消滅間近? 今は日本最少運転本数の特急「有明」の軌跡

2020年12月5日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR九州が発足したころの九州エリアでは、博多駅を中心に、鹿児島方面、大分・宮崎方面、長崎方面の、大きく分けて3系統の特急列車が運転されていました。

このうち、鹿児島方面の列車として運転されていたのが、特急「有明」。1992年の特急「つばめ」運転開始前は、鹿児島本線系統の主力だった列車です。

鹿児島本線の特急「有明」
鹿児島本線の特急「有明」

鹿児島本線の特急列車としての「有明」は、1967年に運転を開始。1975年に山陽新幹線が博多駅まで開業してからは、新幹線接続特急として大幅に増発。一時期は32往復も運転されていました。

運転本数だけでも歴史に残りそうな「有明」ですが、かつてはそれ以外にもさまざまな話題を作りあげていました。

当時史上最短の3両編成で運転

今でこそ気軽に乗れる特急列車ですが、かつて急行が主力だった時代の特急列車は、文字通り「特別な急行列車」でした。そのため、特に本線格の路線を走る特急列車では、10両前後の長編成を組むことが当たり前でした。

しかしながら、優等列車の主力が次第に急行列車から特急列車にシフトしていくと、特急列車は長編成・低頻度運転から短編成・高頻度運転へと方針が変化していきます。

たとえば、12両編成1本の車両があった場合、そのままでは12両編成での運用を1つしか組むことができません。一方、中間車を先頭車に改造し、12両編成1本を3両編成4本に組み替えれば、1列車あたりの座席数は短くなりますが、理論上は同じ車両数で列車本数を4倍に増やすことができます。

「有明」では、1986年11月のダイヤ改正で、それまでの5両編成よりも短い、3両編成で運転する列車が登場。一方、運転本数は25往復と、改正前の15往復から10往復も増発されました。

この3両編成の「有明」は、当時の国鉄では最も短い特急列車でした。JR発足後は、JR四国などでさらに短い2両編成の電車特急列車が登場しているものの、JR九州管内においては、485系時代の特急「きりしま」などとともに、2020年現在も最も短い電車特急列車の記録となっています。

日本で初めての「スーパー」

JR発足後に全国各地で登場した、列車名に「スーパー」を冠した特急列車。その先駆けは、この「有明」でした。

1988年に、JRグループ初の特急型電車としてデビューした783系「ハイパーサルーン」は、「有明」の一部列車で運用を開始しました。この際、博多~西鹿児島(当時)間を現在の新幹線「つばめ」並みに停車駅を絞った速達列車1往復が、「スーパー有明」として運転されていました。

「有明」でデビューした783系「ハイパーサルーン」
「有明」でデビューした783系「ハイパーサルーン」

「スーパー」な特急の先駆者となった「有明」ですが、2年後の1990年には、「スーパー有明」を含む783系充当の「有明」が、全て783系の愛称を冠した「ハイパー有明」として運転されるように。「スーパー有明」の歴史は、たった2年で終焉を迎えてしまいました。

なお、「スーパー有明」の消滅後、JR九州管内では「スーパー」を冠する定期特急列車は運転されていません。また、JR九州が火付け役となった「スーパー」な特急列車も、2020年3月のダイヤ改正でJR北海道管内から消滅したことで、現在はJR西日本管内の特急「スーパーはくと」「スーパーいなば」「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」の、わずか4列車のみとなっています。

ディーゼル機関車が電車をけん引

JR九州発足直前の1987年3月、熊本駅発着の「有明」一部列車が、熊本駅から足を延ばし、豊肥本線の水前寺駅への乗り入れを開始しました。

2020年現在は、水前寺駅を含む熊本~肥後大津間が電化されている豊肥本線。しかしながら、1987年当時は、全線が非電化でした。電車特急の「有明」は、そのままでは入線できません。

そこで採用されたのが、ディーゼル機関車で電車をけん引する方法。乗り入れ開始当初は、ディーゼル機関車のDE10形が、電源供給用の12系客車1両と、485系の「有明」をけん引するスタイルで運転されました。

当初は臨時普通列車としての運転だった水前寺駅への乗り入れですが、1988年の783系投入のタイミングで、定期列車に昇格。電源供給用車両は12系から車掌車のヨ8000形へと変更され、DE10形と車掌車は783系に合わせた塗装へと変更されています。

この特殊な取り扱いで運転されていた「有明」の水前寺駅発着列車ですが、1994年に一旦は廃止されてしまいます。豊肥本線熊本~肥後大津間が電化された1999年に、今度はれっきとした電車列車として乗り入れを開始しました。

電車と気動車が連結

ディーゼル機関車にけん引されるという、珍しい形態で運転された歴史を持つ「有明」ですが、電車とディーゼルカー(気動車)を連結し、動力を協調制御して運転したこともありました。

その相手の気動車列車は、門司港~佐世保間で運転されていた特急列車「オランダ村特急」。長崎県に作られた「長崎オランダ村」のアクセス・PR用列車として運転されていました。

電車と気動車では駆動方式が異なるため、本来では双方を連結し、かつ協調制御で運転することはできません。電車と気動車の連結だけであれば、国鉄・JRでは、キハ65系改造「ゆぅトピア」による北陸本線・七尾線の特急「ゆぅトピア和倉」が、北陸本線で485系と連結する形で1986年に運転を開始していましたが、これらは電車がけん引し、気動車はブレーキや車内電源のみの動作となっていました。

そこで鉄道総合技術研究所では、電車と気動車を協調運転する技術を開発。その成果を活かし、「オランダ村特急」用のキハ183系1000番台が製造されました。「有明」「かもめ」「みどり」「にちりん」など、多数の列車が走る鹿児島本線小倉~鳥栖間で、「オランダ村特急」を電車列車と連結することで、線路容量の不足を補う方策が採られたのでした。

運転開始当初の1988年には全区間が単独運転だった「オランダ村特急」ですが、翌1989年には下り列車の門司港~博多間で「有明」との連結運転を開始。さらに1990年には、連結運転区間が門司港~鳥栖間に延長されました。

その「オランダ村特急」は、「ハウステンボス」開園にあわせて運転を開始した特急「ハウステンボス」に代わり、1992年に運転を終了。この列車に使用されていたキハ183系は、「ゆふいんの森II世」→「シーボルト」→「ゆふDX」とたびたび改造された後、2011年以降は「あそぼーい!」として、豊肥本線で運転されています。

「ゆふDX」として運転されていたころの、元「オランダ村特急」用キハ183系1000番台(fujiwaraさんの鉄道コム投稿写真)
「ゆふDX」として運転されていたころの、元「オランダ村特急」用キハ183系1000番台(fujiwaraさんの鉄道コム投稿写真)

また、電車と気動車の協調運転は、「オランダ村特急」廃止で一旦は消滅したものの、1997年にJR北海道が731系電車とキハ201系の組み合わせで協調運転列車の運転を開始。現在も、朝時間帯の1本のみですが、小樽~札幌間で協調運転列車が設定されています。

かつては鹿児島本線の主力特急列車としての位置付けであった「有明」ですが、1992年に787系がデビューすると、当時の西鹿児島駅発着の「有明」は全て「つばめ」としての運転となり、「有明」は博多~熊本間の地域間輸送列車としての立ち位置となります。

787系による「有明」。九州新幹線全線開業前は、「有明」専用の編成が使われていました
787系による「有明」。九州新幹線全線開業前は、「有明」専用の編成が使われていました

さらに2011年に九州新幹線博多~鹿児島中央間が全線開業すると、博多~熊本間の都市間輸送は新幹線が担うこととなり、「有明」は朝夕のライナー列車的な性格に。運転区間は吉塚・博多~長洲・熊本間となり、運転本数は上り3本、下り4本へと大幅に削減されてしまいました。

その後も運転本数の減少は続き、2018年のダイヤ改正では、ついに「有明」は平日朝に大牟田~博多間で運転される上り1本のみに。かつては最大32往復も運転され、数々の話題を作り上げてきた「有明」ですが、その終焉はもしかしたらすぐそこなのかもしれません。

2020年現在は上り1本のみの「有明」。1号車のグリーン車以外は全車自由席と、ライナー列車的な性格を持っています
2020年現在は上り1本のみの「有明」。1号車のグリーン車以外は全車自由席と、ライナー列車的な性格を持っています

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