さよなら東海道新幹線700系

700系初採用の装備、最後となったあれこれ

2020年3月2日(月) 鉄道コムスタッフ

3月1日に東海道新幹線でのラストランを迎えた700系。3月8日に運転が予定されていた最終列車は、新型コロナウイルス感染症の影響で運休となり、予定より1週間早く引退しました。

JR東海の第2世代新幹線車両として1999年にデビューしたこの車両は、高速性能を追求して1992年に初代「のぞみ」用としてデビューした300系とは異なり、乗り心地や環境性能の向上を目指して開発。さまざまな新技術・設備が採用されました。

3月8日に東海道新幹線ラストランを迎える700系
3月8日に東海道新幹線ラストランを迎える700系

一方で、次代のN700系に受け継がれず、700系が最後の採用となった装備も。2世代前となっていた700系、それまでの車両や現代の車両とは、どのような違いがあるのでしょうか。

「カモノハシ」の滑らかな先頭部

700系といえば、それまでの新幹線車両とは異なる、滑らかな先頭形状ではないでしょうか。「カモノハシ」の愛称を生んだこの形状は、トンネル進入時に発生する衝撃波の発生や、横揺れの低減を図るための「エアロストリーム形」というものです。

JR東海の歴代新幹線車両たち。手前の3形式と比べると、700系(最奥)の特徴が際立ちます
JR東海の歴代新幹線車両たち。手前の3形式と比べると、700系(最奥)の特徴が際立ちます

列車が高速でトンネルに進入すると、トンネルの反対側へ衝撃波が伝わり、「トンネルドン」と呼ばれる大きな騒音が発生します。また、衝撃波によってトンネル周辺の建物へ被害を与えることもあり、列車の高速化を目指すにはトンネルドンの軽減が不可欠でした。

また、東海道新幹線ならではの制約として、従来車両と座席数を揃える必要もありました。1997年にデビューしたJR西日本の500系では、先頭部を長い流線型とすることでトンネルドン対策としていましたが、そのために先頭車の座席配置が300系と異なる問題が発生。ダイヤ乱れ時などで車両の差し替えが必要となった際、座席指定番号の変更が必要になるという営業面での課題が生まれていました。

鋭い流線型のデザインで今でも人気が高い500系。この先頭部の長さにより、300系とは先頭車の座席数が異なってしまいました
鋭い流線型のデザインで今でも人気が高い500系。この先頭部の長さにより、300系とは先頭車の座席数が異なってしまいました

この2つの課題を解決するために生まれたのが、この700系のエアロストリーム。先頭車長は300系よりも約1メートルの延長に抑えており、500系のような超ロングノーズとせずとも300系以上の空力特性を実現。従来形式よりも乗り心地を向上させつつも、300系と同等の座席配置となる客室スペースを生むことができました。

この複雑な先頭形状は、700系に続くN700系では「エアロ・ダブルウィング」、最新型車両のN700Sでは「デュアル・スプリーム・ウィング」として、性能と車内座席配置の両立を目指してブラッシュアップされています。

N700系と並ぶ700系。環境性能と定員を両立させる先頭デザインは、進化しつつ受け継がれています
N700系と並ぶ700系。環境性能と定員を両立させる先頭デザインは、進化しつつ受け継がれています

ヘッドライトとテールライトは過渡期

700系の前後で変化したのが、前照灯(ヘッドライト)と尾灯(テールライト)です。

300系までの営業用車両では、前照灯と尾灯は共用で、赤色のフィルターを被せることで色を変えていました。しかし500系では両者が分離し、それぞれが別の光源を持つスタイルに。700系でも、JR東海の新幹線車両としては初めて、両者を分けた配置となりました。

700系のライト。中央2灯が前照灯、外側1灯が尾灯となっています
700系のライト。中央2灯が前照灯、外側1灯が尾灯となっています
0系から300系までの各形式は、前照灯と尾灯を共用していました
0系から300系までの各形式は、前照灯と尾灯を共用していました

一方、電球を用いる「シールドビーム」の前照灯は、700系が最後。次代のN700系では小型・高輝度なHIDとなり、7月デビューのN700SではLEDライトが採用されています。

N700Sでは、省電力化が図られたLEDライトが採用されています
N700Sでは、省電力化が図られたLEDライトが採用されています

新幹線では最後となった「方向幕」

700系の行先表示器は、いわゆる「方向幕」タイプ。0系の途中から用いられてきたこの方式は、700系が最後の採用となりました。N700系ではフルカラーLEDの表示器となり、視認性向上や情報量の増加が図られました。また、指定席と自由席の区分を示す液晶表示器も、N700系ではフルカラーLEDに変わっています。

「方向幕」は700系が最後の採用
「方向幕」は700系が最後の採用
座席区分を示す液晶表示器も、700系が最後の採用です
座席区分を示す液晶表示器も、700系が最後の採用です
N700系のフルカラーLED式行先表示器。従来の列車名や行先に加えて、列車号数、停車駅案内も表示できるようになりました
N700系のフルカラーLED式行先表示器。従来の列車名や行先に加えて、列車号数、停車駅案内も表示できるようになりました

なお、JR西日本では100系V編成(グランドひかり編成)より3色LEDタイプの表示器を採用しており、500系や同社の700系でも、方向幕ではなく3色LED方式となっています。

車内空間の変化は

今では特急列車のみならず、一般用車両にも装備されることがある、客室内の電源用コンセント。今では当たり前になった装備ですが、新幹線で初めて装備したのが、この700系でした。

とはいっても、デビュー当時に投入されたJR東海のC編成には未設置。JR西日本が「ひかりレールスター」用に導入したE編成を皮切りに、同じく同車の16両仕様であるB編成、そしてC編成の後期製造分と、全編成には搭載されていませんでした。また、設置箇所も客室内両端の座席の各車計10席(グリーン車・E編成指定席車は計8席)のみ。現代の視点から見ると物足りないですが、当時としては画期的な装備でした。客室内のコンセントは、N700系で設置箇所が大幅に増えたほか、7月デビューのN700Sでは全席完備となっています。

そして、一部の方に惜しまれるのが、700系引退による喫煙車の廃止ではないでしょうか。

東海道新幹線開業時には禁煙車の設定はなく、全車で喫煙が可能でした。その後の健康意識の高まりなどにより、1977年に禁煙車が登場。次第に喫煙車の設定範囲は減少し、N700系では喫煙ルームを設定する代わりに全車禁煙となりました。700系も喫煙車は順次縮小され、2011年には「のぞみ」自由席の喫煙車が廃止に。その後の9年間は、16両中13両が禁煙車となっていました。

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高速走行を支える手すり

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