東武鉄道では、3月8日に新型車両「80000系」の営業運転を開始します。それに先立ち、2月10日、この新型車両が報道陣に公開されました。

これまで6両編成で運転されてきた野田線(東武アーバンパークライン)ですが、今回登場する同線向けの80000系では、従来よりも1両減った5両編成を組成。さらに、80000系導入以降も残る60000系でも、編成を順次6両から5両へと短縮していく予定です。
野田線「5両編成化」の第一陣となる80000系。両数の変更だけでなく、接客設備でも、機器面でも、見どころが多い車両です。その中身をご紹介しましょう。
「エッジが際立つ」外観デザイン
まずは外観から見ていきましょう。
80000系の車体は、同社の一般型車両では50000系以降で標準となっているアルミ製。ただし、野田線の先輩である60000系(日立製作所製)と異なり、80000系は近畿車輛製となりました。東武では、日比谷線直通用の70000系で近畿車輛製車両を初採用しましたが、これは東京メトロとの共同設計の車両でした。今回の80000系は、東武単独の設計の車両としては、初の近畿車輛製車両となるようです。

外観デザインは、60000系と同様に、野田線のカラーリングである「フューチャーブルー」「ブライトグリーン」を配置しました。ただし、ブライトグリーンを扉脇に設置し、扉位置が一目でわかるようなデザインだった60000系に対し、80000系は両色が車両肩部の配置となりました。扉位置がわかるように、という点では、野田線ではホーム柵の設置が進められているため、それほど重要ではなくなりつつあるのかもしれません。

先頭部は、エッジが際立ったデザインとなり、先進性を表現したといいます。また、従来車では先頭部の帯・色は青色のみでしたが、80000系ではフューチャーブルーとブライトグリーンの2色となっています。先頭部の非常扉の窓は、従来車よりも低い位置まで伸びており、背が低い子どもでも前面展望を楽しめる設計としたといいます。

「ただいま」って言いたくなる車内 子ども連れ利用者への配慮も
車内のテーマは「リビング」。「『ただいま』って言いたくなる車内」を目指し、乗車した瞬間に気持ちが安らぐような、落ち着いた空間を表現したデザインとなりました。座席モケットが暖色系となり、床面もリビングのようなデザインに。また、車端部の壁にも装飾が施されており、従来の車両とは雰囲気が異なります。

非常口扉の窓は下に拡大されたと先述しましたが、車内側でも同様に、子どもが前面展望を見やすいよう配慮されました。乗務員室後ろの扉にある手すりは、子どもがつかみやすいような設計に。形は四角形で、上側は9歳、下側は2歳の子どもの身長に対応した高さとしているといいます。


4号車(柏方から2両目)には、車端部に「たのしーと」というスペースが設けられました。

前向きにも横向きにも座れるような座席を配置することで、ベビーカーを利用する親子連れなどが使いやすいようになっています。また、この部分は子ども部屋をイメージしたデザインとなっており、車内外とも、壁に水玉模様が描かれています。


このように、子ども連れの利用者に配慮した設計とした背景には、野田線を取り巻く環境の変化があります。
東武によると、近年の野田線沿線は、子育て世代が多いのだとか。東武としても、さらに同線沿線へ子育て世代を呼び込みたいと考えているそうで、その一環として、80000系のような車両を投入することになったといいます。
扉上の「旅客案内表示器」は、17.5インチの2画面LCDとなりました。60000系では1画面のみだったため、1箇所あたりの情報量は増加します。ただし、60000系では全扉の上に設置されていたこの画面ですが、80000系では千鳥配置となっています。


なお、この旅客案内表示器のデータは、各車両間、および各車両内において、無線で伝送しているのだそう。車内の天井やドア上などに、送受信用のアンテナが設置されているのがわかります。従来は車内の電線経由でやりとりしていたデータを無線経由とすることで、車両ぎ装線の大幅な削減に寄与したといいます。
