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「幸せのドクターイエロー」、どんな仕事をしてる?

2020年4月23日(木) 鉄道コムスタッフ

他にもある、ドクターイエローのなかまたち

ドクターイエローと同様の車両は、JR東海以外の各社も保有しています。

東北・上越新幹線では、200系の試作車を改造した925形を開業時より使用していましたが、老朽化により2002年までに運用を終了。JR東日本ではこの置き換えとして、E926形「East i」を2001年に製造しました。

東北・上越・北陸新幹線で検測する「East i」
東北・上越・北陸新幹線で検測する「East i」

秋田新幹線や山形新幹線での検測が可能なよう、E3系をベースに製造され、カラーリングは白地に赤と、ドクターイエローとは印象が異なる車両となりました。また、50Hz区間のみに対応するE3系とは異なり、60Hz区間への乗り入れにも対応。北陸新幹線での検測も可能となっています。こちらもドクターイエローと同様に運転ダイヤは公開されていませんが、東北・上越・北陸・北海道の各新幹線を、10日に1回程度のペースで検測しています。

また、JR東日本は、在来線用の検測車両として、2002年にE491系「East i-E」とキヤE193系「East i-D」を製造しました。前者は管内の電化区間で、後者は主に非電化区間で検測を実施するほか、りんかい線や京葉臨海鉄道など、線路が繋がっている他社線で検測することもあります。

JR東海は、1996年にキヤ95系「ドクター東海」を導入。JR西日本も2006年にキヤ141系「ドクターWEST」を導入し、両社とも自社管内の各線や接続する事業者の路線での検測に使用しています。また、自走可能な車両ではありませんが、JR北海道は2018年にマヤ35形を投入。キハ40系などにけん引されて走行するスタイルで、軌道などの検測が可能な車両です。

JR東海の在来線用検測車両「ドクター東海」
JR東海の在来線用検測車両「ドクター東海」

国鉄時代に製造された車両もまだまだ現役。JR西日本では、183系スタイルの交直両用電気検測車両、443系2両編成1本を運用しています。JR九州でも、マヤ34形1両を保有しており、DE10形にけん引されて九州各地を検測する姿が時折見られます。

大手私鉄でも、同様の車両を持つ事業者があります。東急電鉄では7500系「TOQ i(トークアイ)」、小田急電鉄ではクヤ31形「テクノインスペクター」、京王電鉄ではクヤ900形「DAX」を新製。このほか改造車両として、相模鉄道のモヤ700形、近畿日本鉄道のモワ24系「はかるくん」、西日本鉄道の900形が、それぞれ運用中です。

東急電鉄の7500系「TOQ i」。軌道検測車を組み込んだ3両編成での検測のほか、写真のようにけん引用としても使用される車両です
東急電鉄の7500系「TOQ i」。軌道検測車を組み込んだ3両編成での検測のほか、写真のようにけん引用としても使用される車両です

さらに近年では、営業用車両に検測装置を搭載する例も増えてきました。九州新幹線の800系は、開業時には1本、全通時には3本の検測装置搭載編成が配備されており、ドクターイエローのような検測業務を行っています。京成電鉄のAE形や3000形、京浜急行電鉄の600形などでは、屋根上に検測装置を搭載している編成があり、営業用車両ながら架線の検測が可能です。

京成電鉄3000形3002編成の屋根上に搭載されている架線検測装置(右)。集電兼用のパンタグラフを投光器で照らし、架線の状態を検測することができます
京成電鉄3000形3002編成の屋根上に搭載されている架線検測装置(右)。集電兼用のパンタグラフを投光器で照らし、架線の状態を検測することができます

このほか、JR東日本では「線路設備モニタリング装置」を開発し、管内の電化路線各線で運用する予定です。九州新幹線や京成、京急などの装置は試運転列車を仕立てて検測するものですが、こちらの線路設備モニタリング装置は営業運転中の検測が可能。East-i E・East-i Dよりも検測頻度を上げることができるため、タイムリーな保線が実現できるということです。

JR東海でも、新幹線の営業用車両向けに検測装置の開発を進めており、新型車両の「N700S」にこれを搭載する予定。2021年4月より装置を搭載した編成の運行を始める予定で、最終的には計6編成を投入する計画です。

なお、このような検測用車両を保有していない事業者でも、検測用機器を搭載したモーターカーを運用し、検測業務を機械化している例が多くあります。

ドクターイエローは無くなる? 気になる将来

3月に700系が引退した東海道新幹線では、時速285キロ運転可能なN700Aタイプが全ての営業列車で使用されるダイヤとなりました。700系をベースに製造されたドクターイエローでは、加速度や最高速度の性能差があるため、その去就が注目されていました。923形は両編成とも全般検査を出場したばかりで、今後も数年間の運用継続は見込まれています。ただし、次回の検査が実施されるかは未知数です。

また先述した通り、JR東海では、N700Sの営業用編成に地上設備の計測装置を搭載する計画を発表しています。これは軌道や架線、ATC信号などの検測が可能な装置で、一部ではありますが、ドクターイエローと同じ検測が可能となっています。ドクターイエローでは10日に1度だった検測が毎日実施でき、さらにデータをリアルタイムに保線所などへ送信できるようになるため、従来以上に保線作業を省力化できます。

2020年7月にデビュー予定の新型車両「N700S」。2021年4月には検測装置を搭載した車両が運行開始予定です
2020年7月にデビュー予定の新型車両「N700S」。2021年4月には検測装置を搭載した車両が運行開始予定です

JR東日本でも、2019年に製造した次世代新幹線試験車両、E956形「ALFA-X」において、地上設備をモニタリングする装置の試験を実施すると発表しています。詳細は明らかにされておらず、実用化もまだまだ先のようですが、将来的にはN700Sと同様な装置が営業用車両に搭載される可能性があります。

ドクターイエローのような検測車両が今すぐ無くなる、ということはありませんが、営業用車両に搭載する機器の普及具合によっては、将来的には活躍の幅が狭まっていくこともあるのかもしれません。

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