鉄道事業者はコロナにどう対応した? 2020年の対策振り返り

2020年12月29日(火) 鉄道コムスタッフ

2020年に猛威を振るった新型コロナウイルス(COVID-19)。特に日本でも感染が拡大した3月以降は、鉄道各社はさまざまな取り組みを進めてきました。

12月時点でも先行きが見えない状況。各社はこれまでどのような対策を実施してきたのか振り返ります。

車内換気

いわゆる「3密」の1つとなる「密閉」を防ぐため、鉄道各社では車内換気の取り組みを実施しています。

各社とも、通勤電車では窓を開けての換気を呼びかけているほか、JR東日本や小田急電鉄などの一部事業者では、窓に開口幅の目安を示すシールを貼り付けています。

開口幅の目安を示すシールを貼り付けたJR東日本の車両
開口幅の目安を示すシールを貼り付けたJR東日本の車両

なお、鉄道総合技術研究所が10月に発表した「走行時の窓開けによる車内換気の数値シミュレーション」の結果では、通勤電車で6箇所の10センチ程度開けて時速70キロで走行した際、車内の空気は5~6分ほどで入れ替わるということです。また、空調装置を併用した場合には、2~3分程度で空気が入れ替わることになります。なお、混雑率によって換気効率が変化することはありません。

窓開けによる車内換気のシミュレーション(画像:鉄道総合技術研究所)
窓開けによる車内換気のシミュレーション(画像:鉄道総合技術研究所)

新幹線やほとんどの特急列車では窓を開けることはできませんが、これらの車両では、新型コロナウイルスに関係なく、車内の換気に配慮した設計となっています。JR東海によると、東海道新幹線の車両については、計算上では6分から8分で外の新鮮な空気と入れ替わるとしています。

窓が開かない新幹線でも、車内の空気は6~8分で新鮮なものに(画像:JR東海)
窓が開かない新幹線でも、車内の空気は6~8分で新鮮なものに(画像:JR東海)

時差通勤の呼びかけ・ポイント付与

朝夕の通勤電車は、「3密」の空間そのもの。先述のように車内換気は実施していますが、それでも乗車率が高ければ感染リスクも拡大します。

新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあった3月ごろからは、国土交通省や鉄道各社は時差通勤やテレワークの導入を呼びかけ、混雑率の低下を図りました。12月現在は、テレワークの普及などで昨年同時期よりも乗車率は低下していますが、時差通勤やテレワークを呼びかける放送は、今現在も継続しています。

「密」を避けるため、各社では時差通勤の呼び掛けを続けています(イメージ)
「密」を避けるため、各社では時差通勤の呼び掛けを続けています(イメージ)

ただし、放送や掲示によって呼びかけるだけでは、それほどの効果は上がりません。そこでJR東日本やJR西日本が実施するのが、時差通勤によるポイントの付与です。交通系ICカード「Suica」「ICOCA」の定期券利用者が対象で、平日にピーク時間帯を避けて対象区間を利用すると、両ICカードのポイントが15~20ポイント付与されるサービスです。

同様の時差通勤によるポイント積算サービスは、東京メトロが東西線や有楽町線で実施しています。ただし、こちらは新型コロナウイルス感染拡大以前から混雑が激しい両路線に対し、混雑緩和策として導入したもの。新型コロナウイルス対応策としての時差通勤優待サービスは、JR2社のものが初めてとなります。

接触からの感染を避ける取り組み

接触による感染を防ぐため、釣銭などの手渡しを避ける、といった取り組みは、スーパーやコンビニなど、さまざまな場面で実施されています。鉄道業界でも同様に、「みどりの窓口」のような金銭のやり取りがある場面のほか、駅や車内などで様々な施策を実施してきました。

列車内で立つ際に掴む手すりや吊革は、誰が触れたかわからないもの。その他の壁面や座面などにウイルスが付着している可能性もあります。そこで一部の事業者では、車内へ薬剤を噴霧し、抗菌・抗ウイルス加工を実施しています。

東京メトロによる車内への抗菌・抗ウイルス剤散布のようす
東京メトロによる車内への抗菌・抗ウイルス剤散布のようす

大手私鉄では、東武、西武、東急、小田急、京王、京成、京急、東京メトロ、相鉄、近鉄、阪急、阪神、大阪メトロ、南海が、抗菌・抗ウイルス加工を実施していると発表。小田急や名鉄、西鉄などでは、手すりや吊革などの定期的な消毒も実施しています。

抗菌加工済みの車両に貼り付けられたステッカー
抗菌加工済みの車両に貼り付けられたステッカー

また、利用者がドアを操作する「半自動ドア」は、ボタンに利用者が触れる必要があるため、この取り扱いを中止。普段は利用者がドアを開閉する終端駅や長時間停車駅でも、全てのドアが開く光景が見られました。なお、これはボタンの操作による感染機会を減らすだけでなく、車内換気も兼ねているといいます。

利用者がドアを操作する「半自動ドア」のボタン
利用者がドアを操作する「半自動ドア」のボタン

2020年は、「モバイルPASMO」のサービス開始やデジタルフリーパスの実証実験など、スマートフォンを活用した非接触ツールのサービス拡大が目立ちました。これらの開発は、新型コロナウイルス感染拡大前より続けられていたもので、このタイミングは偶然のものではありますが、接触による感染の回避に一役買っています。

2020年3月に始まった「モバイルPASMO」。当初はAndroid端末のみの対応でしたが、10月からはiOS端末でも利用できるようになりました
2020年3月に始まった「モバイルPASMO」。当初はAndroid端末のみの対応でしたが、10月からはiOS端末でも利用できるようになりました

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