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まもなく置き換え開始、横須賀・総武快速線のE217系

2020年6月8日(月) 鉄道コムスタッフ

6月8日に神奈川県の車両基地に搬入された、横須賀・総武快速線用の新型車両E235系。同線用の車両としては26年ぶりの新形式で、今後も増備が予定されています。

車両基地に向けて回送される横須賀・総武快速線用E235系
車両基地に向けて回送される横須賀・総武快速線用E235系

このE235系が置き換えるのは、横須賀・総武快速線用に投入されたE217系。JR第1世代の一般型車両であるE217系は、ほとんどの編成が一貫して横須賀・総武快速線で活躍してきた形式でした。

横須賀・総武快速線の車両置き換え用として、1994年に登場したE217系。首都圏の一般型電車としては215系、209系に続くもので、本格的な近郊型タイプの直流電車としては、JR東日本発足後初の投入でした。

横須賀・総武快速線で活躍するE217系
横須賀・総武快速線で活躍するE217系

外房線、内房線、成田線へも乗り入れる運用がある横須賀・総武快速線の系統は、長距離利用客や郊外区間での利用客、土休日の行楽客に配慮し、それまでは3ドア・セミクロスシート車両である近郊型の113系が使用されていました。しかしながら、次第に通勤利用客が増加していくと、従来の近郊型車両では扉数が少ない、セミクロスシートのため乗車効率が悪い、というデメリットが表れていきました。

そこでE217系では、従来の近郊型車両の概念にとらわれない、大胆な設計をもって登場しました。ドア数は、従来の3ドアから通勤型電車と同じ4ドアに。セミクロスシートは設置されましたが、基本編成11両編成中、3両のみに削減。基本編成のそのほかの8両は、グリーン車2両とロングシート車両6両で、付属編成4両も全車両がロングシートです。

基本編成のうち3両は4ドア・セミクロスシート車両に。その他の普通車は全てロングシートとなりました
基本編成のうち3両は4ドア・セミクロスシート車両に。その他の普通車は全てロングシートとなりました

また、万一の事故にそなえた対策も盛り込まれました。踏切などでトラックのような障害物と衝突した場合にも、あえて破壊する部分を設けることで衝撃を分散し、乗務員の生存率を高める「クラッシャブルゾーン」です。これは、1992年に発生した踏切事故をふまえたもの。踏切で立ち往生していた過積載のトラックへ113系の列車が衝突し、救出に手間取ったため運転士が亡くなったという、痛ましい事故でした。このクラッシャブルゾーンは、E231系の近郊タイプ、E233系、E235系にも採用されており、首都圏を走るJR東日本の一般型車両の特徴となっています。

E217系の先頭部。万が一の衝突時には乗務員室扉付近が潰れエネルギーが吸収されることで、先頭部の運転士や、後部の客室を守る設計です
E217系の先頭部。万が一の衝突時には乗務員室扉付近が潰れエネルギーが吸収されることで、先頭部の運転士や、後部の客室を守る設計です

このほかE217系は、首都圏のJR一般型車両として唯一、先頭部に貫通扉を備えています。これは錦糸町~品川間にトンネル区間があるために設けられたもので、一般的な地下鉄車両と同様に、トンネル区間における非常脱出時の使用が想定されていました。しかしながら、同区間のトンネルは地下鉄のトンネルとは異なり、車両脇にも降車可能な空間が設けられています。このため、1998年以降に製造された7・8次車では貫通扉は廃止。デザインは6次車以前と同一ですが、扉のような造形がある非貫通型車両となっています。

なお、足回りは基本的に209系と同一ですが、営業最高時速120キロでの運転に対応できる性能としたほか、209系では13,300ミリとしていた台車中心間距離が、205系以前の13,800ミリに戻されています。

登場時から横須賀・総武快速線系統をメインに活躍してきたE217系ですが、かつては他の路線で使用されたこともありました。

宇都宮・高崎線と東海道・横須賀線を新宿経由で接続する湘南新宿ラインは2001年12月に運行開始しましたが、当時は現在と大幅に異なるパターンで運転されていました。日中時間帯には1時間あたり3本の運転で、高崎線~東海道線、宇都宮線~横須賀線、そして新宿駅発着の横須賀線の3系統が運転されていました。E217系は新宿発着の横須賀線列車に充当されており、2004年10月に湘南新宿ラインが現在の運転パターンとなるまでの3年間、新宿駅へ定期列車で姿を見せていました。

2004年10月のダイヤ改正では、湘南新宿ラインが大増発された一方、横須賀線の運用が削減され、E217系に余剰が発生しました。そこで、当時東海道線に残存していた113系を置き換えるため、E217系は基本編成・付属編成各3本が東海道線用に転用されました。カラーリングはE231系と同じ湘南色となり、編成も11両+4両から10両+5両に組み替えられ、これまでとは異なる印象に。2006年に東海道線での営業運転を開始し、従来は乗り入れることがなかった熱海駅まで、運用区間を拡大しました。なお、東海道線へ転用された各編成は、横須賀・総武快速線の増発などにより、2015年までに運用を終了し、横須賀・総武快速線へと舞い戻っています。

東海道線で活躍していた頃のE217系
東海道線で活躍していた頃のE217系

横須賀・総武快速線で活躍を続ける編成も、大小さまざまな変化がありました。特に、2007年に開始された機器更新工事では、制御装置などの床下機器を更新したほか、カラーリングを変更。色調は同じ「スカ色」ですが、従来よりも明るい色へと変わり、先頭部の帯の形状やロゴも変更され、印象が変化しました。

更新車(左)と未更新車(右)。帯の色やデザイン、前面ロゴに違いがあります
更新車(左)と未更新車(右)。帯の色やデザイン、前面ロゴに違いがあります

1994年から1998年までの間に計745両が製造され、25年以上にわたって横須賀・総武快速線系統で活躍してきたE217系ですが、いよいよ置き換えが開始されます。代替となるのは、山手線と同じE235系。E217系と同数である、11両編成51本と4両編成46本の計745両が製造される計画です。

E217系の置き換え用として投入されるE235系。1000番台を名乗ります
E217系の置き換え用として投入されるE235系。1000番台を名乗ります

横須賀・総武快速線用のE235系で特筆されるのが、普通車は全てロングシートとなる点。混雑緩和のために4ドア・一部セミクロスシートとしたE217系ですが、次世代車両ではこれを強化した形が取られることとなります。

世代交代の時期を迎えつつあるE217系ですが、その設計思想はE231系やE233系、そしてE235系にも受け継がれています。

 

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