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205系に似たデザインの理由は? 機関車に代わる事業用車両「GV-E197系」「E493系」を詳しく見る

2022年5月29日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR東日本は27日、砕石輸送気動車「GV-E197系」と事業用電車「E493系」を報道公開しました。

E493系(左)とGV-E197系(右)
E493系(左)とGV-E197系(右)

GV-E197系とE493系は、これまで砕石輸送・散布作業や車両入換、回送列車けん引といった、機関車が必要な作業を置き換えるために開発された車両です。

機関車は、車両のけん引のためにハイパワーを有する一方で、独特の操作系や機器を持ち、運転時やメンテナンス時の取り扱いは、電車や気動車と大きく異なります。特にJR東日本は旅客会社のため、保有車両は電車や気動車が圧倒的多数。事業用とはいえ、少数の機関車を運用するにはデメリットがありました。

従来の機関車は、運用面や保守面で旅客車両と異なる取り扱いが必要でした
従来の機関車は、運用面や保守面で旅客車両と異なる取り扱いが必要でした

そこでJR東日本は、老朽化が進む機関車の置き換え用として、新しい機関車の製造ではなく、旅客用の電車や気動車をベースとした、GV-E197系とE493系を導入することとしました。

電気式気動車+貨車のGV-E197系

GV-E197系は、線路に敷く砕石「バラスト」を輸送・散布するための車両。これまでは機関車が貨車をけん引するスタイルでしたが、この形式では両端に動力車、中間に貨車(ホッパ車)を連結し、前後からホッパ車を動かします。そのため、従来では方向転換する際に機関車の位置を入れ換える際に必要だった「機回し」作業が、GV-E197系では不要となっています。

GV-E197系
GV-E197系

今回公開されたGV-E197系は、量産先行車であるTS01編成。ホッパ車のGV-E196形4両を、動力車のGV-E197形が両端から挟み込む6両編成です。

この編成番号は、編成中の6両をひとまとめにしたもの。実際の運用時には、動力車1両のみを使用したり、ホッパ車を2両や6両へ増減させたり、TS01編成のホッパ車を別編成の動力車がけん引したり、といった組み替えは、基本的には想定していないとのことです。

旅客車両のような箱形車体のGV-E197系ですが、動力車であるGV-E197形の車内に入ると、中央部には走行用の機器が詰め込まれています。一般的な旅客車両と異なり、他の車両をけん引するハイパワーが求められることから、必然的に機器類も大型化。その搭載スペースを確保するため、また室内に人や物資を搭載する必要性がないことから、室内を機器スペースとしています。

GV-E197系の室内
GV-E197系の室内
GV-E197系の室内
GV-E197系の室内

とはいえ、人を全く乗せられないというわけではなく、車端部には6人分の座席が向かい合わせで用意されています。

6人分の座席が設置されたスペース
6人分の座席が設置されたスペース

GV-E197系は、エンジンを回して発電し、その電力でモーターを動かして走行する電気式気動車です。この車両が配置されるぐんま車両センターでは、八高線用の従来型気動車であるキハ110系も在籍していますが、同センターの方に整備について聞くと、「エンジンと電車の装備の双方の知識が必要となるが、変速機などの気動車の部品がないので、故障といった面では有利なのでは」と説明してくれました。

運転台は、同社の一般的な在来線電車のように、左手ワンハンドルマスコンやモニター画面を設置したオーソドックスな構成。ですが、機関車のように他車両をけん引する車両のため、特有の装備も搭載されています。

GV-E197系の運転台
GV-E197系の運転台

JR東日本が新製した在来線車両では、ブレーキの圧力計は基本的に一つのみです。しかしGV-E197系では、このメーターが2つに。同社の標準的な電気指令式ブレーキを搭載するGV-E197系ですが、従来の自動空気ブレーキを搭載した車両のけん引にも、ブレーキ指令の読み替え装置を搭載することで対応。そのため、電気指令式ブレーキ用の圧力計と、自動空気ブレーキ用の圧力計の、2つのメーターを搭載しているのです。

左側の圧力計は、自動空気ブレーキ車のけん引に対応したもの
左側の圧力計は、自動空気ブレーキ車のけん引に対応したもの

運転台にはこのほか、ブレーキ周りの「漏洩試験」「牽引BP車ゆるめ」といったボタンも、けん引用車両特有の装備として設置されています。

「漏洩試験」「牽引BP車ゆるめ」といったけん引車用のボタン
「漏洩試験」「牽引BP車ゆるめ」といったけん引車用のボタン

ホッパ車であるGV-E196形は、おおまかなデザインは従来のホキ800形に類似していますが、塗装は白系に。砕石散布時にも、従来は線路の両脇へしか散布できなかったところを、GV-E197系ではレールの間への散布も可能になったといいます。

ホッパ車のGV-E196形
ホッパ車のGV-E196形

連結器は、動力車のGV-E197形については、2つの連結器に対応する双頭連結器を採用。ホッパ車では、一般的な電車と同様に密着連結器を搭載しています。

動力車は双頭連結器を搭載
動力車は双頭連結器を搭載
動力車とホッパ車の連結には密着連結器を使用します
動力車とホッパ車の連結には密着連結器を使用します

配給輸送などで活躍するE493系

E493系は、総合車両製作所新津事業所で製造された新車を首都圏へ回送する際や、引退した車両を解体設備のある車両基地へ輸送する際など、車両回送時のけん引を目的として開発された車両です。交流区間と直流区間の双方を走行できる交直流電車で、2両編成となっています。

E493系
E493系

E493系は、2両編成のけん引用交直流電車であることを除けば、基本的にGV-E197系と仕様が揃えられています。両運転台のGV-E197系に対し、E493系は片運転台。屋根上にはパンタグラフや交流機器が並びますが、デザインや車内配置、運転台配置は、基本的にGV-E197系と同一仕様です。

E493系の運転台
E493系の運転台
E493系の室内。構造自体はGV-E197系と同じですが、ブレーキリアクトル箱が設置されているなど、搭載機器は異なります
E493系の室内。構造自体はGV-E197系と同じですが、ブレーキリアクトル箱が設置されているなど、搭載機器は異なります

見た目は普通の電車のようなE493系ですが、けん引用車両のため、実はかなりの力持ち。11両編成の車両けん引を想定した設計で、E233系と同等のけん引性能を有しているのだといいます。

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