鉄道写真撮影でわかるニコン「Z6III」の魅力
2021年12月に発売されたニコンのフラッグシップミラーレス一眼「Z9」と、2023年5月に発売されたハイエンドミラーレス一眼「Z8」。「ニコン新時代ミラーレス一眼」を感じさせる性能や機能を詰め込んだカメラで、両機とも発売直後から品薄になるほどの人気を集めました。そして、「Z8」発売直後から噂されていたのが、ミドルクラス機「Z6II」の後継機の開発。当時は不確定な情報ばかりでしたが、その情報を目にするたびに心が躍りました。
2024年6月、ニコンイメージングジャパン公式動画の配信で沈黙を破り、ついに「Z6III」が発表。そして7月12日、いよいよ発売となりました。
待望のZ6IIIの中身は、Z6IIの後継機でありながら、Z8やZ9の機能や性能を反映した「スーパーミドルクラス機」と言って良いほど。まさにニコンフラッグシップ機やハイエンド機の「魂」を受け継ぐ、新しいZ6系の誕生です!
私は、発売日に先立って、いち早くZ6IIIの実力を体感。そして「これは欲しい!」という祈りが届き、発売日当日早々に私の手元に届きました。そこで今回は、フラッグシップ機のZ9使いでもある私が、鉄道写真撮影で魅力を感じたニコンZ6IIIの性能と機能を5つ、ご紹介しましょう!
部分積層型CMOSセンサー搭載! ~気になるローリングシャッター歪みは~
ニコンのスーパーミドルクラス一眼レフであるZ6IIIは、従来機のZ6IIと比べて大きな進化を遂げています。その大きな進化の一番の理由が、「部分積層型CMOSセンサー」の搭載にあります。
今やミラーレス一眼やデジタル一眼レフでポピュラーとなったのが、「裏面照射型CMOSセンサー」です。このタイプのセンサーは、従来の「表面照射型CMOSセンサー」よりも受光効率が上がることでダイナミックレンジが広がり、高感度特性も大幅に向上しました。しかし、イメージセンサーから出た電気信号を回路領域に読み出すところでボトルネックが生じてしまい、読み込み速度が遅くなるために、特に電子シャッター使用時は動く被写体を撮影すると「ローリング歪み」が発生しやすかったのが問題でした。そのため、表面照射型や裏面照射型のデジタルカメラは、電子シャッターを装備しつつ、メカシャッターも採用したのです。
そして、その問題を解決したのが、Z9やZ8に搭載された「積層型CMOSセンサー」でした。今まで平面上で分かれていた画素領域と回路領域を重ねる(積層化)ことによって、画素領域の拡大による高画質化と、同じく回路領域の拡大による高機能化を達成しました。信号の読み出し速度が上がり、ローリング歪みが大幅に軽減されたことで、Z9やZ8は完全電子シャッター化を実現したのです。
これだけ高性能な積層型CMOSセンサーですが、難点が……。それはセンサーの値段が高価なこと。こればかりはどうしようもありません(笑)。
そこでZ6IIIでは、イメージセンサーの上下を積層型CMOSセンサー、中央部を裏面照射型CMOSセンサーという、積層型と裏面照射型を組み合わせたようなセンサーである部分積層型CMOSセンサーを、世界で初めて搭載しました。読み出し速度は完全な積層型CMOSセンサーには及ばないものの、裏面照射型CMOSセンサーのZ6IIと比べると、読み出し速度は約3.5倍と一気に速くなりました。電子シャッターがより実用レベルになったのです。
私も編成写真でテスト撮影をしました。時速100キロの列車を引き付けて標準レンズで大きく写す編成写真では、さすがにローリング歪みは出てしまいます。しかし、200mmクラス以上の望遠だとローリング歪みは全くと言っていいほどわからないレベルになります。標準域で撮影する場合は標準ズームレンズを使ったズーミング流しの応用的に高速シャッターで撮影したり、それこそメカシャッターで撮影すれば問題ありません。ちなみに、私のZ6IIIは、電子シャッターをメインの設定にして、場合によってはメカシャッターに切り替えるようにしています。
また、メカシャッターの使用回数が減れば、その分、シャッターユニットの寿命が延びるというもの。これはユーザーにとっては非常に有益なことです。そして何より、電子シャッターに設定することの最大のメリットは、秒間最高で約20コマ秒の「超」高速連続撮影が可能になり、また1/16000秒の「超」高速シャッターが設定できるようになったこと。どちらも鉄道の「輝く一瞬」を切り取るのに大きな役割を果たしてくれます。
そして、このセンサーは、Z6IIIの価格抑制にも大きなメリットを生み出していることも忘れてはいけません。高性能と価格の両立を果たしたのが、Z6IIIの部分積層型CMOSセンサーなのです。