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東海道新幹線が「のぞみ12本ダイヤ」を初めて実施、利用者減でも増発

2020年8月7日(金) 鉄道コムスタッフ

JR東海は、8月7日より東海道新幹線で「のぞみ」を1時間に最大12本運転する「のぞみ12本ダイヤ」を設定します。

8月7日から「のぞみ12本ダイヤ」が始まる東海道新幹線
8月7日から「のぞみ12本ダイヤ」が始まる東海道新幹線

全国的な緊急事態宣言の解除から約2か月が経ち、政府のGo To トラベルキャンペーンも始まった今、新幹線の利用者はゆるやかに増加しています。しかしながら、まだまだ外出を自粛する動きもあり、2019年の夏頃の水準には至っていません。そのような状況で、なぜJR東海は東海道新幹線の増発にあたる、のぞみ12本ダイヤの設定を始めるのでしょうか。

JR東海 東京広報室の安田吉孝さんは、のぞみ12本ダイヤを設定する理由について、「余裕をもって座席を提供することで、お客様に安心して乗ってもらえるようにするため」と説明します。

安田さんによると、2020年4月~7月の年度累計利用率は、昨年同時期の約20%に留まっているのだそう。これは緊急事態宣言発令期間を含んだ数値のため、現在では利用者もゆるやかに増加しつつあるといいますが、それでもお盆期間中の予約状況は未だ「空席あり」状態になっている(7月21日発表のデータ)など、以前の利用率に戻っているわけではありません。

そのような状況では、「のぞみ」を毎時12本運転せずとも、東海道新幹線の需要に応えることはできます。しかしながら、需要と一致する運転本数、つまり全「のぞみ」がちょうど満席となるレベルに本数を絞ってしまうと、車内が「密」な空間となってしまいます。本来であればさらに少ない本数でも需要を満たせるところを、JR東海では利用者の安全・安心のために列車の増発に踏み切ったのです。

N700Sの車内
N700Sの車内

のぞみ12本ダイヤは、金曜日の夕方や連休中など、利用者が増加するタイミングにあわせ、臨時列車を含めて「のぞみ」を1時間あたり最大12本運行するというもの。それまでは1時間あたり最大10本での運行となっていたので、1時間あたり2本、席数にして2646席の増強が可能となっています。

これを実現した裏にあるのが、東海道新幹線の車両統一。2020年3月をもって700系が引退したことで、東海道新幹線の営業用車両はすべて同線内での時速285キロ運転に対応した車両となりました。

さらに、N700系以降の車両では、700系よりも加速度を向上し、700系よりも速く最高速度に到達できるようになっています。高速性能と高加速性能を持つ車両に統一したことで、列車間隔を詰めることができ、「のぞみ」の毎時2本増発を実現したのです。

また、列車に電力を送る変電所や、運転データを扱う運行管理システム、保安装置も改良。細かい所では、東京駅や新大阪駅の清掃時間を約2分短縮するという努力によって、のぞみ12本ダイヤの準備が進められてきました。

本来のぞみ12本ダイヤがスタートするはずだった3月14日には、これを記念した式典が開催されました。しかしながら、当時感染が拡大しつつあった新型コロナウイルスの影響で、「のぞみ」の毎時12本運転は取り止めに。ダイヤ改正時点でダイヤ上では予定された臨時列車として毎時12本の「のぞみ」が設定されていましたが、これを活かす機会は訪れず、8月7日にようやく実現する運びとなったのでした。

のぞみ12本ダイヤと全列車の時速285キロ運転開始を記念した式典(画像提供:JR東海)
のぞみ12本ダイヤと全列車の時速285キロ運転開始を記念した式典(画像提供:JR東海)

本来では金曜夕方や連休などの高需要に応える目的で進められてきたのぞみ12本ダイヤ。計画当初の目的からは外れた形となってしまいましたが、東名阪を繋ぐ輸送手段の安定運行と、新型コロナウイルスの感染防止対策として、JR東海の悲願が実現します。

JR東海では、のぞみ12本ダイヤの設定の他にも、さまざまな新型コロナウイルス対策を展開。この取り組みを紹介する動画も公開(URL:https://www.youtube.com/watch?v=O2d727qQ07I )しています。

JR東海のPR動画「新型コロナウイルス感染症対策 JR東海からのお約束」
JR東海のPR動画「新型コロナウイルス感染症対策 JR東海からのお約束」

駅の改札窓口やきっぷうりばでは、ビニールカーテンを設置。券売機などの利用者が触れる箇所は、毎日消毒しているといいます。

駅窓口で新幹線の座席を購入する際には、駅係員が発売時点での空席状況を案内しながら、他の利用者と離れた座席を可能な限り案内します。

発売時点の空席状況を案内しながらきっぷを発売(画像:JR東海)
発売時点の空席状況を案内しながらきっぷを発売(画像:JR東海)

また、駅に設置されている指定席券売機でも、利用者自身が現時点での空席状況を確認しながらきっぷを購入できます。また、ネット予約サービスの「エクスプレス予約」「スマートEX」でも空席状況の確認が可能。ネット予約サービスを使用すれば、駅係員との対話や、他の利用者が触れた券売機の使用が必要なく、感染リスクを減らすことにもつながります。

新幹線車内の感染予防策としては、車掌が巡回する際にトイレのドアノブなどを消毒しているほか、車両基地などでの清掃時にも、利用者の手が触れやすい箇所を毎日消毒しているといいます。

車内の換気も心配ありません。一般の通勤電車と異なり、窓が開かない新幹線車両ですが、新型コロナウイルスに関係なく、車内の換気に配慮した設計となっています。車内の空気は空調装置で常に入れ替えられており、計算上では6分から8分で外の新鮮な空気と入れ替わるといいます。

車内の空気は6~8分で新鮮なものに(画像:JR東海)
車内の空気は6~8分で新鮮なものに(画像:JR東海)

現時点では、すべての人が大手を振って旅行できるという情勢ではありませんが、それでも昨年の利用者数には遠く及ばないものの、ビジネスなどでの新幹線需要は増加しています。

JR東海では、同社が駅や車内で実施する対策に加えて、利用者に「マスクの着用」「車内での会話を控える」「座席は回転させない」の3点を呼びかけています。列車の増発による座席提供数の増強や、駅・車内での感染対策に加えて、利用者自身がしっかり対策をすることで、安心して新幹線を利用できる環境が作られていきます。

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