコンZ9といえばニコンZシリーズのフラッグシップ機であり、Z8はZ9の性能を惜しげもなく詰め込んだハイエンド機です。どちらもあらゆる撮影をこなす高性能機で、私のZ9は今もお仕事撮影で活躍する主力機の一つでもあります。

そのZ9ですが、以前のインプレッション記事で「モンスターマシン」と私が称した通り、特にAFシステムの大幅な進化で、それまでのZシリーズとは別格のAF性能に仕上がっていたのです。まさに新Zシリーズの幕開けを告げる、素晴らしい機種です。

2021年に発売された、ニコンのミラーレス一眼フラッグシップ「Z9」。今回のZ5IIは、Z9を超えた部分も……!?(撮影:編集部)
2021年に発売された、ニコンのミラーレス一眼フラッグシップ「Z9」。今回のZ5IIは、Z9を超えた部分も……!?(撮影:編集部)

そのAFシステムでも特筆すべきは、「9種類の被写体検出」です。この被写体検出モードには列車も含まれていて、列車の動きに応じてピントを合わせ続けるAF-C(コンティニュアスAFサーボ)撮影時では抜群の追従性を獲得したことによって、今までテクニックが必要だったピント合わせを過去のものにしてしまいました。ピント合わせにヤキモキすることなく、より撮影に集中できる土台が出来上がったのです。

話は長くなりましたが、この9種類の被写体検出(乗り物)が、Z5IIにも装備されたのです。これによって、「置きピン」がやりにくい場面、すなわち、望遠~超望遠レンズでの撮影や、ローアングル撮影などでも、列車の顔を常にピント合わせした状態で、高速連写でも撮影可能となったのです!

私が特にお気に入りの設定が、「被写体検出(乗り物)+3D-トラッキング」です。使用時は、あらかじめ少し線路の奥に3D-トラッキングのAFポイントをセットします。やがてそのポイントに列車が近づくと、被写体検出が働いて3D-トラッキングとは別の白枠が出ます。これこそが列車を認識した証!あとはシャッターボタン半押しや「AF-ON」ボタンを押してAFを作動させます。すると3D-トラッキングの枠は大きくなり、AFボタンから指を離さない限り、列車の先頭部を追従し続けます。他にもAFポイントにはワイドエリアAF系やオートエリアAFがありますが、私が使った限り「被写体検出(乗り物)+3D-トラッキング」の組み合わせは最強です!!

奥から手前へと列車がやってくる場面でも、被写体検出機能でAFが列車にピッタリ追従!
奥から手前へと列車がやってくる場面でも、被写体検出機能でAFが列車にピッタリ追従!

さらに、Z5IIはZ6IIIと同じ、最大-10EVの暗さでもAF検知を可能としています。Z9やZ8は-9EVまでのAF検知とされていますので、単純な話、暗所でのAF性能はZ9やZ8よりも上を行くということになるのです。体感的なものではありますが、確かに日没後の暗がりで編成写真を撮ろうとすると、従来のZ5をはるかに超えたAF能力を発揮。今まで難しいだろうと感じていた暗いシーンでも、被写体検出(乗り物)とAFがしっかりと列車を捉えている感覚があります。

Z5IIは-10EVの暗さでもAF検知が可能。上位機種のZ9やZ8を凌駕しています
Z5IIは-10EVの暗さでもAF検知が可能。上位機種のZ9やZ8を凌駕しています

また、先述の被写体検出も、進化を遂げた最新バージョンを装備。鉄道撮影とは直接関係はないですが、被写体検出で「飛行機」や「鳥」が専用性を持って分けられているのもその証拠。AF能力の高さで「Z9やZ8を超えた!?」と感じてしまうのです!

デジタル一眼レフのフラッグシップモデル超え!? Z5IIは「高速連続撮影」も妥協無し!

続いて、鉄道撮影で気になるのは高速連続撮影、いわゆる高速連写の能力ですね。特に、編成写真のように高速で走る列車を大きく撮影する構図では、わずかなシャッタータイミングの違いで画面のバランスが大きく変わり、作品に大きな影響を与えます。

Z9やZ8は、通常撮影の「高速連続撮影(拡張)」を使用すると、RAWモードは秒間約20コマ撮影できます。Z6IIIは同様に、電子シャッターでRAWモードは秒間約20コマ、メカシャッターのRAWモードでは秒間約14コマが基本です。

では、今回のZ5IIはどうかというと、私が確認した限り、メカシャッターでの「高速連続撮影(拡張)」でRAW、またはRAW+JPEGでは秒間約11コマ、JPEGのみであれば秒間約14コマになります。上位機種と同性能とはいきませんが、Z6IIIに近い高速連続撮影ができます。

連写性能が存分に発揮される新幹線の撮影。Z5IIでは、RAW撮影時は秒間約11コマ、JPEGのみの撮影時は秒間約14コマで連写可能です
連写性能が存分に発揮される新幹線の撮影。Z5IIでは、RAW撮影時は秒間約11コマ、JPEGのみの撮影時は秒間約14コマで連写可能です

ここで私は「あれ?」と思いました。RAW撮影の秒間11コマはニコンFマウントのフラッグシップ機であるD5(2016年発売)の秒間約12コマに肉薄していて、JPEGのみ撮影の秒間約14コマは同じくフラッグシップ機のD6(2020年発売)と同じ数値(共に連写時でもAF/AE追従状態の場合)になります。要するに、ニコンZ5IIは「スタンダード機」と銘打ちながら、5~10年前のフラッグシップ機と同等の連写性能を持っているのです!

秒間約14コマという連写性能は、「D6」と同じ数値(ただしD6は同性能でRAW撮影可)。スタンダード機でありながら、かつてのフラッグシップ機と同じ性能を実現しています
秒間約14コマという連写性能は、「D6」と同じ数値(ただしD6は同性能でRAW撮影可)。スタンダード機でありながら、かつてのフラッグシップ機と同じ性能を実現しています

なお、通常の撮影では、後のレタッチも考えて秒間11コマのRAWで撮影し、高速で走る新幹線や「見かけの速度」が速い標準レンズでの在来線撮影では秒間14コマのJPEGで撮影すると考えるのも良いでしょう。ベストバランスな編成写真が撮れる可能性が格段に上がります。

ちなみに、JPEGは色数が少なくなっているのでレタッチに向きませんが、ここでその対処法を一つ。適正露出で撮ることはもちろん、画像調整モードのピクチャーコントロールをスタンダードやニュートラルにして、コントラストと彩度の柔らかい画像を撮影してください。そして撮影後にその画像を元にレタッチをするのです。RAWに比べてレタッチの柔軟性は低いですが、画像が柔らかければ彩度やコントラストを上げて画像をはっきりさせても、比較的「色破綻」が少ないレタッチが可能になります。

色やコントラストが柔らかい画像は、その分色情報が多いのです。よって、濃い画像から柔らかい画像にレタッチすることは難しいですが、その逆は元画像にトーンが残っているおかげで、綺麗にレタッチができる可能性が上がるのです。是非お試しを!!

なお、さらなる高速連続撮影が可能な「サイレントモード」の電子シャッターや、より高速連写ができる「ハイスピードフレームキャプチャー」もありますが、編成写真や列車をやや大きく撮影する時は、あまりお勧めしません。Z5IIは裏面照射型CMOSセンサーのために読出し速度が遅く、どうしてもローリング歪みが出やすくなっています。さらに高速の連写をしたい場合は、高速読出しの積層型CMOSセンサーを搭載したZ9や、部分積層センサーを搭載したZ6IIIなどの上位機種を検討しましょう!

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