新たな寝台列車「WEST EXPRESS 銀河」は、新快速の生まれ変わり

2020年9月11日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

9月11日に営業運転を開始する、JR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」。当初は京都・大阪~出雲市間を夜行列車として運転する予定で、車内には一般的なリクライニングシートのほか、ベッドどして利用できる座席などを配置しています。

9月11日にデビューする「WEST EXPRESS 銀河」
9月11日にデビューする「WEST EXPRESS 銀河」

旅行商品ではなく、「みどりの窓口」などできっぷを買って乗車できる、一般的な寝台列車が新しく設定されるのは、1999年に運行を開始した寝台特急「カシオペア」以来、約21年ぶりのことです。

なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、デビューしてから当面の間は、日本旅行が企画・実施する旅行商品に限定して販売されることになりました。そのため現時点では、みどりの窓口できっぷを購入することはできません。

そんな新しい寝台列車のWEST EXPRESS 銀河ですが、これに使用される117系は、もともとは京阪神地区の「新快速」用として製造された、一般型の車両でした。

1970年10月に京都~大阪~西明石間で運転を開始した新快速は、当初は113系、1972年からは急行列車の廃止によって余剰が生まれた153系が使われていました。117系は、この2代目新快速用車両の置き換え用として、1980年にデビューしました。

117系のその特徴は、2扉・転換クロスシートという豪華な接客設備です。当時の急行列車では、約半数の座席が進行方向と反対側を向いて座ることになるボックスシートが主流で、117系は急行型車両以上の装備を備えた車両でした。また、車内の妻面は木目調の化粧板を使用するなど、座席以外も上質な仕様に。競合路線を走る、2扉・転換クロスシート車両の京阪3000系(初代)、阪急6300系と同等の客室レベルに到達しました。

デビュー時の塗装を纏う117系。2扉・転換クロスシートという、これまでの国鉄一般型電車にはなかった設備で登場しました
デビュー時の塗装を纏う117系。2扉・転換クロスシートという、これまでの国鉄一般型電車にはなかった設備で登場しました

外観は、戦前に京阪神間を走り、「流電」の愛称で親しまれたモハ52形をイメージした、クリーム色とぶどう色の組み合わせ。当時、「湘南色」や「首都圏色」など、国鉄の車両では既に決まり切った塗装で製造される車両が多い中、117系では新たな塗装パターンを採用し、他車両との違いを印象づけました。それまでは103系などの「国電」を除き同一形式内での塗装バリエーションに乏しかった国鉄車両ですが、117系以降、115系「身延色」や「瀬戸内色」、185系など、従来にはなかった塗装で登場する車両が増えていくことになりました。

1980年1月にデビューした117系は、同年中に153系を全て置き換え、新快速の主力車両に。1982年には、名古屋地区にも東海道本線などの快速列車用として投入されました。さらに1986年には、側面窓を二段窓から一段下降窓に変更するなどのマイナーチェンジを受けた100番台が登場。京阪神地区へは編成単位で導入されたほか、名古屋地区では6両編成から4両編成へと編成を短縮するため、先頭車両が18両投入されました。

京阪神・名古屋地区の快速用車両としての立場を築いた117系ですが、国鉄分割民営化によりJRが発足した頃の1980年代後半になると、早くも主力の座から退くこととなります。

京阪神地区では、15分運転間隔化、米原駅発着での運転開始など、現在の運行形態に近づきつつあった新快速ですが、利便性の向上によって利用客も増加。2扉・転換クロスシートの117系では、乗降に時間が掛かるようになってしまいました。

そこでJR西日本では、同社発足後初の新形式車両として、1989年に3扉・転換クロスシート車両の221系を導入。同年4月に新快速での営業運転を開始し、117系を順次置き換えていきました。1991年3月のダイヤ改正では、日中時間帯の新快速運転速度が時速120キロとなりましたが、これに対応できない117系は日中の新快速から撤退。さらに、223系デビュー後の1999年5月のダイヤ改正では、新快速の時速130キロ運転が始まり、これとともに117系の京阪神地区新快速運用は消滅しました。

1989年にデビューした221系。3扉・転換クロスシートとすることで、117系で課題となった乗降時間の問題を解消しました
1989年にデビューした221系。3扉・転換クロスシートとすることで、117系で課題となった乗降時間の問題を解消しました

JR東海でも、3扉・転換クロスシートの311系や313系が登場すると、次第に快速系列車の主力から撤退。一時期はラッシュ時間帯のみの運用となりました。後に関ヶ原越えの区間などで再び運用が増えたものの、313系の増備によって次第に置き換えが進行。JR東海の117系は、2013年に営業運転を終えました。

米原駅でJR西日本の223系(右)と並ぶJR東海の117系(左)。名古屋地区の117系は、2013年に営業運転から退きました
米原駅でJR西日本の223系(右)と並ぶJR東海の117系(左)。名古屋地区の117系は、2013年に営業運転から退きました

一方、JR西日本の117系は、他線区へ転属することで、活躍の幅を広げました。

関西地区では、福知山線での運用に備え、一部をロングシート化した300番台が登場。このグループは福知山線からは撤退したものの、現在でも琵琶湖線や草津線など、京都近郊で走行しています。

一部の編成は和歌山地区へも転属しました。これらは和歌山線や紀勢本線で運行されましたが、新型車両の227系の導入によって、2019年に置き換えが開始。2020年3月のダイヤ改正をもって、このグループは定期運用から退きました。

和歌山地区で活躍した117系
和歌山地区で活躍した117系

新快速からの撤退によって余剰となった117系は、中国地方へも活躍の場を広げます。岡山電車区に転属した117系は、岡山~福山間の快速「サンライナー」用車両に。白を基調に、裾部に太陽をイメージしたグラデーションを配置した、独自塗装へと生まれ変わりました。

岡山電車区に転属した117系。「サンライナー色」とも呼ばれる塗装で運行されました
岡山電車区に転属した117系。「サンライナー色」とも呼ばれる塗装で運行されました

中国地方では、下関地区にも117系が配置されました。2005年に発生した福知山線の脱線事故の影響で、ATS-Pを装備していない117系は同線から撤退し、車両が不足していた下関地区に転属。115系などに混ざって運用を開始しました。

下関駅でJR九州の415系(左)と並ぶ117系(右)
下関駅でJR九州の415系(左)と並ぶ117系(右)

このほか、福知山線や岡山地区への転属時に編成を短縮したことで生まれた中間車の余剰車両は、115系3500番台に改造。岡山・広島・下関地区で運行されることとなりました。

これら中国地方に散った117系は、下関地区のグループは2016年までに転属により撤退。一方、岡山電車区の車両は濃黄色へと塗り替えられつつも、今でも現役です。115系3500番台に改造されたグループは、広島地区への227系投入により、岡山・広島地区からは撤退。現在は岩国~下関間のみの運用となっています。

115系3500番台に改造された117系の中間車
115系3500番台に改造された117系の中間車

そして、2017年にJR西日本が導入を発表した「新たな長距離列車」、WEST EXPRESS 銀河が、9月11日に営業運転を開始します。

車両のデザインには、えちごトキめき鉄道の「雪月花」などを担当した川西康之さんを起用しました。車体外観は、西日本が誇る美しい海や空を表現する瑠璃紺(るりこん)色。車内には、グリーン車指定席やノビノビ座席などを配置しています。列車の名称は、宇宙での星々の集まりを指す「銀河」を用い、西日本エリアを宇宙に、各地域を星になぞらえ、それらの地域を結ぶ列車という意味を込めたといいます。

WEST EXPRESS 銀河は、9月から11月までは京都・大阪~出雲市間で夜行列車として運転。その後、12月以降は山陽方面で運転する予定となっています。

国鉄の一般型車両としては飛び抜けた設備で登場した117系。デビューから約40年を経て、寝台列車という、新たな分野での活躍がいよいよ始まります。

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