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貨物線沿線を歩く

旅客列車が走らない、東海道貨物線の川崎~鶴見間を見る

2021年5月15日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

鉄道の役割において、旅客輸送と並ぶ重要なものが、貨物輸送です。

この貨物列車が走る線路は、その多くが旅客列車と同じものですが、旅客列車のための線路容量を確保する必要がある大都市周辺や、旅客線から離れた位置へ建設された貨物駅へのアクセス、あるいは工場や港への引き込み線など、貨物列車専用の線路が設けられることもあります。

普段は乗ることはできなくとも、貨物輸送で重要な役割を担う貨物線。今回は、川崎・鶴見近辺における東海道貨物線の沿線を歩きます。

東海道貨物線は、東名阪を結ぶ重要路線である東海道本線のうち、東京圏で貨物列車用に設けられた別線の通称です。浜松町駅を起点として、東京側の貨物拠点である東京貨物ターミナル駅、川崎貨物駅、浜川崎駅、鶴見駅、横浜羽沢駅などを経由し、小田原駅までの区間を結んでいます。

東京貨物ターミナル駅を出発する貨物列車
東京貨物ターミナル駅を出発する貨物列車

東海道貨物線のうち、浜松町~東京貨物ターミナル間は「大汐線」という通称がありますが、この区間は現在は列車が設定されておらず営業休止中。2029年度の開業をめどに、JR東日本が「羽田空港アクセス線」(仮称)の整備を計画しています。

東海道貨物線浜松町~鶴見間と関係路線
東海道貨物線浜松町~鶴見間と関係路線

東京貨物ターミナル~川崎貨物~鶴見間は、現在も東海道本線の貨物列車が走る重要区間。特に東京貨物ターミナル~川崎貨物間は、東京側の貨物拠点駅を、かつての汐留駅から東京貨物ターミナル駅へ移転する際に整備された区間です。この区間は全線がトンネルとなっており、外部からその様子をうかがうことはできませんが、線路は東京モノレールの下を通り、昭和島や空港島、多摩川を潜り抜けていきます。

一方、川崎貨物駅や浜川崎駅は、川崎臨港地帯の貨物輸送を担うために建設された駅です。この近辺では戦前より貨物線が点在していましたが、先述の貨物拠点の移転の際、(浜川崎~)川崎新町~鶴見間の新線を整備し、多摩川を潜るトンネルと接続することで、東海道本線貨物列車のメインルートとなりました。

石油輸送の拠点、川崎貨物駅

さて、それでは実際に貨物線沿線を見ていきましょう。とはいえ、東京貨物ターミナル~川崎貨物間は線路を見ることはできないため、スタートは川崎貨物駅です。

川崎貨物駅は、京浜急行電鉄大師線小島新田駅の東側に所在する駅。東海道貨物線のほか、神奈川臨海鉄道の千鳥線、浮島線が乗り入れています。かつての川崎の臨港地帯における貨物営業は、浜川崎駅や大師線、廃止された川崎市電および専用線群が担っていましたが、1964年に塩浜操駅として現在の川崎貨物駅が開業してからはこちらの重要度が高まりました。

川崎貨物駅
川崎貨物駅
駅の北側を通る跨線橋からは、東京貨物ターミナル方面へ向かうトンネルが見られます
駅の北側を通る跨線橋からは、東京貨物ターミナル方面へ向かうトンネルが見られます

同駅から延びる神奈川臨海鉄道の路線は、いずれも貨物線です。南東に伸びる千鳥線は、主にタンクコンテナを輸送する貨物列車が走る路線。定期列車は1日3往復と、小規模なローカル線のような雰囲気です。

一方の浮島線は、川崎貨物駅の東、東京湾アクアラインの入口付近へ向かう路線。沿線にはENEOSの川崎製油所があり、ここから発送される石油輸送列車が多数運転されています。

浮島線を走る石油輸送列車
浮島線を走る石油輸送列車

また、川崎市の家庭ごみを浮島処理センターへ輸送する「クリーンかわさき号」も、梶ヶ谷貨物ターミナル駅との間で1往復運転。定期列車はあわせて1日12往復が設定されており、日中は1~2時間間隔で貨物列車が走る、臨海鉄道では高頻度ダイヤな路線の1つです。

家庭ごみを輸送する「クリーンかわさき号」(左)
家庭ごみを輸送する「クリーンかわさき号」(左)

これら路線と接続する川崎貨物駅では、コンテナ列車数本のほか、倉賀野駅や南松本駅など、東日本各地への石油輸送列車が発着しており、東日本の石油輸送に欠かせない拠点の1つとなっています。

石油輸送の拠点となっている川崎貨物駅
石油輸送の拠点となっている川崎貨物駅

駅の南側へ歩いていくと、車両基地が見えてきます。これは、JR貨物の川崎車両所。全国に複数あるJR貨物の車両工場の1つで、同社が運行する貨車の検査を実施しています。

川崎貨物駅に併設されている川崎車両所
川崎貨物駅に併設されている川崎車両所

また、川崎車両所の北側には、神奈川臨海鉄道の車両基地である塩浜機関区も所在しています。神奈川臨海鉄道は、川崎地区の他に横浜地区の路線も保有していますが、この機関区では、横浜地区の車両も含めた全車両の大規模検査を担当しています。

さらに先へと歩いていきます。線路は大きく西側へ舵を切ると、首都高速神奈川1号横羽線の横へ。この区間は塩浜操駅開業時に整備されたもので、全線が高架となっています。そして川崎貨物駅から5.3キロで、線路は浜川崎駅へと着きます。

川崎貨物~浜川崎間の高架橋
川崎貨物~浜川崎間の高架橋

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