鉄道コムおかげさまで鉄道コムは25周年

2021年春ダイヤ改正

ついに定期運用終了、その後は? 全2階建て車両の215系

2021年2月27日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

3月13日に実施される、JRグループ春のダイヤ改正。今年のJR東日本のダイヤ改正では、首都圏最後の現役国鉄型特急車両、185系の定期運用終了が注目されています。

その裏で、JR化後に製造された車両も、定期運用が消滅するものが。その車両とは、「湘南ライナー」などで活躍した215系です。

3月13日のダイヤ改正で定期運用が消滅する215系
3月13日のダイヤ改正で定期運用が消滅する215系

1980年代、首都圏の各主要国鉄路線における通勤輸送を改革する、いわゆる「通勤五方面作戦」は完了していましたが、それでもなお、ラッシュ時においては今も続く混雑が見られる状況でした。そんな中、1984年には、上野~大宮間で国鉄初のホームライナーが誕生。総武線や阪和線、東海道本線へ波及していきます。長距離通勤時における着席というニーズが求められていたためです。

ホームライナーは、人気路線では満席となる列車が続出。また、東海道本線や横須賀・総武快速線の普通列車に連結されていたグリーン車も、ラッシュ時には立ち客が出るほどの乗車率となっていました。

国鉄分割民営化で誕生したJR東日本では、この課題を解決すべく、2階建て車両の投入で座席定員を増やす方向に舵を切りました。

まず、人気が高かった普通列車グリーン車については、1989年に113系と211系の2階建てグリーン車が登場。東海道本線や横須賀・総武快速線に投入されました。この2階建てグリーン車は、車両が置き換えられた後もコンセプトは引き継がれ、2020年12月にデビューした横須賀・総武快速線用のE235系にも連結されています。

最新のE235系にも受け継がれている、普通列車の2階建てグリーン車
最新のE235系にも受け継がれている、普通列車の2階建てグリーン車

一般車両については、1991年にクハ415-1901の1両を試験的に製造。常磐線用415系の1形式で、2階席は通常よりも1列増やした3+2列配置のボックスシートを設置するなど、座席数増加を目的に設計された車両でした。

そして、クハ415-1901のデータを基に登場したのが、全2階建て車両となる215系。ライナー列車への充当を考慮し、クハ415-1901とは異なる2+2列配置のボックスシートを設置しましたが、1両あたり片側2か所の扉配置など、基本的な見つけは415系のものを踏襲していました。

2+2列のボックスシートを配置した215系の車内
2+2列のボックスシートを配置した215系の車内

なお、全2階建て、と言われる215系ですが、両先頭車の1階部分は機器スペースとなっており、実際には中間の8両が2階建てです。それでも、新幹線や海外の鉄道車両に比べて車両の最大サイズが小さい日本の在来線車両(路面電車を除く)において、全2階建てと言える設計となっているのは、「サンライズエクスプレス」285系と、この215系のみ。普通・快速列車向け車両としては、215系が唯一の存在となっています。

ダブルデッカー(2階建て)車両を表す215系のロゴ
ダブルデッカー(2階建て)車両を表す215系のロゴ

湘南ライナー運転開始当時から活躍していた185系の座席定員が、10両編成では604人、15両編成でも916人だったところ、215系は10両編成ながら1010人と、多くの座席定員を確保していました。

また、当初は5両編成の付属編成を製造する計画もあったと言われており、先頭車の電気連結器がその名残を留めています。

1992年に製造された第1編成は、同年4月に「湘南ライナー」での営業運転を開始。翌年には、さらに10両編成3本が製造されました。運用も、朝夕のライナー列車だけでなく、東海道本線の快速「アクティー」や、土休日を中心に運転される中央本線の臨時快速「ホリデー快速ビューやまなし」にも投入され、幅広い活躍が見られました。

しかしながら、215系はその設計がネックとなり、次第に活躍の場を追われていきます。

ドアが1両あたり片側2か所のみ、かつ車内に階段がある設計では、多数の乗降客がいる場合、他の一般的な車両よりも乗降に時間が掛かってしまいます。長距離の行楽客だけでなく、短距離利用客もいる「アクティー」の運用では、この点がネックとなってしまいました。

そのため、2001年12月のダイヤ改正をもって、215系は「アクティー」の運用から撤退。このダイヤ改正で運転を開始した湘南新宿ラインにおいて、新宿駅を発着する横須賀線直通系統などの列車に使用されました。しかし、2004年10月のダイヤ改正で湘南新宿ラインの新宿駅発着列車が消滅し、車両もE231系に統一されたことで、215系の一般列車定期運用は消滅してしまいました。

その後の215系は、引き続き運転されていた「ホリデー快速ビューやまなし」の運用を除くと、「湘南ライナー」などのライナー列車に使われるのみに。ライナー列車が運休となる土休日は、東海道本線では回送列車で走るのみとなってしまいました。

東海道貨物線を走る215系
東海道貨物線を走る215系

そして2021年3月13日のダイヤ改正で、215系唯一の活躍の場であった「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」は、E257系による特急「湘南」に置き換えられる形で3月12日に運転を終了。「ホリデー快速ビューやまなし」も2020年11月末の運転をもって設定がなく、3月13日以降の運用は無い状態です。

JR東日本の広報部によると、「湘南ライナー」に使用してきた215系と185系については、時期は未定ではあるものの、順次廃車する予定だとしています。

アンケート

このリポート記事について、よろしければ、あなたの評価を5段階でお聞かせください。

関連鉄道リポート

関連鉄道未来ニュース

鉄道コムおすすめ情報

画像

西武「2色塗り」復刻

2000系1本を対象に、1961年まで使用のデザインでラッピング。ただし先頭部のみ。

画像

特別仕様車イベント走行

銀座線1000系特別仕様車で実施。車内照明の色味変更や「予備灯」点灯でレトロ感を演出。

画像

渋谷駅新駅舎7月開業

渋谷駅南側の新駅舎が、7月21日に一部供用開始。駅南側の「新南改札」が新駅舎に移転。

画像

京急ファミリーフェスタ

5月26日、久里浜工場にて開催。子ども向けのイベントが中心で、今年度は親子限定の事前申込制。

画像

あえて「車両が無い」鉄道写真

鉄道写真は、車両が写っている写真だけではありません。列車以外の鉄道写真の撮り方を、カメラマンの助川さんが解説します。

画像

4月の鉄道イベント一覧

いよいよ新年度。本年度も鉄道コムをよろしくお願いします。鉄道旅行や撮影の計画は、イベント情報から。