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かつての「ハズレ車両」も今や希少種に 中京圏で最後の活躍を続けるDD51形

2020年11月7日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

国鉄時代に非電化路線の主力機関車として君臨していた、ディーゼル機関車のDD51形。かつては全国各地に配備されていましたが、いまや定期運用を持つのは中京圏のみに。そのわずかな定期運用も、まもなく終わりを迎えます。

関西本線を走る愛知機関区のDD51形
関西本線を走る愛知機関区のDD51形

戦後の国鉄では、エネルギー効率が悪く排煙の問題もある蒸気機関車の置き換えを進めるべく、ディーゼル機関車の導入を目指していました。

1957年から製造が始まった電気式ディーゼル機関車のDF50形は、出力不足のために蒸気機関車の完全な置き換えは達成できませんでしたが、翌1958年には液体式変速機を搭載したDD13形入換用ディーゼル機関車の開発に成功。これをスケールアップする形で、1962年に本線用ディーゼル機関車のDD51形が登場しました。

DD51形の1号機。後の車両とはデザインが異なっています。現在は碓氷峠鉄道文化むらで保存されています
DD51形の1号機。後の車両とはデザインが異なっています。現在は碓氷峠鉄道文化むらで保存されています

ディーゼル機関車の標準機となるべく設計されたDD51形は、速力では旅客用機関車のC61形を、けん引力では貨物用機関車のD51形を、それぞれ超えるスペックを目指し設計されました。DD51形(20号機以降)のエンジンは、V形12気筒で定格出力1100馬力/1500rpmの性能を持つDML61Z形を2基搭載。1両あたりの定格出力は2200馬力となり、最大出力1280馬力のD51形を上回るけん引力を確保しています。また最高運転速度は時速95キロとなり、C61形の時速100キロにはわずかに及ばないものの、ほぼ同程度の性能となっています。

国鉄では、DD51形以降にもさらなる高性能なディーゼル機関車の開発を目指しましたが、西ドイツ(当時)の技術を使用したDD54形は失敗作に終わり、大出力エンジンを搭載したDE50形の量産も断念。結果的にDD51形が国鉄の本線用ディーゼル機関車の主流となり、1962年から1978年にかけて649両が落成。北は旭川機関区から、南は熊本機関区まで、全国に幅広く配備されました。

非電化区間の主力機となったDD51形は、寝台特急や客車普通列車、貨物列車など、さまざまな分野で活躍。また、ロータリー除雪車のDD53形や、最高時速160キロという性能を持つ新幹線用事業車の911形など、さまざまな派生形式を生み出し、一大グループを築きました。

国鉄分割民営化直後も、DD51形は幅広い運用を保持。寝台特急「出雲」の京都~浜田間や、筑豊本線の50系客車による普通列車、北海道の貨物列車など、まだまだ多くの列車をけん引していました。特に1988年3月には、青函トンネルの開通によって運転を開始した寝台特急「北斗星」、急行「はまなす」のけん引機に抜擢。「北斗星」や、後に運転を開始した「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」では、専用塗装となったDD51形が、函館・五稜郭~札幌間を重連でけん引していました。

「カシオペア」や「北斗星」「トワイライトエクスプレス」の北海道区間では、DD51形が重連でけん引していました
「カシオペア」や「北斗星」「トワイライトエクスプレス」の北海道区間では、DD51形が重連でけん引していました

しかしながら、車両の老朽化やけん引担当列車の削減により、DD51形の運用は次第に減少。特に1990年代後半になると、客車列車の置き換えが進み、活躍の場が狭まっていきます。

JR最後の客車普通列車でもあった筑豊本線のDD51形+50系客車による列車は、2001年のダイヤ改正で廃止。客車列車自体も削減が進み、本州内での定期旅客列車のけん引は、2006年の「出雲」廃止によって消滅しました。最後に残った北海道の「はまなす」も、北海道新幹線の開業と同じ2016年3月に廃止。同時に「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」も定期的な運転を終了し、DD51形けん引による定期旅客列車は消滅してしまいました。

「はまなす」をけん引するJR北海道のDD51形
「はまなす」をけん引するJR北海道のDD51形

旅客会社に継承されたDD51形のうち、JR北海道、JR東海、JR九州の3社では全て引退済み。一方のJR東日本とJR西日本では、定期運用こそ持たないものの、工事列車のけん引などのために今も現役。JR東日本の「DL群馬県民の日」や、JR西日本の「SLやまぐち号」の代走など、旅客列車の先頭に立つ姿も時折見られます。また、引退した一部の車両はミャンマーやタイ、マレーシアへと輸出されています。

工事列車の先頭に立つJR西日本のDD51形
工事列車の先頭に立つJR西日本のDD51形

JR貨物のDD51形は、後継機のDF200形こそ登場したものの、大規模な置き換えが無かったこともあり、民営化からしばらくの間は幅広く活躍。一部の車両では、部品やエンジンを交換する更新工事も実施されました。

それでも、総武本線・鹿島線のように、電化によって電気機関車へ運用が置き換えられる、あるいは美祢線のように貨物列車自体が廃止されるなどの理由で、次第に運用が減少。2014年に北海道の鷲別機関区が廃止され、同区所属のDD51形の運用が消滅したことにより、現在定期運用を有するのは愛知機関区の所属車のみとなりました。

愛知機関区では、稲沢~四日市間の運用を担当しており、コンテナ貨物列車や石油貨物列車をけん引しています。また、かつては富田~四日市間でのセメント貨物列車での運用や、DD51形による重連運用も設定されていました。

かつて設定されていた、愛知機関区のDD51形による重連仕業
かつて設定されていた、愛知機関区のDD51形による重連仕業

DD51形最後の砦である愛知機関区でも、老朽化による置き換えが始まっています。2015年には、1801号機が大宮車両所でDD51形最後の全般検査を終えて出場。これ以降、検査期限の切れた車両から、順次除籍されています。

DD51形最後の全般検査対象車両となった1801号機
DD51形最後の全般検査対象車両となった1801号機

DD51形の置き換え車両として選ばれたのは、北海道で運用に就いていたDF200形を改修したDF200形200番台。愛知機関区には2016年から配備されており、重連運用を中心に、DD51形の運用を置き換えていきました。

2020年3月のダイヤ改正以降は、DD51形の運用は1日3往復のみに減少しています。JR貨物では、2020年度に愛知機関区のDD51形の運用を終える予定としています。

登場時には蒸気機関車を置き換えたことから「敵」「ハズレ」扱いされていたDD51形ですが、いまやその運用も風前の灯に。かつて全国を走り回ったDD51形は、中京圏で最後の活躍を続けています。

愛知機関区所属DD51形の運転時刻

・第2085列車(コンテナ貨物)

稲沢(8:17発)~四日市(10:23着)

・第2080列車(コンテナ貨物)

四日市(12:42発)~稲沢(14:09着)

・第6079列車(石油貨物)

稲沢(11:51発)~四日市(13:28着)

・第2084列車(コンテナ貨物)

四日市(17:14発)~稲沢(18:21着)

・第8075列車(石油貨物)(DD51形は四日市まで、次位にDF200形を連結)

稲沢(15:50発)~四日市(17:33着、17:55発)~塩浜(18:04着)

・第2088列車(コンテナ貨物)

四日市(19:08発)~稲沢(20:33着)

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